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著作権~グーグル最高裁判決とオリンピック組織委員会


文春砲に牙をむいたオリンピック大会組織委員会とアンドロイドのAPIのUS最高裁判決、公共性に関わる2つの著作権事件が出たので見ていきます。

グーグルVSオラクル

GoogleのAndroidOSがApplication Programming Interface (以下、API)の一部として約1万1500行のJavaコードをコピーしたことに対し、サンマイクロシステムズを買収したオラクルが著作権違反で訴えていましたが判決が出ました。

上のリンク、訴訟の争点は

1)JavaSEのオーナーはAPIをコピーライト©したといえるかどうか

2)1)が認められたときGoogleによるAndroidでのJavaの使用が「フェアユース」に当たるかどうか

前の控訴審ではグーグル敗訴で「フェアユース」ではないとオラクルが勝訴しました。

反対に最高裁は地裁と同じく「今回Googleがこれをコピーした行為は法律に基づき、素材のフェアユース(公正な利用)だった」としてグーグル勝訴としています。

最高裁の並びは

BREYER, J., delivered the opinion of the Court, in which ROBERTS, C. J., and SOTOMAYOR, KAGAN, GORSUCH, and KAVANAUGH, JJ., joined. THOMAS, J., filed a dissenting opinion, in which ALITO, J., joined. BARRETT, J., took no part in the consideration or decision of the case.

今の最高裁判事の名前がきらめいています。米連邦最高裁判所としては、AndroidOSのAPIアーキテクチャーのフェアユースを、6対2(少数意見はTHOMAS, J., と ALITO)でGoogleを支持する判決を下しました。オラクルが敗訴です。

なおトランプ政権下で最近入ったJUSTICE BARRETTはこの事件の審議や決定に関与していません。記事によると

この裁判はGoogleによるAndroidでのJavaの使用が「フェアユース」に当たるかどうかが論点だった。最高裁の文書には「GoogleによるJava SE APIのコピーには、プログラマーが才能を伸ばして革新的なプログラムで作業できるようにするために必要なコードのみが含まれており、法律的にフェアユースに当たる」と書かれている。

下のA)のまとめです。

 10月に最高裁判所の審理が始まった時、Googleの弁護人であるThomas Goldstein氏は、GoogleはAndroidの構築において再作成できないコード部分のみを使用したと主張。同氏はコードを、保護されるべきではない「結合組織」になぞらえ、その部分は「鍵が鍵穴にぴたりとはまるように」動作すると述べた。

上記の記事から抜粋した内容です。他との接点は共用しないと接続出来ない。これを鍵穴になぞらえています。

次に最高裁判決の意訳です。厳密さを求める方は上のリンクを付けた原文を見てください。

A)(APIは)才能あるプログラマが革新的で新しいプログラムを作るために必要なコードで有って法律上、その素材を公正使用(フェアユース)したことになると判示しています。

B)著作権保護が及ばないと規定している(制限の範囲の)内容に該当する。著作権者は他人が著作物を「公正使用」(フェアユース)することを妨げてはならないと規定している。17 U. S. C.§107

C) 「公正使用」(フェアユース)は法律問題を含むもので判事は判断可能。よって 憲法修正第7条に違反しない。

事実問題は陪審員のみが判断できるため争われる法律上の戦法です。法律問題なら判事が判断できるため説明しています。

D) 著作権法の「公正使用」(フェアユース)規定に記載されている4つの指針となる要素、すなわち、1)使用の目的と特徴、著作物の性質、2)著作物に関連して使用された部分の量と実質性3)著作物全体に対する使用部分の量および実質性、および4)著作物の潜在的な市場または価値に対する使用の影響です。

今回のグーグルのアンドロイドAPIは「公正使用」(フェアユース)に該当するとしています。記事によると

判決文によると、グーグルが複製した約1万1500行のコードは、APIと呼ぶツールの一部。異なるソフト同士をつなぐ窓口の役割を果たすもので、最高裁は著作権保護を損なう可能性は低いとした。複製した割合はAPI全体の0・4%に過ぎないとも指摘した。

E) ユーザーインターフェースを再実装するためにAPIをコピーしたGoogleの行為は、法律問題としてその素材の「公正使用」(フェアユース)を構成すると裁判所は結論づけている。これは過去の判例にも合致している。

対象となったAPIについて面白い比喩を言っているので以後使えるようピックアップします。あくまでも最高裁裁判官の意見です。

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Oracle America, Inc. v. Google, Inc., 750 F. 3d 1339, 1349 (2014). Through an API, a programmer can draw upon a vast library of prewritten code to carry out complex tasks.

