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「そういうお前こそどうなのだ、諦めが悪いぞ」

「なにがだ?」

「千年先の世であっても会いたいと願う、そう言ったのは誰だ」

凍てつくような寒さを通り越して、ありとあらゆるものを凍えさせて凍り付かせ、葬り去る極寒の景色がどこまでも広がっていた。

ここでは血が噴き出したとしても、あっという間に凍り付いて瞬時に砕けて消えてしまう。

そんな寒さの中、一人の若者が剣を抱えて片膝を立てて断崖絶壁に座っていた。

「いつまでここにいるつもりだ?」

ありとあらゆるものを凍えさせ、砕く寒さなのに、その者は平然としていた。

吐く息は白く、あっという間に砕け散っていく。

「そういうお前こそどうなのだ、諦めが悪いぞ」

「なにがだ?」

「千年先の世であっても会いたいと願う、そう言ったのは誰だ」

笑うように声をかけた相手に問い質した。

「・・・・よく覚えているな、そんなこと」

「忘れるわけがない、お前の願いだ。

何物に対しても願わず、思いを寄せず、心を拒絶していたお前が唯一望んだことだぞ、忘れようがない」

「・・・・忘れろ」

不機嫌そうに、困ったかのように言う若者に対して、

「それならばあえて聞こう、影〇」

「・・・何をだ?」

「お前はかの者達の想いを忘れられるのか?」

若者にとって一時も忘れたことがないことを、あえて問い質した。

「・・・・」

「お前を慕い、再び出会えることを真摯に願い、輪廻の輪へと戻っていった者達のこと、忘れられるのか?」

「忘れられる訳ではない・・・・」

振り絞るかのような言葉だった。

「ならば同じことだ、私にとっても忘れられる訳ではない」

「だからと言うて・・・」

「あいつがどこにいるのか、お前は知っているのか?」

不意を突くように言葉を紡いだ。

「第八層・・・・消滅地獄」

「そうだ、だがあいつはいつか必ず帰ってくる。

あいつはそういう奴だ」

「あの、馬鹿・・・帰ってこれるはずがないのに・・・」

固く握りしめた拳から血が滴り落ちた。

「あいつはお前が行ったことを知っている。

知っていてなお行ったのさ。

だからお前は幸を得るべきだぞ?」

笑うように言うと、立ち去るように促した。

「さて、いけ、影〇

次に来るときはお前の幸を得た時だと心得よ。

お前はどんなことがあっても一人ではないぞ、忘れるな」

「・・・・」

「親殺しの汚名、それはお前にとって辛きことかもしれぬ、だがお前があの時ああせねばさらに辛き事になっていたのだ。

お前はお前を拾い、育てた者達を助けたのだ」

「・・・・それはないな、どんなことがあっても・・・」

「変わらぬ悲しみ、どこまでも背負うていくか・・・だが、その心を知る者はいるな。

いずれ会うことができようさ」