真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美乳探訪 不埒な旅路」(2023/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:坂元啓二/録音:加唐学/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:赤羽一真・津田篤/制作応援:別府啓太/撮影助手:原伸也・戸羽正憲/スチール:須藤未悠/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:通野未帆・黒川晴美・福田もも・津田篤・伊神忠聡・那波隆史)。
 スマホでFMラジオを聴く、「FOREST FM」の画面にタイトル開巻。正しく全篇通して結構喋繰り倒す、女DJの声の主には辿り着けず。軽くCM感覚の、伊神忠聡が自分で支度するところから茶漬けを完食するのは、泊りの予定を違へられ、遅くに帰宅したハイヤー運転手・星名寛治(伊神)の手軽ないし侘しい夕食。起こされ起きて来た、一週間早番とかいふ妻・明海(通野)に寛治が無理気味に迫りつつ、案外明海も応へて呉れる夫婦生活が初戦。演者を真上から抜く、完俯瞰をさりげなく披露する。そんなこんなな最中、寛治は担当する役員の山本志郎(那波)から日曜日に、目的地も用件の詳細も五里霧中。挙句社用車ですらなく寛治のアクアを出せなどといふ、最早仕事らしい仕事なのかすら怪しい、謎のタスクに駆り出されるか付き合はされる。
 配役残り、津田篤を伴ひ飛び込んで来る黒川晴美が、業者の屋号と本人の源氏名、双方不詳のデリヘル嬢・浜田美和。仕事終り、にも関らず迎へが来ない。伝書鳩扱ひに美和が往来でキレてゐるところに、上手いこと歩いて来る福田ももは、この人も嬢で美和の後輩にあたる森脇瀬奈。のち美和の誘ひを勤務中につき瀬奈が断る際の、主観視点の本体は太腿の傷も見切れないゆゑ完全に不明。こゝで三本柱のフィルモグラフィを整理しておくと、矢張り竹洞哲也の2016年第一作「純情濡らし、愛情暮らし」(脚本:当方ボーカル=小松公典/主演)と、2017年第二作「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(脚本:深澤浩子/三番手)以来六年ぶり三本目となる、主演女優の印象は正直残つてゐない。二番手と三番手はともども初陣、現時点に於いて、最初で最後と思しき黒川晴美に対し、福田ももは竹洞哲也以外に髙原秀和や堂ノ本敬太第二作、外様作まで計四本継戦してゐる。組を選ばない機動性は、量産型娯楽映画のフィールドにあつてひとつの資質といへるのではなからうか。
 ピンクは加藤義一2021年第一作「誘惑妻物語 濡れた人差し指」(脚本:深澤浩子/主演:神咲詩織)を最後に、翌年四月で役者稼業ごと引退してゐる津田篤がよもやまさかの電撃復帰を果たした、割には。凄まじい、もとい清々しい一幕・アンド・アウェイを敢行、純然たる男優部版濡れ場要員で駆け抜けて行く竹洞哲也2023年第一作。重ねて尤も、2023年第一作とはいへプラスの方で前年暮れにフェス先行。なほかつといつていゝのか撮影時期は、釜無川周辺(多分山梨県)に桜が咲いてゐる頃であつたりもする。となるとブランク自体実は然程空いてゐる訳でもなく、要は寝かせてゐただけの話か。
 山本の余勢を借りる形で、寛治も来し方のリグレットを取り返す。陳腐な主題が例によつて、非力な俳優部が脆弱な台詞を捏ね繰り回すに終始する。竹洞調なのか小松型なのだか知らないが、相も変らずか性懲りもなければ他愛ない、平板な会話劇の中で特に結実する訳でも別にない。ついでに竹洞哲也が今年でデビュー二十年、全体何がしたいのか何をしたくて映画を撮つてゐるのか粗忽自慢の当サイトは未だに測りかね、ラストまで徒にフィーチャされるラジオ愛も、精々木に蛇の足を生やす程度。こんなものかの枠内を、半歩たりとて出でないザマかと、思ひきや。
 三番手第二戦を、寛治が膨らませる妄想で賄ふ関根和美ばりの力技が火を噴く辺りから、終盤が何気に加速。アグレッシブなお胸の谷間と、ホントに楽しさうな軽やかさが素晴らしい黒川晴美は、観客の惰弱を優しく温かく包み込んで呉れ、さうな柔らかみがエモくてエロいエローショナル。よしんば仄かにせよ、確かに煌めく二番手が生煮えさへし損なひかけた、空疎な映画を柔肌一枚救ふ。

 瀬奈のトレーナーと、結婚前の明海と寛治が宅飲みする缶ビール。カセットコンロと鍋を持ち出し外で作つて外で食べる袋ラーメン、の袋に、帰途道路脇の看板的なサムシング。都合四箇所、局部以外の理由でボカシが施される。単に節穴が気づかず見過ごしてゐるだけなのかも知れないが、体感的には百本に一本も観ないか見ない気がするこの手の案件。果たして如何なる、いはゆる大人の事情が具体的に絡んでゐるのか。あと、一作で四箇所といふのは、流石に多い気もする。


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