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楽天のUS訴訟と米中EC

既にあちこちで話題になって出遅れていますが、楽天がIBMに訴えられたUS訴訟です。

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international-business-machines-v-rakuten

年度末で忙しさ満載の03月/29日/2021年に提起されています。

対象特許は4件ですがブラウザを使ったインターネットの広告方法に関する基本的な技術だと言ってます。
United States Patent Nos. 7,072,849 (the “’849 patent”), IBM’s efforts to launch the PRODIGY online service (“Prodigy”), a forerunner to today’s Internet, in the late 1980s。・・・launched in late 1988 “Method for Presenting Advertising in an Interactive Service”

7,631,346 (the “’346 patent”), グルーポンとの訴訟と849特許(CL1,8)&346特許(CL1,5)が共通しています。逆に新規が

6,785,676 (the “’676 patent”), and

7,543,234 (the “’234 patent”)

以下出典dedce-75056

まあ手垢が着くぐらい他社と訴訟した特許でもあり、楽天としては厳しい戦いです。

訴状に書かれた交渉過程

IBMによると、楽天との交渉は苦節6年(For almost six years、In July 2015,から開始。) ※標準必須特許(SEP)の訴訟マニュアルでもありましたがライセンスに向けての交渉を適切に行っていたことが訴訟の提起のためには重要な要因となりますので詳しく説明しています。

既にGAFAともクロスライセンス済みだそうです。
including Amazon, Apple, Google, and Facebook, have agreed to cross licenses with IBM

なお、アマゾンは同じ特許で2007年にIBMから訴えられており、その際にも今回の849特許のみが使用されています。アマゾン訴訟の残り特許2件は古くて権利満了で権利行使されず?だと思います。

In July 2019、5月に他の訴訟での勝訴を受けて交渉を再開 346特許を見せる。

In July 2020, 追加特許も使って交渉する。

On March 2, 2021, 訴訟提起の日時からすると最後通牒に近いですね。

In effect, Rakuten told IBM: “we will not deal with this issue; talk to our lawyers.”

と一方的に交渉が打ち切られたので訴訟になったと説明しています。

先に書いたようにアマゾンの他に、グルーポンを訴え地裁で勝訴しています。訴状では

On March 12, 2019, IBM informed Rakuten that IBM had recently won an $82.5
million jury verdict against Groupon for willfully infringing some of the same patents that Rakuten was infringing.

結構な額だがどの特許のどの侵害なのか分かりません。
IBMはいくつかの同じ特許と言ってますので現物にあたると、これのことですね。


Civil Action No. 16-122-LPS-CJB

GROUPON, INC.,

IT IS HEREBY ORDERED AND ADJUDGED that judgment be entered in favor of Plaintiff International Business Machines Corporation ("IBM") and against defendant Groupon, Inc. ("Groupon") on all claims of infringement, willful infringement, validity, and damages with respect to claims 1 and 2 of U.S. Patent No. 5,796,967 (the "'967 patent"), claims 1 and 8 of U.S. Patent No. 7,072,849 (the '"849 patent"); and claims 51 and 54 of U.S. Patent No. 5,961 ,601 (the "'601 patent") and on all claims of infringement, willful infringement, validity, implied license, exhaustion, and damages with respect to claims 1 and 5 of U.S. Patent No. 7,631 ,346 (the "'346 patent").

IT IS HEREBY ORDERED AND ADJUDGED that judgment be entered in favor of IBM and against Groupon for damages in the amount of $82,500,000 for Groupon's infringement of the '967, '849, ' 601, and ' 346 patents. IT IS HEREBY ORDERED AND ADJUDGED that this Judgment shall have the effect of denying as moot all motions made by the parties pursuant to Federal Rule of Civil Procedure 50(a).


