明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1881)危険!玄海原発でリラッキング(燃料ぎゅうぎゅう詰め)が進みつつある!

2020年09月15日 21時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200915 21:00)

玄海原発の危険性に関する続報です。

危険なリラッキングプロセスが進行中

事故を起こさなくても危険な玄海原発で、とても危険な「リラッキング」プロセスが進行中です。
リラッキングとは使用済み燃料を埋めている燃料プールの中のラックをサイズ変更し、燃料の間隔を詰めることで、燃料プールの容量を増やすことを目的としたもの。
九州電力が3号機のリラッキングを国に申請したのは2010年3月、許可直前だったとされる11年3月に福島原発事故が起こり、審査が停まりました。

ところが長らくリラッキングの新たな許可を出さなかった原子力規制委員会が、昨年10月23日に九電に許可を伝え、その後、経産相の意見聴取を経て11月20日に正式許可が出されました。
これを受けた九電が26日「工事計画認可申請」を提出し、本年3月に規制委員会が認可。さらに九電は2019年1月に、安全協定に基づいて佐賀県と玄海町に事前了解願を提出していましたが、これが9月1日に受け入れられました。
手続きを終えた九電は、本年12月にもリラッキング工事を開始し、2024年までに完成させるとしています。

そもそもなんでリラッキングが行われるのか。六ケ所村の再処理工場が運転の目途が付かず、使用済み燃料が溜まる一方で、プールが満杯になる日が近づいているからでです。
当然そうなると運転できなくなる。それで「燃料プールの容量を増やしてしまえ」とサイズ変更しようとしているわけですが、とても危険なので、規制委員会もなかなか許可しなかったのです。
しかしこのままでは原発が停まってしまうため、規制委は「核燃料をプールから出して保管する「乾式貯蔵」をセットで進めること」という条件をつけて認めてしまったのでした。


リラッキングの抱える大きな危険性

リラッキングはとても危険性です。使用済み燃料には「燃え残り」のウラン(U)とプルトニウム(Pr)が混ざっています。再処理で採りだしたい核分裂性物質ですが、これらはある一定の量を越えたときに、核分裂連鎖反応が可能な状態となります。
U235が22kg、Pr239は5kg。これを臨界質量といいます。このため核分裂性物質はそれぞれの臨界質量を超えないように、小分けして管理されています。
とくにプルトニウムの場合、Pr239とともに生まれ、混在しているPr240が「自発核分裂」を起こします。勝手に核分裂を始めてしまうのですが、このためPr239が5kg以上集合すると、核分裂連鎖反応が始まってしまう可能性があります。

燃料プールの中にしずめられたラックは、この点を考慮し、それぞれの核燃料がほかのそれと十分な距離が保てるように設計されています。
ところがその間隔を、ぎゅうぎゅうに詰めてしまうという。核分裂が始まる危険性へのマージンを削り取ってしまうのです。とんでもないことです。とくに大きな地震によって燃料プールが激しく揺らされたりしたときなどとても危ない。
燃料プールで万が一核爆発でも起こりプールが破損したら、核燃料がむき出しになり冷却不能になる。やがて溶けて膨大な放射性物質をまき散らします。

このプールの水が無くなるプロセスは実際に福島4号機で途中まで進行しましたが、実は福島原発のすべての燃料プールはリラッキング済みでした。そのため4号機の危機も3号機の爆発も、プールでの核爆発が原因だった可能性も否定できません。
さらに核分裂に至らなくとも、そもそも燃料プールは冷却するためのものなのに、熱を帯びた核燃料をぎゅうぎゅうに詰めてしまえば、当然、冷却しにくくなります。
このため電源喪失などで冷却が難しくなった場合、燃料がメルトダウンするまでの時間も短くなります。この点でも危険です。


原発はもはや止めるしかない。

こんなことが巨大台風が何度も襲来し、毎年水害が起きている九州の原発で行われることがとても危険ですが、このリラッキング、実は玄海3号機だけでなくて、各地の原発ですでに行われています。
新規制基準に合格している原発を見ると、川内原発で1,2号機、伊方原発3号機、高浜原発3,4号機で実行済みです。玄海の場合、4号機のプールは最初からラックの間を狭くして作ってあります。
この他の各地の原発もリラッキングを行い、プールの共用化、ラック増設、乾式キャスク貯蔵施設増設などでも容量増強に務めています。しかしそれでも燃料プールは2011年9月末で約7割まで埋まっていました。データを示します。

使用済燃料管理について-国内の動向- 平成24年2月23日 内閣府 原子力政策担当室
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/hatukaku/siryo/siryo8/siryo3-2.pdf

リラッキングを重ねた上での7割なので、本来ならすでに10割に近づき、運転できなくなっていたはずで、本来、この時点で原子力政策は終わらせるべきだったのです。にも関わらず安全マージンを著しく削ることで生き延びてきている。
先にも触れましたが、リラッキングが福島原発事故の深刻化に連なっていた可能性も十分に考えられます。リラッキングをした上で福島第一原発はプールの貯蔵量の93%も使っていたからです。ぎゅうぎゅう詰めで満杯だったのです。
そもそもこんなことを繰り返していて、深刻な事故が起きない方が不思議なのです。もともと事故を起こさないために設定した余裕を、運転を続けるためだけに、奪ってしまっているからです。

大事な点は、だからこそ福島原発事故後、リラッキングは進まなかったことです。規制委員会は十分に危険性を認識しているのです。しかしこのままでは稼働を続けられなくなるので、リラッキング認可に舵を切ってしまいました。
今後、これに追従する原発が出てくるでしょう。しかしこんな危険なこと、もうこれ以上、許すことはできません。福島原発事故後、初めてのリラッキング工事に、反対の声を高めましょう。九電と規制員会に批判を集中しましょう。
原発はもはや停めるしかないのです。

#玄海原発 #リラッキング #燃料プール満杯 #原発は止めるしかない

なお写真2枚とリラッキングの図は佐賀新聞からです。

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