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経験を成長に生かすにはどうすればいい?

人は経験を通じて学び、成長します。

しかし同じことを経験しても成長する人、成長しない人がいます。

この違いはなぜ起きるのか?

モチベーションがあるから、向き合っているから、いろんな説明の仕方があるかと思いますが、今回は「経験学習」という分野の視点から経験から学ぶ力について書きたいと思います。

経験から学ぶ力とは何か?

これについては「経験学習入門」の著者松尾睦さんはこのように書かれています。

『適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる。』

この書籍を読んで印象に残っているのは、成長とは単に知識やスキルが増えることを指すのではなく、人間としての在り方そのものが変化することも含まれるということです。成長には「能力的成長」と「精神的成長」の2つの側面があり、この2つがバランスよく発展してこそ、真の意味での成長が実現すると言えるということです。

今回はここにフォーカスしていきたいと思います。

能力的成長と精神的成長

「最近あの人成長したよね」っていうとき、その人の何が変わったと思うことが多いですか?きっと仕事をこなす能力がアップしたということだけではなく、仕事に向かう姿勢が変化したことを感じるのではないでしょうか。

能力的成長とは、スキルの向上や知識の習得など、目に見える形での成長を指します。例えば、仕事において新しいスキルを身につけたり、より高度な業務をこなせるようになったりすることがこれにあたります。

『仕事上の問題を発見し解決するために必要な知識やスキルを獲得すること』と松尾さんは言われています。

能力的成長とはカッツモデルでいうところの「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチャルスキル」が高まるということです。

ただし、必要な求めらる能力は組織の階層によって異なります。

これら3つのスキルを高めるために経験学習は有効です。

一方、精神的成長とはなんでしょう。

それは仕事に対して「適切な思い」を持つことだそうです。

ここでいう「思い」とは信念や価値観のことを指し「大事に思っていること、こだわっていること」です。

「適切な思い」とは他人を思う精神です。

自分のことだけでなく、他者のことも配慮できること。価値観や考え方の変化、視野の拡大を指します。自分のことだけでなく、周囲の人々の思いや社会全体に目を向けるようになることがその一例です。

このように仕事への思いが自己中心的なものから、他者や社会とのつながりを意識したものに変化していくことを精神的成長と呼びます。

精神的成長が能力的成長を後押しするブースターです。

一流の域に達するには精神的成長が欠かせません。

自分への思いと他者への思い

自分の力を伸ばしたい、成果をあげたい、認められたいという「自分への思い」と

顧客に喜んでもらいたい、同僚を助けたい、社会に役立つ仕事をしたいという「他者への思い」この二つに優劣はありません。

相互に補完し合う関係にあるのが大事です。

自分への思いにより学習目標が設定され、「自分への思い」と「他者への思い」が融合することで大きな成長エネルギーが生まれます。

大事なのは仕事の信念としての「思い」であり、それと経験が重なっている人には経験からの学びを得ます。

ピーターの法則と学び直しの必要性

ここで、少し視点を変えて「ピーターの法則」に触れてみましょう。

先ほど能力的成長は組織の階層によって異なると書きました。

どれだけスキルを伸ばしても主任、係長、課長、部長では求められるスキルが変わってきます。そのためには年齢と同じレベルの経験を重ねるだけでは成長できません。

経験的成長で新しいフィールドへ向かうための壁を超える必要があります。

ピーターの法則とは「人は能力の限界に達するまで昇進し、無能なレベルにとどまる」というものです。

つまり、個人が成長しないまま昇進すると、いずれ能力が追いつかなくなり、結果として組織全体の効率が下がることを意味します。

年功序列型の日本の組織システムの会社はまだまだ多く、それがいいところでもありますが、能力に関係なく昇進する会社があります。

そういった組織ではこのピーターの法則に当てはまり、個人の能力的成長はしておらず、組織力が低下するといわれています。

能力的成長にはどうしても壁が存在します。

その壁をぶち破り新しい層に向かうためには精神的成長のブーストが必要なのです。

壁を超えた経験的学習

私のキャリコン、コーチングの中での事例ですが、

ある女性社員が会社がつまらない、辞めたい、これ以上自分が何を学べばいいかわからない、学歴主義の会社で私には未来が見えないと悩んでいました。

キャリコンとコーチングを進める中で、ある時彼女「社員のために安全教育訓練する」という1時間のプレゼンを担当することになりました。

経験のない1時間の従業員への教育訓練。大勢の前で話すことに経験もない、どうすればみんなが重要なことだとわかってくれるのか、みんなの安全を守るために、顧客の信頼を損なわないために何を伝えればいいか悩みながら資料を作成していました。

発表の日、発表を終えた瞬間、彼女は多くの人から大きな拍手の賞賛を受けました。

本当に素晴らしい心のこもったプレゼンでした。

後日、その社員と改めて面談する機会があり、最近仕事はどうかな?と質問した時、誰かのために働くことの気持ちよさを感じて仕事が楽しくなった。また自分への学びの向上心が湧いてきたと答えてくれたのです。

つながりを意識し、他者のために働くことを経験しました。

まさに、

『適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる。』

壁を超えたと感じました。

ピーターの法則を防ぐためには、「学び直し(リスキリング)」が不可欠だと言われています。新しいスキルや考え方を取り入れ、現在の自分の能力を高め続けることで、組織はピーターの法則の罠にはまらずに済みます。

しかし精神的成長を考えた能力的成長の研修や経験でなければそれは実を結ばない結果になるかもしれません。

経験学習を通じて自らの課題を認識し、意識的に成長する機会をしっかりと仕組みとして作ること、伝えることが大切です。

経験学習とは何か?

経験学習について今回はほんの少しだけ触れておきます。

ここは改めてどこかで共有できればと思いますが、今回はさわりのさわりだけで。

実際の経験を通じて学び、自己の成長につなげるプロセスです。デービッド・コルブの経験学習モデルでは、

  1. 具体的経験(実際に経験する)
  2. 内省的観察(経験を振り返る)
  3. 抽象的概念化(学びを理論化する)
  4. 能動的実験(新しい行動を試す)

というサイクルを繰り返すことで、より深い学びが得られるとされています。

経験を単なる出来事で終わらせず、成長につなげるためには、以下の点を意識することが重要です。

  1. 振り返りを習慣にする:経験から学ぶには、その経験を振り返り、何を得たのかを明確にすることが不可欠です。
  2. 新しい視点を取り入れる:自分だけの考えにとらわれず、他者の意見やフィードバックを活かすことで、より深い学びが得られます。
  3. 行動に移す:学んだことを実際の行動に反映させることで、知識が実践知へと昇華されます。

まとめ

経験学習についてはまた学びを深めて改めて共有できればと思います。

今回は経験を成長に活かすためには能力的なスキル成長にだけ着目するのではなく、精神的成長、自分の「思い」についての内省からスタートすることも重要だということを伝えたいです。

そして能力的知識は自分の外から、精神的成長は自分の内からのアプローチです。

普段の学びにおいて精神的成長を意識することがあまりされないのでぜひそこにも注目すると面白いかなと思います。

 

本日もお読みいただきましてありがとうございました。