ストレスシートからの物語
今更支払い時に出てくる二千円札(2000年発行)
「二千円札でもいいですか?」
「いい訳ねえじゃん!」
今更このお札持って客先に行ってごらん。こっちだって同じセリフ吐かなくっちゃいけないよね。「二千円札でもいいですか?」って。
初めてご覧になる方は、以前の記事もご参考に。
ストレスシートからの物語1~4はこちら↓↓↓
オレの仕事は個人宅への荷物の配送。最近はネットでの買い物が多いせいで、荷物の量がハンパない。それも小さなものばかりだ。ひどい時には二日間連続で、同じ家に行く場合もある。しかも同じ発送元である。
「どうしてまとめて注文が出来ねえんだよ!」
オレはその家の玄関先で、大声をあげて叫びたかった。しかし、そんな事は出来ない。少しでも多く客先に荷物を届けて、収入を増やさなければいけないのである。
問題はそんなお客たちの支払い方法だった。クレジット払いならば何も問題はない。こんなお客に限って『代金引換』を選択している。基本的にお客に会わなければいけない。『代金』がもらえないのだから。
おまけに『留守』が多い。結構な割合で『再配達』になるのだ。そんなお客ばかりで『居ない人リスト』でも作ってみたいものだ。
そんな訳で、会えた時に集金だけはスマートに終わらせたいけど、何軒か集金する間に、釣り銭が随分と偏る事がある。多いのは『一万円札』が増える日で、給料日付近は大体このパターンだ。これはある程度予測出来るので、こちらも準備はしている。
次に『小銭の日』。どいつもこいつも『財布軽くしたい』って、小銭を出してくるんだ。その『重さ』がダイレクトに他人に回るって気付かないのかね? オレの集金袋が、その分だけ『重く』なるんだよ!
結局、一万円札のお陰で釣り銭が切れた時は、仕方なくどこかで買い物して『両替』するんだよね。手っ取り早いのはコンビニなんだけど、いつもそこで買い物する訳にいかないから、時々オレは『ハンバーガーショップ』に立ち寄るんだ。腹も減るし。そこで今日言われたのが、このセリフだった。
「二千円札でもいいですか?」
これって、要は釣り銭に『二千円札混ぜる』って事だよね? 言い訳ねえじゃん!
こんなの混じってたら、結局オレも客先でこのセリフ言わなきゃなんない。
「二千円札でもいいですか?」って。
でも、オレが断り文句を言おうと店員を見ると、アルバイトと思しき女子が泣きそうな顔でこっちを見てる……。だから、言いかけたセリフをぐっと飲み込む。
「仕方ねえな。一枚だけだろ? いいよ、二千円札で」
「あ、ありがとうございます!」
結局、オレはカワイイ女子に負けて、『二千円札』を引き取る羽目になった。
さて、困った。次に一万円札で支払いされたら、こいつを混ぜなきゃいけない。
しかし、どうだろう? いつもお客が『一万円札』で支払うとは限らないし、ちょうどの金額を渡される事だってある訳だし。どこかで買い物する事も考えたけど、今日は時間に余裕が無い。
お客が『一万円札』出してくるだろうって準備してるのは、こちらの取り越し苦労かもしれない。もしもの時は『あのセリフ』を言えばいいだけだ。
結局オレはさっきの『二千円札』を釣り銭袋に入れたまま、再配達先に向かう事にした。
今日は残り三軒。すべてアポは取ってある。その中で最初に向かうのは、いつもぴったりか、それに近い金額を出してくる、ちょっと品の良いお客で、決して一万円札を出す様な事はなかった。
チャイムを押すと、直ぐに返事があった。そして玄関のドアが開いた。
「代金引き換えで、三千九百八十円です」
そしてお客が言った。
「あの……。『二千円札』二枚でもいいかしら?」
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