APIは膨大なライブラリであり、数千いや数万のタスクを実行するために利用される。

In this way, the declaring code’s shortcut function is similar to a gas pedal in a car that tells the car to move faster or the QWERTY keyboard on a typewriter that calls up a certain letter when you press a particular key.

APIは車のアクセルべダルでありタイプライターのQWERTYキーボードである。インターフェースである。

今後自分も巻き込まれたら類似の案件でコピペして、あくまでもインターフェースであり著作権を使用しているわけではくフェアユースの範囲であると主張しようと思います。

グーグルとしては高額の賠償金の恐れというか控訴審では実際に負けてたので、やった❗ということでしょうね。膨大なAPIのわずか5%以下の話だったのでフェアユースが認められホッとしていると思います。

さて、対比するもう一件のオリンピック大会組織委員会の逆襲について

【東京オリンピックにおける佐々木宏さんの不適切演出】

佐々木宏さんの演出が芸人の容姿を揶揄するオリンピッグというオヤジギャグだったことに批判が集中していました。

開会閉会式チームは当初、プランニングチームとして選出されたのは椎名林檎、野村萬斎、映画監督の山崎貴、振付家のMIKIKO、映画プロデューサー・小説家の川村元気、クリエイティブ ディレクターの栗栖良依、佐々木宏、菅野薫の8人でした。

電通内でのパワハラで最後に書かれた人が懲戒されたのでひとり脱落し7名でした。

ここで規模縮小を巧く電通と手を取り出来るものとみなされたのか、元電通の佐々木さんがトップに成り、MIKIKOさんが呼ばれていないという騒動が勃発。一連の事件を文春がスクープという話です。

オリンピック大会組織委員会は逆ギレのようにスクープした文春を名指しで非難しています。

要旨は営業秘密㊙️が暴かれたこと

「開閉会式の制作に携わる限定された人員のみがこれにアクセスすることが認められた極めて機密性の高い東京2020組織委員会の秘密情報」

とありますが、これが認められるなら憲法21条が保障する表現の自由を脅かしかねないです。

税金の入る公的な組織が適切に運営されているのか否かを検証は公益性の観点からも重要であり、マスコミによる監視が行えなくなり知る自由を侵害します。オリンピック大会組織委員会の主張しようとする、これの根拠条文は、

「この内部資料の一部の画像を本件記事に掲載して販売すること及びオンラインに掲載することは、著作権を侵害するものです。」
「営業秘密を不正に開示する者には、不正競争防止法違反の罪及び業務妨害罪が成立しうるものであり」

著作権と不正競争防止法、業務妨害罪だとしています。措置は雑誌の回収だそうです。

「同社に対しては、当該の掲載誌の回収、オンライン記事の全面削除、及び、資料を直ちに廃棄し、今後その内容を一切公表しないことを求めています。」

なんとも厳しい措置を求めた訳です。

なんか違和感を感じます。ここでも著作権法が関わるので対比するのですが、恫喝するのか警察沙汰だそうです。

これに対して文藝春秋側からは

「小誌の報道に対して、極めて異例の「雑誌の発売中止、回収」を求める組織委員会の姿勢は、税金が投入されている公共性の高い組織のあり方として、異常なものと考えています。もし、内部文書を基に組織の問題を報じることが、「著作権法違反」や「業務妨害」にあたるということになれば、今後、内部告発や組織の不正を報じることは不可能になります。」
「週刊文春」は、組織委員会の要求を拒否し、今後もオリンピックが適切に運営されているのか、取材、検証、報道を続けてまいります。

