みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。
「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。
今回は、去る 10 月 2 日から 23 日まで 3 週間余に渡りポーランドのワルシャワで行われた、第 18 回ショパンコンクールについて振り返ってみたいと思います。

　10 月の本選に先立ち、この夏、ポーランドでは予選が行われ、世界 29 カ国から 150 名の参加者による 12 日間の熱演が繰り広げられた。予選となる Preliminary ラウンドでは、指定された課題のショパンエチュードから二曲、課題のノクターン(エチュード三曲を含む)から一曲、バラードまたは幻想曲から一曲、マズルカから二曲を演奏する。今回、画期的だったのは、予選を含むすべての参加者の演奏がライブ・ストリーミングで世界に配信され、そしてその演奏がショパンコンクール公式ウェブサイトにて、現在(2021 年 11 月)に至るまで視聴ができるという点にある。録画されたビデオは、画像や音質が素晴らしく、21 世紀の今日の技術的進歩の恩恵を多いに享受できる。このコロナ禍でオンラインやストリーミングの技術が格段に進歩した所以であろう。ショパンコンクール公式ページには、各参加者のプロフィールや、通過したすべてのラウンドの演奏が一曲ずつファイルされ、お気に入りのピアニストの演奏や興味のある楽曲を繰り返し聴くことができる。

　コンクールでは、予選の通過者 78 名と予選免除の 9 名が次の STAGE1 へとコマを進めた。予選が免除されたのは、近年の世界各国でのショパンコンクールでの覇者とその他の著名なコンクールの上位入賞者で、ポーランド勢が多かったが、アメリカ、中国、日本からもそれぞれ一名ないし、二名が名を連ねた。

　STAGE1 では、予選の時と同じ、エチュードから二曲、ノクターン(エチュード三曲を含む) から一曲、バラード・スケルツォなどから一曲を演奏する。STAGE2 へ進めたのは、44 人で、約半数となった。日本からは、小林愛実さん、反田恭平さん、古海行子さん、進藤実優さん、角野隼人さん、京増修史さん、牛田智大さん、沢田蒼梧さんの 8 人、アメリカからは、Avery Gagliano さん、Evren Ozel さん、Talon Smith さんの 3 人が STAGE2 へ。

　STAGE2 では、STAGE1 と同じバラード・スケルツォなどから一曲、ワルツから一曲、ポロネーズから一曲、そしてショパンの曲の中から自由曲一曲の計 30〜40 分を演奏する。

　STAGE3 では、いよいよ、ソナタ(またはプレリュード全曲)、マズルカが課題曲に登場し、力量が問われる。STAGE3 に進んだのは、23 人で、日本人では、小林愛実さん、反田恭平さん、進藤実優さん、角野隼人さん、古海行子さん、の 5 名。アメリカからは、唯一 Avery Gagliano さんが STAGE3 へとコマを進めた。STAGE2 での完成度の高い演奏で、反田恭平さんが注目を集めると共に、STAGE3 での、小林愛実さんのプレリュードも評価が高かった。ポーランドの Alexander Gadjiev さんのソナタ変ロ短調は秀逸。また、スペインのMartin Garcia Garcia さんは情熱的な演奏で人気を博した。ファイナル・ラウンドには、12 名が進み、それぞれがコンチェルト第一番、または第二番を演奏した。

　結果は、カナダの Bruce (Xiaoyu) Liu さんが優勝、日本の反田恭平さん、イタリア/スロベニアの Alexander Gadjiev さんが ２ 位タイ。Gadjiev さんは、ソナタ賞も受賞した。３ 位には、スペインの Martin Garcia Garciaさんが選ばれ、同時にコンチェルト賞も受賞した。４ 位には、日本の小林愛実さん、ポーランドの Jakub Kuszlik さんが入賞。Kuszlik さんは、マズルカ賞も受賞。５ 位には、イタリアの Leonora Armellini さん、６ 位には、カナダ の JJJun Li Bui さんが入賞した。

　今回、特記すべき事の一つに、FAZIOLI ピアノの躍進がある。FAZIOLI は、世界一高価なピアノとも言われ、その精密なメカニズムに近年人気が高まっている。今回のショパンコンクールでは、優勝した Bruce (Xiaoyu) Liu さんを始め、３ 位の Martin Garcia Garcia さん、５位の Leonora Armellini さんらが、FAZIOLI ピアノでコンクールに臨んだ。今後ますます、FAZIOLI ピアノの人気が出ることは間違いなさそうだ。

　それぞれの参加者の演奏は以下のリンクから視聴できる。
https://chopin2020.pl/en/competitors