Case 1:16-cv-00122-LPS Document 398 Filed 08/08/18のグルーポンとの訴訟、849特許(CL1,8)&346特許(CL1,5)が共通し、US 5,796,967 A、US 5,961,601 Aが異なるようです。

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勝訴済みですから、楽天としては厳しい戦いですので
交渉過程で一方的に閉じなければと担当者は周りから言われているかも。

まとめ

noteの固定記事で書いたようにIBMは知財巧者で有ることを内外に宣伝しています。今回の訴状でも

✅IBMは大企業Fortune 500 companies,8万の特許を世界で有する。

✅OIN加盟済み(Open Invention Networkのファウンダーだそうです)

✅LOTは2020年参加なのでその前の特許(License on Transfer Network)です。譲渡特許でなく自社保有の特許なので余り本件には関係無いとは思いますが、大手企業の仲間内に居るのは間違い無いところです。

と誇っています。特許の中身もインターネットブラウザの基本特許に近いものがありました。

さて、楽天と言えば、テンセントグループ加入?の噂が有りました。

米中摩擦の一環でアメリカ企業の代表としてIBMが訴えたというのは無いとは思いますが時期的にキナ臭いです。

さて、中国の二大ICTと言えばテンセントとアリババです。

アリババグループはソフトバンクグループと資本関係にあり、最近ではメルカリと提携してもいます。

楽天もいるECサイト業界でそのアリババを抜いたのがテンセント系の傘下「JD.com」ではなく、農村を中心に利用者を拡大させた15年に創業したピンドゥオドゥオ。格安を武器に利用者数で中国トップになっています。

大手企業のプロット、当てはめは米中摩擦で以前書いた人の図です。

左側のアメリカ、動物の牙を表すFAANG とGAFAM、プラスUber。

右側の中国、bathと新興TMD です。※

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胃袋をアマゾンとアリババが支配するとしたのにピンドゥオドゥオが割って入ります。

赤字は中国共産党が誇るネット監視とシャットダウン、そもそも独自に発展できた万里の長城も共産党の肝いりです。

※The Chinese tech giants known as BAT (Baidu, Alibaba, Tencent) have built ecosystems while challengers TMD (Toutiao, Meituan-Dianping, Didi) are strengthening their core businesses.

美団をクチコミサイトだから口、TikTokで有名なToutiaoはエモーショナルなので失礼な場所に配置しています。

さて、わずか5年最近出てきた競合が「拼多多」も同じテンセント陣営ですが競合です。ピンドゥオドゥオと日本では書かれた記事が多いです。

黄峥により、上海寻梦信息技术有限公司(Shanghai Dream Information Technology Co., Ltd.)として2015年の9月に設立された「拼多多」は、共同購入のシステムを持つ中国のECプラットフォームになります。

以前調べた記事に少し前の流通取引総額を載せていました。

流通取引総額が有ったので上げて置きます。

アリババの2019年3月期の流通取引総額は 個人向けで8530億ドルでした。

対するAmazonはマーケットプレイスとオンラインストアから推定して6792億ドルでした。

ちなみに楽天は流通取引総額が3.9兆円でした。トラベルやラクマを含めた数値でアリババの換算94兆円と比べると規模が異なります。

日本に限定するとAmazonは1.76兆円だそうです。推定された流通取引総額だと2.7兆円です。

ヤフーのeコマースは0.65兆円です。楽天のeコマースは0.49兆円で販売手数料無料化により越えました。出店数も約五万の楽天に対して87万店のヤフーです。加えてZOZOが入ります。

以上 引用終わり。日本ではアマゾンと互角の楽天ですが海外まで目を向けて総額でみると大きく水を開けられています。

起死回生の一手で楽天は携帯電話に参入したら総務省の携帯料金の値下げ要求で、存在がかすみます。

ソフトバンクからの転職者の問題とか知財関係で問題になってましたが、そうまでして人を集め、潤沢なキャッシュに更に資金を集め、5Gの基地局でスターダムにのしあがるはずでした。目論見が外れると言えばそうなのですが、国には勝てないのが分かります。

いきなりテンセント傘下とはならないとは思いますが、投資した楽天モバイル次第では更に中国に接近するかもしれません。

アメリカではIBMから訴えられているのも何かの暗示と陰謀論をぶちあげたい所ですがアマゾンも遠い昔に訴えているので、ごく普通の知財訴訟でしようね。





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