近年はモダン・フレンチがもてはやされているので、ジビエが好きと言うと、ジビエというのはなにかという説明が最初になってしまいます。
ジビエは獲物のことです。つまり、大自然に生きている四脚の動物または鳥を収穫したものです。一個一個で味が違うと言っても過言ではありません。その違いを把握して、対応していく力がシェフには必要とされるため、ジビエが難しいと思われる理由でしょう。
獲物の収穫は規制されています。そのため、ジビエが食べられるのは、収穫のシーズンと重なります。普通は、九月くらいから始まります。その一番手が雷鳥です。もちろん、真っ白なニホンライチョウは天然記念物ですので、捕ることはできませんし、食べることもできません。しかし、日本だとエゾライチョウが獲物として存在します。そして、世界を見渡せば、スコットランド産の雷鳥がいます。
今回は、今シーズン食べた雷鳥を振り返りたいと思います。
スコットランド産雷鳥のロティ@レストランユニック
目黒のお店「restaurant unique」でいただいたものです。
写真は一羽を半分にしたもの。
分量としては多くないように見えますが、ジビエ料理は意外とパンチがあるので、食べてからボディブローのように胃袋に効いてきます。我が家はワインを飲むので、相乗効果。でも、ワインと飲むから、ジビエもおいしいし、ジビエと飲むからワインもおいしい。プラスのサイクルです。
ソースは味が濃く、やや塩を効かせた感じ。
雷鳥のお肉はスパイシーで、獣感がしっかりと出ていました。やはり、雷鳥はジビエの鳥の中では香りが強いほうなので、スパイシーな味を感じると、ジビエのシーズンが来たと実感します。
また、スパイシーだからこそ、ソースも濃厚なほうがバランスが取れますね。
雷鳥のサルミソース@ラチュレ
南青山のフレンチ「Laturé」でいただいたものです。
今回の個体は大きめ。
これも一羽を半分にしてもらいましたが、食べごたえ感が半端なかったです。
熟成を効かせて、スパイシーでクセのある身でした。
しかし、うまくソースでまとめてあり、一種の完成形でしょう。
ミシュラン星つきらしく、洒落た感じでサーブされているのはお見事。真ん中に突き出ているのは、雷鳥の脚ですが、それさえも、デコレーションのように見えるかもしれません。
雷鳥のロティ@レストランアラジン
広尾のフレンチ名店「Restaurant ALADDIN」です。
ソースはジビエシーズンが始まったばかりなので、まだまだあっさりめですが、黒胡椒が効いており、癖のあるスパイシーな身と絶妙なバランス。マグロのお刺身のようにスライスしている点が二重丸。
左上にある脚のローストは絶妙な火加減で、ムシャムシャと噛みつきました。脚はあまりクセはありません。
一方、羽の部分はクセが強め。スライスされた胸肉の部分がバランスもよく、ソースと絡んでおいしいこと限りなし。
確か三週間ほどお肉は熟成させていたと思います。
雷鳥のロースト 赤ワインとサルミソース@テチュ クラシックエナチュール
白金のフレンチ「Têtue - classique et nature」でいただいた雷鳥のロースト。
雷鳥のロティ@レストランアラジン
前回の雷鳥に衝撃を家内が受けて、もう一度食べるというので、すぐに予約。
そこから約三週間肉を熟成させた状態でいただきました。
やはり、前回よりはソースが育っていました。このときには、青首鴨も同時にサーブされていましたので、それが加わって、サルミソースが濃厚になっていました。
ジビエは同じお店で同じ種類の鳥を食べても、その時期によって、ソースの発展状態も異なります。そして、個体も異なります。同じものはありません。一期一会です。
レストランアラジンの特徴は、ジビエにポテトの付け合せを出してくれる点です。
ドフィノワをソースに絡めて食べるのが至福。
こうして記事を書いている途中も、思い出してよだれが出そうです(笑)
2022年シーズンは雷鳥だけで、四店舗、合計五回もいただくことができました。でも、欲を言えば、あと二店舗行きたかったです。ご参考までに、お店の名前だけご紹介しておきます。
レストランマノワ(広尾)
このお店で雷鳥はまだ食べたことがないのですが、このお店の特徴は、ダブルジビエが標準で可能なことです。もちろん、それなりのコースを選ぶ必要がありますが、ヤマウズラと雷鳥といった選択が可能なのは、ジビエ好きにはたまらないでしょう。
このお店はなんと雷鳥をひとり一羽食べることができます。つまり、二人で雷鳥をお願いするという食べ方でなく、私は雷鳥、あなたは山鳩といった食べ方が可能なのです。