〝サンゲリア〟と〝サンタマリア〟を掛け合わせたような怪しいタイトルですが、ニューヨークに実在している宗教〝サンタリア〟を題材にしたという87年公開のオカルト・ホラー。
監督はジョン・シュレシンジャー、主演はマーティン・シーン。
じわじわ追い詰められていくような「ヘレディタリー」系の怖さ。生理的嫌悪を催すようなグロ描写があったりで、とても怖かった記憶のある作品です。
精神科の警察医カル(マーティン・シーン)はある日突然妻を事故で亡くしてしまいます。
ミルクが溢れて床が濡れて壊れたコーヒーメーカーが感電して目の前で妻が電気ショック死…このシーンが思いの外残酷でビビりまくります。
冒頭ジョギングする主人公の後ろから静かにやって来る牛乳配達のトラック…逃れられない死のピタゴラスイッチがゆっくり作動していくような不穏な映像づくりが巧みです。
ショックから立ち直るためカルは一人息子のクリスと共にニューヨークへ引っ越すことにしました。
姉夫婦や家政婦の助力を得て少しずつ明るさを取り戻していくクリス。
カルは不動産の管理人で面倒見のいい女性・ジェシカといい感じに。(お父さん、早いっ!!)
一方近隣では幼い男の子が殺される連続殺人事件が勃発しており、カルは事件を捜査中にメンタルを病んだ警察官・ロペスの担当医を務めることになります。
少年たちは何かの儀式のような殺され方をしており警官・ロペスは宗教団体が絡んでいるのでは…と疑っているようでした。
しかしある日突然カルに謎めいた伝言を残し自殺を遂げます。
不審に思ったカルはロペスが関心を持っていた麻薬患者を支援する財団の募金パーティーに潜り込みます。
しかし密かに息子・クリスの下に教団の魔の手が迫っていたのでした…
「慈善財団が実はヤバいカルト集団と繋がってた…!!」…どこまで教団員が潜り込んでいるのか警察になぜか記録が残ってなかったり身近に潜むカルトの存在がひたすら不気味。
知らない間に息子が得体の知れない呪術グッズを持っていたり、家政婦さんがまじないグッズをベッドの下に仕込んでいたりと、「誰が敵で誰が味方なのか!?」疑心暗鬼になるような展開にドキドキさせられます。
でも家政婦さんは子供を守ろうとしてただけだったというあるあるなオチ。
強力な呪いをかけていたのはカリブから来たという謎の司祭。
(めっちゃ強そう)
一緒に事件を調査していた恋人のジェシカも彼の呪いを受け、顔に謎のデキモノができてしまいます。
そしてデキモノが破裂して中から小さな蜘蛛がたくさん…
昔のホラー漫画みたいなこのシーンも怖くてゾワゾワさせられました。
不審な出来事が立て続けに起きて、カルは姉夫婦と共にコテージに出かけていた息子クリスのもとに急いで向かいます。
ところがなんと姉の夫・デニスも教団の手先でした。「クリスを生贄にするので父親であるカルが手を下して我々の一員になれ」…と迫ってきます。
デニスはかつてスーダンに旅行に行った際、病気にかかっていた息子を自らの手で殺し、その代わりに地元の干ばつと疫病を終わらせたのだといいます。
教団に生贄を捧げれば1000倍もの望みが叶えられる…富や名声のため自己を正当化して暴走してしまう教団は恐ろしいです。
けれどそのメンバーたちも元々は何か不幸があって世界に絶望してしまったのかもしれない、何かを失う怖れからこういうカルトにハマってしまったのかもしれない…と思わせる節もありました。
なぜカルの息子のクリスが生贄に選ばれたのか(貝を偶然拾ったのがサイン??)その理由をきっちり明かして欲しかったなあ、前半全然出番のないデニスが裏切り者役でもショック度がイマイチなのでもっと伏線の描写とかあったらよかったのになあ…
教団の背景や儀式の内容など設定がもう少し深掘りされていればかなりの傑作に化けていたのではないかと思いました。
ラストは工場の煙突内部!?でバトル。
教団員に取り囲まれるもカルは自我を失わずにクリスを助けに走り、見事対決に勝利し息子と共に家路につきます。
そして数年後…カルはジェシカと結ばれクリスも一緒に田舎で平和に暮らしていました。
ある日吠える犬を追って納屋に向かうとそこには奇妙な祭壇が…
それはジェシカが行った儀式のあとで「家族を守るためよ」と彼女は呟きます。
なんと今度は新しい奥さんが変なカルトにハマってしまったのですね…
ちょっと唐突な感じもしますが、無限ループのバッドエンドって感じで、ラストもとても怖かったです。
あれだけ怖い目にあった人が身を守ろうとしてまた新たなカルトにハマってしまったと考えるとそう突飛なことではないのかも…精神の拠り所となって他人を傷つけなければそれはそれでいいのかもしれませんが…
複雑な気持ちの残るラストでした。
実際の宗教「サンタリア」(サンテリア)がどんなものなのか知らず、誤解を与える内容になってる気もしますが、家政婦のおばちゃんはいい人だったり一応お話的には一部の集団だけがカルトに走った…という設定のようでした。
冒頭で感電死する妻の首に十字架のネックレスがかかっていたり、キリストを信仰する刑事が自死を選んだり…「神様は何の助けにもならない」…キリストの信仰のある人がみれば余計に怖いお話なのではないでしょうか。
マーティン・シーンをはじめ顔に迫力のある役者さんが多く、子役の男の子の演技も上手。
不穏な空気が色濃く、ギョッとする怖いシーンがいくつかあって、記憶に残るホラー作品でした。