理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

恐怖! 進撃の電動キックボード

Mです。

 数日前、車で移動中、朝の秋葉原駅近くで あわや!の目に遭った。

 昭和通り南下車線から東に折れた双方向道路。入って100m足らずの場所で、左側の細道から ”つくしん坊” のように直立した黒い影が飛び出してきた。こちらは慌てて急ブレーキ。当の”つくしん坊”は、そのまま直前を横切って右の路地へ突入。ほんの3秒ほどの出来事だった。
”つくしん坊” の正体は、黒の電動キックボードに乗った20代のやせっぽち。黒っぽいスーツ姿の男だった。

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 これまでも、車両の通行が少ない都内の街路で、この手の兄ちゃんに何度も出会っている。チャリで走っていると、音も無しに結構な早さで移動する直立人間。狭い板に乗って杖のようなハンドルを握って走り去る。速度は、Mの漕ぐママチャリより速い。ママチャリだって、車道を突っ走るときは30Km/h以上出すことはあるが、街中の通りで思いっきり走るなんて事はない。ところが、電動キックボードライダーは、空いている街路をくねくねと人をよけながら走るのを楽しんでいる、としか見えない。音がしないから、いきなり脇をすり抜けられるのはかなりコワイ。

 そんなヤツが、クルマの前を直前横断したのである。

 正直言って、追いかけて殴りつけてやりたい気分だった。

 去年の暮れ頃、電動キックボード輸入事業者が、国交省にレンタル事業で公道走行を可能にしてほしいという要望を出した、という報道があった。その時点では、公道走行の許可が出ていなかったので、閉ざされたコースの中でのレジャー走行しか行われていなかった。しかし、それでは販売増加は望めない。そこで、安全な乗り物だということを証明するから将来的に公道走行を許可してほしい、という流れになったのだろう。そして現在、都内の限定地域で実証実験が行われている。自転車走行車線を通行しても良い、という特例措置を設け、原付自転車と同じような装備を備えることを前提に、ヘルメット装着を任意にして実験中だという。

 ↓ 警視庁の説明サイト
   https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/doro/dendosukuta.html

 Mは思う。これって、現実問題として必要なことなのだろうか?と。

 今やかなりの数に上っている電動アシスト自転車。これは、乗っている人が足で漕ぐ、という動作を前提にしている移動装置だ。勝手に動いているわけでは無い。ペダルを漕がなければアシスト機能が働かないのだから、むしろ、重いだけの自転車だ。当然、速く走ることはできない。また、アシスト機能は速度上限が設けられていて、確か25Km/h以上になるとアシストは効かなくなる。つまり、それ以上の速度を出すときは、脚力のみの走行なのだ。速度だけなら、フレームの軽いスポーツサイクルの方がずっと速く走れる。つまり、電気モーターはあくまでも補助なのだ。

 ところが、電動キックボードは、この範疇には入らない。明らかに自動走行車両に入る。人は、ただ操縦するだけなのだから、自転車ではなくて自動車なのだ。
 その考え方から、警察庁は、電動キックボードは原動機付き自転車、つまり原付バイクと同じ区分だと判断している。したがって、原付バイクと同等の装備(ウィンカー、バックミラー)を付け、登録する必要がある(登録ナンバー)、と決めている。当然のことである。

 ところが、である。先の ”つくしん坊” もそうだったが、これまで見た電動キックボードで、警視庁の言う装備を付けているものは一つも無かった。ネット情報を見ると、販売者は公道を走るときは原付免許とそれなりの装備が必要、とは言っているが、買う側は「公道を走ることはしません」と言っておけば買えるのである。3~10万円程度で手に入れられるので、ママチャリと同等で手に入ってしまうものもある。スポーツサイクルより安い。それで、楽チンに結構なスピードで移動できる。見つからなければかまうことは無い。見つからない路地を走っていればいいのさっ!というところだろう。現に、これまで出会っているのは、大きな通りではない。街中の大通りに挟まれた路地ばかり。乗る側にとっても、クルマがガンガン通っている場所ではないから、安心して乗れるのだろうと思う。が、歩行者、自転車、などの側に立つと、ソコソコの速度で音無し走行してくる電動キックボードは、結構な恐怖対象になるのだ。その、ソコソコの速度で直前横断された「ドライバーMの冷や汗」を想像して欲しいのである。

 たしか最近、電動キックボードでお年寄りをはねてしまった、という事故があったはずだ。原付仕様に変えていない無免許車両だったと聞く。そんな事故がアングラでどんどん増えていくのではないかと思うと、ゾッとする。

 舗装路が完備している都内だから起こる、特殊な交通事故。田舎の砂利道では、絶対起こらない。そもそも、砂利道では電動キックボードは走れない。都会特有のコマッタ現象の一つなのかも知れない。

 以前、セグウェイという、立ったまま自由自在に移動できる乗り物が話題になった。展示会場や屋外のコースなどで、その動きと走りを堪能する催しが開かれ、映像がいろいろなところで公開されていた。体の傾きだけで向きと速度を変えられる未来志向の移動ツール。その先見性はなかなかだと思ったが、実際にはかなり限られた場所だけでしか使えないだろうなぁ、と予想していた。予想どおりで、その後の展開はかなり限局されているようだ。

 そんな未来志向移動ツールと比べると、電動キックボードはただの電動ボードだ。足で蹴る代わりに電気で動かすというだけのもので、新規性はどこにも無い。遊び道具としては使えると思うが、それを一般の移動ツールとするのは間違っている。危険回避の仕組みが全く整っていないからだ。

 役所がらみの申請が出てしまったので警察庁が実証試験を、という流れも、本当のところは、業者→政治家→省庁 というゴリ押しの結果なのではないかと想像している。

 電動キックボードは、あくまでも「レジャー施設内で遊ぶ道具」であって、「公道で使うもの」ではない。
 だいいち、あんな装置にミラーやウィンカーを付けて、かっこいいですか? ゴテゴテして、使いにくくなること間違いなしである。そこまでして買う人はいないと思う。

  実証試験をどのように落とし込むつもりなのか、警察庁の良心に期待したい。