ヤマハジュニアピアノコンクールの編曲について | エレクトーン・ピアノの演奏上達法ブログ

ヤマハジュニアピアノコンクールの編曲について

本日、かなり長文です、申し訳ありません。

そして以下全文、私見であることを最初にご了承ください。

 

 

講師さんをされている生徒さんから、ヤマハジュニアピアノコンクールの編曲について質問がありました。

 

ピアノコンクールでの編曲課題というのは、他のコンクールではほとんど見ないものです。

 

また今年は例年のメロディ課題ではなく、スコアからの編曲譜が提示されました。

 

これの意味は何なのでしょう?という相談でした。

 

ヤマハが定めている要項は以下のものになります。

>>第6回大会の実施要項(ジュニア部門)

( ダウンロードできます )

 

「 すべての人がもっている音楽性を育み、自ら音楽をつくり、演奏し、楽しむことの出来る能力を育て、その音楽の歓びを広くわかちあう 」

「 楽譜から演奏者自身が感じたものを自由に表現してほしい 」

「 音楽の幅や演奏表現の幅を自由に広げていってほしい 」

 

という理念が最初に書いてあります。

 

この前文と、私が生徒として、講師としてヤマハで体験してきたことから、噛み砕くとこういうことではないか、と推察したことをその方にはお伝えしました。

 

ヤマハ音楽振興会本部の方に、直にお答えをもらったわけではありません。

 

編曲って?と出口がないトンネルのように感じた方がいらっしゃれば、ひとつのアプローチの方法として読んでいただけたらと思います。

 

 

コンクール要項の編曲のところから、主催者の意図を考えてみました。

( スクリーンショット画像 )

 

 

今更ながらヤマハがあえてピアノコンクールを主催する意味はどこにあるのか?

大雑把にまとめると以下のようになるのでは、と思います。

 

 ただ書かれたものを受動的に音にするのではなく

 自分で感じて考えて演奏できる力を持っているかどうか

 

エレクトーンのコンクールに携わった方なら、わかっていただけると思います。

 

・楽譜が販売されていない

・譜面はあるがピアノソロ曲ではない、

・そもそもクラシックではないので演奏の仕方は何通りもある

 

編曲できる力とはこういった時、それでも自分の表現手段の楽器で演奏できる楽しみを捨てなくてすむ、というものだと思います。

 

発表された楽譜は超絶技巧のもので「 弾きやすさ 」「 自己表現するための余裕 」が犠牲にされています。

 

確認はしていませんが、おそらくオーケストラスコアの音をピアノの鍵盤上両手で弾ける範囲ですべて拾ったものであろうと思います。

(私が見せていただいた楽譜は、最後三段譜になっていました)

 

 

今までメロディだけの課題で、オーケストラなどの音源を聞きながら、自分なりに自由にピアノで演奏表現をしてほしいと課題を出してきたけれど、本来の意図どおりの結果になってこなかったのではと推測します。

 

よってとりあえず、参加者の門戸を広げるため、最悪このまま弾くことも可能な楽譜が提示されるようになったのではないでしょうか?

 

想像の域をでないものですので、ここの論議は省略することにします。

 

 

では、実質的にはどういうアプローチ法があるでしょうか?

 

私が考えつく手段としては

 

1:そのまま弾く

→参加可能、主催者の意図を完全に満たすものではないかも

 

2:自分の技量以上の部分を演奏効果が損なわれない程度に省略する

→意図は通じている

 

3:原本を参考にしつつも違った編曲をする

→原本を弾くのがいっぱいいっぱいな状態の演奏より、出場者の技量に見合っていてなおかつ聴衆が楽しめ、いい演奏だったと思っていただけるものができた場合、一番主催の意図に沿っている

 

大きく分けるとこの3つがあると思います。

 

 

生徒さんの演奏技術、また音楽の理解力により、以上の中の何を選ぶかは変わってくると思いますが

・提示する譜面を演奏

・個々の技量に合わせて創意を加えるのも可

と書いてあるので、上に書いた内容に沿って、編曲をしてもらえばいいものと思います。

 

ご質問された方への具体的なアドヴァイスとして、私は以下のようにメールしました。

 

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一旦事務局から送られてきた楽譜は忘れて、オーケストラスコアから演奏者の力量にそったピアノソロに編曲する、という視点で編曲に取り掛かられたらどうでしょう?

