昨年も同時期にシューベルトのピアノ曲をあげている事を知りました。
偶然のめぐり合わせですが、前回は「エリザベート・レオンスカヤ」のセット物で、今回はマウリツィオ・ポリーニの2枚組です。
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番~第21番、アレグレット
【ポリーニ80歳記念】【生産限定盤】【UHQCD仕様】
【グリーン・カラー・レーベルコート】
1973年以来となるポリーニのシューベルト録音で、1988年度第26回レコード・アカデミー賞器楽曲部門賞を受賞した名盤。ソナタ第20番の演奏は、ポリーニの意思で、急逝した名プロデューサー、ライナー・ブロックに捧げられています。(メーカー資料より)
【収録情報】
Disc1
シューベルト:
1. ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D.958
2. ピアノ・ソナタ第20番イ長調 D.959
Disc2
3. ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
4. アレグレット ハ短調 D.915
5. 3つの小品 D.946
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
録音:1983年12月ウィーン(2)、1985年6月パリ(1,5)、1985年9月ミュンヘン(4)、1987年6月ミュンヘン(3)
☆5のコメント-1 投稿日:2021/07/11 (日)
この録音が出たのは1990年頃。この頃、シューベルトのピアノソナタの録音は決して多くはなかった。めぼしいところではリヒテルとブレンデルくらいではなかったろうか。そこにこのポリーニである。
更に言えばまだこの頃ポリーニは毀誉褒貶相半ば、まぁ流石に誉褒が勝る感じではあるけれど、といった状況でしたっけ。そして、このポリーニの演奏は鮮烈でした。
そもそもシューベルトは少なからずバカにされているように思うのですね。そういうと皆否定するだろうけれど、でも、器楽曲に関して言えば、ベートーヴェンの陰にいる素人、作品もまとまりがなくて長ったらしくて、みたいな受け取り方をしている人は少なくないように思います。
でも、実際はそうではない。ソナタ形式といったものに拘り、構成にひどく拘った。晩年(31歳!)のシューベルトが死の直前に対位法のレッスンを受けようとしていたのは有名な話で、そういう意味でかっちりした作品を書きたかった。
ただ、上手くいかなくて、未完作品も多数遺った、その一因には確かにシューベルトの書いた旋律があまりにメロディックで、構成をきっちり守って造ろうとすると長大になってしまう、というのがあったのではないかと思うのです。
言い換えると、シューベルトの器楽曲は放っておいても十分に感情に訴える力がある。むしろあり過ぎる。長いけれど。 今のポリーニはまた違うことをするかも知れないけれど、当時のポリーニの演奏は、余計なことをせず、淡々と音を紡いで行くというやり方。いわばハードボイルドな、そっけないとも思える演奏。だけれども、それは確かに間違いではないのです。
情に訴えるのはシューベルトがやっているのだから、そこに殊更に手を加えようとしなくていいのです。第1楽章の第1主題のトリルが深いとか浅いとか、そんなことはもうシューベルトが書いているのであって、きちんと弾けばそれは響くのです。
勝手に長いとか短いとかいって繰り返しを省略しなくてもいい。シューベルトは提示部が反復されるというソナタ形式の定型に沿って書いたのだから。 その意味で、ポリーニの演奏はシューベルトのピアノソナタの演奏としてはエポックメイキングなものだったし、今でも最高峰の一つだと言っていいと思います。
ブレンデル(繰り返しを省略する大家ではありますが)ですら並び立つといったところ。今弾いている人だとシフくらいでしょうか、あとは。
☆5のコメント-2 投稿日:2011/06/26 (日)
初来日の交響的練習曲と21番ソナタ、今も脳裏に焼き付いています。思い出は美しい、時として美化されることもあるけれど。音楽を専門に学んだことのない私が偉そうなことを言うのもなんですが、30そこそこのシューベルトが作曲したこのソナタ、色々な解釈があって当然ではないでしょうか。深い精神性を追求すると思う人いれば、死神と向き合いながら作曲したと覆う人もいるでしょう。私のように純音楽としてポリーニを高く評価する人もいるでしょう。大家ほど評価は分かれやすいものですね。
☆5のコメント-3 投稿日:2011/03/21 (月)
レビューは討論の場では無い事を承知の上で書きます。 旅の途中さん、INVE...さん達のレビューを読むと、クラシック音楽は特別な最高級の教育を受けた知識人のみが享受できる世界と思えてしまいます。
無教養の私なんかは、シューベルトを娯楽で聴いていますが、悪い事でしょうか?これらの美しい曲を聴いて感動していますが、根が浅いのでしょうか?理解しきれて無いのでしょうか? ピアノを少しかじりましたが、これだけ弾くには才能と、どれだけの訓練、鍛錬、努力を必要としたのか? この、高名な世界的なピアニストに対して尊敬の念も無く平気で星一つ、二つ...。
まあ、ポリーニがこれらを読んだら「フン、極東の音楽史も無い、音楽文化もろくに無い島国の...」と鼻も引っかけない事でしょう。 第一、シューベルトの時代これは娯楽でしょう? レビューを書く人達、(旅の途中さんとか)、ひけらかす、衒う...。 これらの言葉がぴったり当てはまるように思えます。
例えば、ワインはどこそこの畑の何年物で無くては..と語ると同じ。 音楽も、ワインも、人生を謳歌する為に存在する物、と思えます。
重箱の隅を、爪楊枝でつついて欠点を探し出すような音楽の聴き方。 聴いていて楽しい、ほっとする、とか多分無いのでしょうね。 眉間に皺を寄せて、荒探しで、楽しむ間も無く聴いている御姿が目に浮ぶようです。
しかし、こう言った輩が、クラシック音楽を、初心者等にクラシックは別物、と思わせてしまう弊害は有ろうかと思います。
録音して聴かせて頂ける、と言う感謝の念は無いのですかね。 演奏が気に入らなければ、聴かなければ良い。声高に叫ぶ事は無い。 人間性、品格が問われます。
批評する相手は、世界屈指のピアニスト。演奏が好きか嫌いかは自由ですが、批評するだけの物をお持ちでしょうか???ひけらかし、衒う。 録音に対する評価は仕方が無いと思います。
色々と見解が分かれるところですが、私は以前入手した「レオンスカヤ」の弾くシューベルトとの聴き比べを楽しんでいます。