といたって妥当な反論をしていますが、

東京オリンピック大会組織委員会は今後の報道を委縮させるのが目的なのでしょうか。

森会長からバトルを受けた橋本聖子会長はこれに同意したようです。

都内で定例会見に出席した橋本聖子会長は「報道の自由を制限するということでは全くない」「組織委員会の秘密情報を意図的に拡散し、組織委員会の業務を妨害するものであると判断した結果、書面で厳重に抗議を行うに至った」と説明する

とありますがもうオリンピック大会自体止めたらと強く思います。

まとめ

オリンピック大会組織委員会とアンドロイドのAPIのUS最高裁判決いずれも根源的な問題として著作権とは何かを、その境界を争うものになりました。

アメリカの最高裁なのに日本の著作権法になるのはロートルの弁理士だからという事でご容赦いただき、

オリンピック報道および最高裁の手続きの著作権法の条文をみていきます。

結局のところ何処が問題になるのか著作権法をみると制限に該当するかどうかが大きいと思われます。

著作権の制限があり二条をあげます。

(時事の事件の報道のための利用)

第四十一条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

報道するとき相手方に忖度しているようなら、客観的な報道が出来ないため著作権法の制限が有ります。

(裁判手続等における複製)

第四十二条 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

同じく訴訟するときに相手に著作権使わせてとは言いずらい、というか拒否されたら訴えないってあり得ないでしょう。私が書くのが報道ではないし訴訟手続きでもないし、ロジック考えなきゃ。

さて、知財系の法趣旨が社会の発展を求めるためのものなのですが、著作権法はそこから少しずれて「文化の発展」なので文化活動なのか素も分かりません。

APIプログラムが文化?

文春砲が文化?

疑問は多々出ると思います。

とはいえオリンピックの方はスノーデン事件を見るまでもなく内部告発とはいえば、なんでもOKでは無いと思いますが、やり過ぎです。

ここまで強権を発動するオリンピック大会組織委員会HPでの公表を見るとどちらの肩を持ちたいかは明らかですね。

グーグルの勝訴で終わったオラクルの訴訟の補足を少々。

簡単に言うとオープンソースのプログラムはOSSで権利を放棄する代わりに自由に使える。また自由に使えるためにコードを公開するという権利関係の立て付けです。

このとき、その根本に権利があったらどうなの?それが土台のAPIだったらという根深問題です。プログラマーは勿論権利侵害しないように作りこみますが土台はそれが是だと問題無しだとするのが通常です。ですから知財はその土台で調査もしていないことをどう処理かで頭を悩ませます。

今回は更にインターフェースと読んだ鍵穴に鍵をさす関係をJavaSEが古くからあり、これを使う必要があるから確信犯なのかもしれません。

いずれにしてもグーグルのアンドロイドもオリンピック大会組織委員会も今やプラットホームです。社会インフラのようなシステムを一企業や一個人が回すとなると、その運営には常日頃以上の用心深さが求められます。

オリンピック組織委員会は不適切演出を猛省すべきところを逆ギレですから、なにをか言わん話です。

それは、ネタバレした演出を見たいかと言われたら、正直いや既に知ってるもんなんか新鮮味ないし別の演出って言いたいことは分かるんですよ。

でもね。オリンピッッグと容姿を揶揄するのは東京オリンピックの汚点になりますよね。

文春が報道することで事前に止められてマスコミとしての義務を果たせたと言えると思います。

オリパラで不適切演出って日本が世界で恥をかくわけで結果的には良かったかなと思います。

佐々木さんの代表作のソフトバンク「犬のお父さん」、サントリー「BOSS」の「宇宙人ジョーンズ」を演出しててもう

感覚まで宇宙人になってしまったのかもしれません。

今日は他にも北朝鮮に東京五輪不参加を決定、理由は選手を保護するためだそうです。

オリンピックが中止の張り紙が予見していたと話題のAKIRAはマズイと切ったのかもしれませんが、ミキコさんが無言フェードアウトをぶちまけて女性蔑視発言と共にオリンピック大会組織委員会はボロボロです。

オリンピック自体が切られるのはいつの日か。


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