 

闇雲に、メロディを変奏したり伴奏形を変えたりしても意味がないです。

 

例えば同じメロディが出てきた時、オーケストラなら楽器を変えたり音域を変えたりしますが、二度目が盛り上がった構成ならばそこを変奏する、などとすれば効果的かと思います。

 

手順として頭から取り掛からず、全体構成を把握して、音楽の濃淡を読み取り、オーケストラの厚みの変遷をピアノの音数として変換します。

 

よって場所によっては規定の譜面より音数を減らしたほうが、例えばピアニシモなどはより表現できると思います。

 

繰り返しますが、まずは楽曲の全体を把握してください。

 

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実際はもう少し詳細でしたが、大体はこのような考え方を私なりに書いてみました。

 

繰り返しますが、運営本部の方が本当はどう考えているのかは私にはわかりません。

 

ですが、弾きたいなと思う曲を自分が思うように演奏表現する、がヤマハの目指している音楽教育の形だと思います。

 

ですから、編曲そして作曲というセンテンスがレッスンの中に組み込まれています。

 

それはもう数十年前に、私が最初にヤマハ音楽教室に通い始めたときから、ずっと変わっていないと思います。

 

そしてこのカリキュラムのおかげで、大好きなオーケストラの曲を、どなたかの指揮者の音楽性に沿って演奏するのではなく、私自身が感じたとおりエレクトーン演奏することができます。

 

すべての音を拾うことは無理でも、ピアノでだったらこうしたら曲の持つ意味が伝わるかな?と編曲することもできます。

 

自分が感じた気持ち、見た風景を自分の曲にすることもできます。

 

ヤマハがすべてだとはけっして思ってはいませんが、この力を育ててくれたカリキュラムと、的確に私にそのファクトを使えるように教えてくださった、たくさんの先生方に感謝もしています。

 

 

比較的若手のプロのピアニストの方の中には、ご自分でピアノにアレンジした曲をコンサートで披露される方もたくさん出てきました。

 

映画版「 蜜蜂と遠雷 」の吹き替えピアニスト、私が大好きな福間洸太朗さんもその一人です。

 

ご本人がユーチューブなどにもたくさんあげていらっしゃいますので、是非お聴きください。

 

またジャズピアニストの小曽根真さんもこの頃クラシックをコンサートで演奏されていますが、小曽根さんテイストが満載で、ピアノの演奏の色々な可能性を感じることができます。

( そのうち時間があればYou TubeのURLなど探してご紹介できればと思います )

 

 

話をもどします。

 

直接コンクールの結果を左右するものではないですが、せっかくですからこの機会に生徒さんと一緒に、新しい方法でピアノと音楽に向き合うことを始めてみられてはいかがでしょうか?

( グレードの作編曲のあつかいと同じで” 演奏 ”のコンペティションですから、その内容の出来が結果を大きく左右するものではないでしょう )

 

私は今、成人の方のレッスンがほとんどなので、直にこのコンクールに携わることはありません。

 

でも、かつてピアノを習っていた、今一度習いたいと音楽教室の門戸を叩いてくださる方の中に

・弾きたい曲があるけど難しいから簡単にできますか?

・ピアノの曲ではないし楽譜もないけど弾けますか?

という希望を持っていらっしゃる方が多くなってきたのを感じています。

 

今目の前にいらっしゃるジュニアの生徒さんがすべて、音楽大学に行きたい、とかプロのピアニストになりたい、と思っていらっしゃるわけではないでしょう。

 

一生、自分の手で音楽を楽しむことが出来る、そのツールの一つが作編曲能力だと思います。

 

コンクールのためだけの付け焼き刃ではなく、ゆとりをもって楽しんで取り組んでいただけたらいいなあと思い、この長文を書かせていただきました。

 

少しでも編曲課題を考える上での取り掛かりになれば幸いです。

 

 

連休も終わり、ヤマハの新年度が始まります。

 

コロナ禍の中、まだまだ色々なイベントなど通常通りではない日々ですが、少しずつ回復した未来に向けて歩みを止めないでいたいなと思う私でした。

 

 MAMI@ピアノの自作曲に翻弄され中~