今日は私の大好きな曲の一つであるシューベルトのザ・グレイトをブルーノ・ワルター指揮コロムビア交響楽団の演奏で聴きました。
この曲何度も記事投稿していますし、随分色々な名指揮者の演奏を聴いてきたと思っていたのですが、そう言えばワルターの演奏は聴いたことがなかったような気がする、と何となく思ったのです。
ワルターのザ・グレイトは曲の初めから予想していたより遙かにゆったりとしたテンポ設定でその後も遅めのテンポで進んでいきます。それは確かにスケールの大きさを感じさせてはくれますが、しかし決して重々しさや威圧的な雰囲気を放つものではありません。何か過ぎ去ったものを振り返るようなしみじみとした深い情感も感じさせてくれるようです。途中からはテンポに生き生きとした動きが加わりしなやかに、そしていかにもワルターらしい優しさや微笑みを湛えているような音楽。緩やかに呼吸するような自然なテンポの動きが気持ちの良い歌を聴かせてくれます。自然な流れのまま第一楽章の最後はむしろ少し早めに感じるテンポ設定に。第二楽章は自然なテンポのまま軽くしなやかにチャーミングな歌を。第2主題のしみじみとした情感には心を揺すられるようです。勢いの良いリズムで始まる第三楽章は引き締まったリズムと時に優雅さも感じさせるメロディが交差するスケッツォとしみじみとした余情の中間部との対照が味わいを深くしているようです。激しく厳しい第四楽章。スケール感を感じさせながらも随所にしみじみとした情感をにじませる音楽はやはりワルターの持ち味でしょう。天国的な長さ、と言われたこの曲を一瞬も気持ちをそらさず最後まで聴く者を釘付けにしてしまう音楽作りは、さすが巨匠の実力をまざまざと見せつけられるようでした。
この「ザ・グレイト」はロマンティックな情緒に満ち、しかも凄まじいまでの緊張感と迫力が全曲にわたって途切れない稀有の名演。絶妙なテンポの動かし方や木管の金管の独特のバランスはワルターならではの名人芸といえましょう。ワルターがコロンビア交響楽団と残した最高傑作の1枚です
シューベルト
交響曲 第9番(第8番) ハ長調 D 944 「ザ・グレイト」
[録音]1959年1月31日(第1楽章)、2月2日、4日、6日、
ハリウッド、アメリカン・リージョン・ホール(在郷軍人会ホール)
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