どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「サンゲリア2」…フルチ不在、欲張りハッピーセットなゾンビ

サスペリアPART2」だの「続・荒野の用心棒」だのいい加減な邦題が多いこの界隈、「サンゲリア2」などと言われても「お前は本当にサンゲリア2なのか?」…と訊きたくなるものですが…

内容的には全く繋がっていないものの一応当初はフルチの「サンゲリア」の正当な続編をつくろうという意気込みのもと制作された作品のようです。

そもそもロメロの「ゾンビ」に便乗して「ゾンビ2」と勝手に名乗ったのが「サンゲリア」…

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日本の配給会社は「サスペリアがヒットしたからサ行の5文字で行ったろ!」と思ったのかこんな命名となり、原題・邦題は並べてみると結構ややこしいことになってます。

さて88年公開の「サンゲリア2」、病気のフルチがフィリピンロケに耐えられず途中降板。ブルーノ・マッティという監督が後任について残り半分くらいを担当したらしくかなりチグハグな出来栄え。

サンゲリア」(1作目)の功労者である特殊効果のジャンネット・デ・ロッシや音楽のファビオ・フリッツィも不在…グロ描写はあってもいつものフェティシュな感じはなくフルチらしさ皆無の作品です。

けれど見所がないかと言われればそうでもなく、色んな映画からちょっとずつパクってきたような既視感ありありの内容が清々しく、B級ゾンビ映画の欲張りハッピーセットみたいな1本になっていました。

 

冒頭、出だし「デモンズ」に似た感じの曲が流れる中、旋回するヘリコプターから捉えた映像はどことなく「死霊のえじき」を彷彿とさせる幕開け。

舞台はフィリピンにある米軍管轄の研究所。
ある日生物兵器のサンプルがテロリストによって盗まれてしまいます。

中には感染すると人肉を食って暴れるようになるウイルスが入っており、持ち逃げしたテロリスト自身が感染しゾンビ化。

軍が到着してその死体を焼却しますが、細菌が煙とともに拡散、鳥や人に感染が広がってしまう…と完全に「バタリアン」な展開。

特効薬を開発しようとする研究者と市民を丸ごと犠牲にしようとする軍部が対立、ガスマスク付けた軍人がゾンビを殺戮するところはロメロの「ザ・クレイジーズ」のよう…

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なんか色々混ざったようなプロットが贅沢です(笑)。

本作に登場するゾンビは大半がゆっくり歩きのゾンビですが時々めちゃくちゃ動きが俊敏でナタで攻撃してくるような奇行種が…さらには記憶を保持して言葉を発する者までいて設定がまばら過ぎる!!

しかし異国情緒漂うロケ地には雰囲気があり、多勢に無勢で囲まれる場面などはちゃんと危機感が出ていたりと良い点もチラホラ。

プールで溺れた女性を助けに行って岸まで引き上げたら下半身がない…!!はおっと思う名シーンでした。

残念なのは視点の定まらないストーリーで主役かと思ったキャラクターが死んでは中途半端に交代を繰り返す…

監督降板劇もあってこういうチグハグな脚本になってしまったのかもしれませんが、主人公に感情移入できるかどうかがサバイバルものの肝なのにこれが大きく削がれてしまってるのはイタいです。

しぶとい奮闘ぷりが勇ましかった軍人・ロジャーが感染ゾンビと間違えられて撃たれる様は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のラストが頭をよぎります。

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↑倒れ方はエリアス軍曹っぽい(笑)。

幕間には黒人ラジオDJのキャラクターが登場し、事態を警告するアナウンスが再三流れますがこういう演出もロメロっぽい。
男女2人がヘリで逃げるラストも完全に「ゾンビ」でした。

本家「サンゲリア」にあった荘厳な雰囲気や終末感はゼロ、ゾンビの出来も土中ミミズゾンビのようなインパクトのあるものはおらずオリジナルの世界観みたいなのが全くない作品でした。

フルチらしさが感じられず本人も自分の作品じゃないと言ってるらしいのには納得。

でもなんでしょう…色んな作品を都合よくごった煮した80年代B級映画の残りカスみたいな感じ、自分は嫌いじゃなかったです。

ゾンビと対決するシーンで毎回かかるBGMが戦隊モノみたいな曲だったり、特殊メイクが顔部分しか施されていなかったり…全編粗が目立ちますがフルチ不在の中必死に切り貼りしてつくった懸命さはなんか伝わってきました。

タイトルは「サンゲリア2」より原題「Zombi3」の方がしっくり来るかも…B級ゾンビ映画が好きなら充分楽しめる作品として評価したい1作でした。