どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「俺たちは天使じゃない」(1955)…すんごいテキトーで謎にあったかいクリスマス映画

カサブランカ」のマイケル・カーティス監督とハンフリー・ボガートが再タッグを組んだコメディ作品。

ツッコミどころ満載ですが、掛け合いがとても面白く古い作品なのに爆笑して観てしまいます。

ジョセフ(ボギー)、アルバートアルド・レイ)、ジュールス(ピーター・ユスティノフ)の3人はある夜刑務所から脱走。

アルバートは毒蛇のアドルフをペットとして飼っていてオシャレなバスケットに入れて持ち歩いています。(動物可愛がる囚人あるある)

近くのフランス植民地の町に身を寄せた3人でしたが、どこもかしこも保釈中の囚人だらけ、「この中なら混じっててもバレない」と余裕。

3人のいた監獄は「パピヨン」でおなじみのデビルズ島らしいのですが、本作の雰囲気は驚くほど緩いです。

とある雑貨屋をみつけた3人は屋根修理をタダで引き受けると嘘をついて物を盗もうとします。

しかし下世話な好奇心から雑貨屋家族を天井から観察。

結婚18年目なのにラブラブな夫婦、パリにいる幼馴染に恋焦がれている純粋無垢な一人娘…”きれいなもの”を目にして思いがけず心動かされる3人。

しかし雑貨屋はツケ払いの客が多く、店主の善意を利用して後からクレームをつけてはカネを払わない客もいて店は経営難に陥っていました。

「俺が一肌脱いでやろう」と接客係になるボギー。

さすが元詐欺師、要らないものを売りつける天才、ハゲに整髪料を売りつけるなど離れ業をやってのけます。

なぜか料理も達人級のボギーは店の奥さんとすっかり打ち解けます。

「信じられないわ、あなたが前科持ちなんて…なにをやったのかしら」
「病気に効くといって瓶詰めの空気を売ったのさ」

(この人現代でも上手くやっていきそう)

アルバートは恋の悩みを相談する一人娘のイザベルと仲良くなります。

「あなたとても罪人にはみえないわ、なにをやったのかしら」
「金を貸してくれない親戚を14回火かき棒で殴ったのさ」

(お前はホンマにヤバい奴や)

当初の予定では物を盗んで家族の首を掻き切ってやろうと考えていた3人でしたが、一家とあたたかいクリスマスディナーを一緒に迎えてすっかり心変わりしてしまいます。

そんな中、雑貨屋の経営主で大金持ちのアンドレ叔父と甥のポールが突然パリからやって来ました。

富豪なのにドケチなアンドレは父親のフェリックスに「店の帳簿をみせろ」と迫ります。

「全然儲かってないし先月の帳簿も全くつけてない」…

大人になって観るとこの叔父間違ってなくてオトンの方がアカンのとちゃうか、と思いますね(笑)

そこに颯爽とまたボギーが助っ人に入り「俺は工場7つ分でっち上げたことあるから任せとけ!」と偽帳簿の作成に掛かります。

ところが改ざんする前に目ざとい叔父は帳簿を見て激怒。

脱走囚3人が「アイツやっちまうか」と冗談混じりに不謹慎極まりない裁判ごっこをして遊んでいると、アルバートの飼っていた毒蛇が脱走、アンドレ叔父を噛んで死なせてしまいます。

3人はこれは事故だと開き直り今度は遺言書を偽造。

フェリックス一家に大金が入るよう細工しますが、叔父に似てガメつい甥ポールはそれを燃やします。

その上娘のイザベルを裏切って造船屋の令嬢と婚約していたことが発覚、また3人が冗談混じりに「やっちまうか」と談笑しているとまたまた毒蛇が甥を…(以下略)

 

「蛇が勝手に嫌な奴を噛む」というアホみたいなストーリー。

でもこのドタバタ劇が可笑しく、誰も嫌われ者の叔父を起こしに行かないので第一発見者がいつまでも現れない、上品そうな奥さんが「私がアイツのこと殺してやろうと思ってたのよ」と物騒な告白をし始めたりで笑ってしまいます。

スカッとジャパン並みの非現実さで邪魔者が退場して一家には幸せだけが残るご都合主義なドラマ展開。

一家に感謝された碌でなし3人が高跳びしてハッピーエンド…だとしっくり来なかったと思いますが、なんと3人は自ら元いた監獄に戻ることを決意します。

「外の世界は危ない。囚人の方がマシな奴が多いかもな。」(なんでだよww)

でもこのエンディングが妙に洒落ていて、3人(+1匹)の頭に天使の輪っかが乗っかるラストが何だかとっても可愛らしい。

3人とも悪い奴だし殺人事件だし、「素晴らしき哉、人生」などと比べるととんだ不真面目映画ですが、思いがけぬ良縁が思いがけぬ幸運を呼び込む…ゆるっとしたテキトーさになぜか心があたたまります。

舞台劇のような地味な作りなのに、台詞が巧みで俳優の掛け合いの演技だけで楽しめてしまうクラシック作品でした。