昨日UPした、キャスト別感想に続き、まだまだ『にぎたつの海に』沈んでいるワタクシが、ハマったツボポイントを書き記しておきます。
お付き合いいただける方はどうぞ♪
目次:
『にぎたつの海に月出づ』の世界に酔った
私はこの世界観が好きなのと、演出の平松先生の紡がれる言葉が美しく、
舞台装置も衣装も音楽も演出も大好きでした^^
もう、夢心地♪
作曲・編曲 太田健・小澤時史
装置 木戸真梨乃
衣装 加藤真美
演出助手 谷垣開・小池隆太
他、スタッフさん多数
好きな演出(順不同)
回想シーンで始まり、終盤で再び回想シーン
幕開きは、年老いた斉明天皇(詩ちづる)と百済の覚従(碧海さりお)の場面。
唐と新羅の連合軍と戦う百済に援軍を、と覚従が依頼しています。
智積(極美慎)と海を渡ってきた覚従の回想…というのが本編なんだとわかります。
冒頭の場面は2幕の終盤にも同じセリフでもう一度語られます。
2021年の月組公演『桜嵐記』(演出:上田久美子=退団)でも冒頭で楠木正儀と弁内侍の回想で始まり、回想で終わりました。
時の流れをしみじみと感じさせるこの手法、私は好きです♪
観勒僧正とダンサーズ
専科から特出されている悠真倫さんが演じる観勒僧正。
僧侶だからとて、清廉潔白ではない人物。
まっすぐな心で生きている智積との対比。
僧侶の場面で、悠真倫さんとダンサー4人(プログラムが無くてメンガーがわからないのが残念)のダンスが素敵。
托鉢笠と袈裟がいい仕事してます。
笠は、とても目立つので印象を残しますし、袈裟(薄い生地)は動く度にひらひらと揺れてとても美しいのです。
まさかの僧侶ダンサーズ、素敵でした。
602年に百済から大和に渡ってきた観勒は天文、暦本、陰陽道を伝えたと言われています。
我らの「智」を全て与えない、百済のためにな、と観勒。 ほぉぉ〜〜。
中大兄皇子
…は智積(百済人)と寶皇女の間に生まれた子だったんだ…というのが、以前にも書きましたがちょっとびっくりでした。
中大兄皇子は舒明天皇(田村皇子)と皇極天皇(寶皇女)の間に生まれた、というのが通説です。
寶皇女に空白の10年があったことはわかっているので、平松先生はこの10年に、架空の歴史ロマンをつめこまれたのでしょう。(想像〜♪)
まぁ、文献の少ない時代のことですし…
2019年の星組公演『鎌足』(演出:生田大和)のラストで、 天寿光希演じる蘇我蝦夷の書記官、船恵尺(ふねのえさか)に、
「歴史は、生き残った者が作る」と言わせています。
歴史を編纂するものが、主人を立派な人物に仕立て上げることも可能なのだ、と思いましたねぇ…
事実と史実は違うかも知れない、ということか?
んなわけで、こういうロマンもあり、なんですね^^
余談ですが…『鎌足』でも、オレキザキ(輝咲玲央)が蘇我蝦夷を演じています。
ハマりやくですね!
ちなみに、中大兄皇子は瀬央ゆりあ、蘇我入鹿は華形ひかる、宝皇女は有沙瞳、という布陣でした。
偽の日記で陥れられた智積
智積が書いたとされる日記を証拠に、寶の父(美稀千種)が謀反の罪で捕らえられます。
こんなことは書いてはいない、と訴えるが…学堂のどこを探しても智積の本当の日記は出てきません。
投げるのが難しい、と言っていたきわみ、1幕の最後で巻物を放り投げるとスルスルッと転がっていく。(布でできてます)
その巻物の布を使ってのダンスもがんじがらめにされている感じが表現されていて面白いな、と思いました。
にぎたつに船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
にぎたつにまでやってきた入鹿と戦う智積だが多勢に無勢で敗れます。
観勒は「百済の民は百済で裁く」と言うので
蝦夷は「船を用意しろ!!」…小さき船をな…ニヤリ
く〜〜〜っ!!
意気揚々と大和に来た時の大きな船とは比べ物にならない、公園の池のボートみたいな船を用意されていて…涙
これで百済まで帰れるはずもなく、死ねと言っているようなもの。
覚悟を決めたのでしょう、
にぎたつに船乗りせむと月待てば…の歌を詠います。
老いてからの斉明天皇(寶皇女)が、援軍として百済に向かう中大兄皇子と大海人皇子が船に乗り込むのを見送って
にぎたつに船乗りせむと月待てば…と智積の歌に呼応しているのが泣かせますね…
ラストは大船が割れて、奥から智積が現れる…
いちいちワタクシのツボでした。^^
キュンポイント
泣きたい時は泣けばいい
泣きたい時は泣けばいい。
心に秘めて耐えてきたのでしょう?
こんなことを言われたら、そうでなくてもゆらゆらしていた心が、グラッと智積に傾きますよね^^
日記を盗み見て智積の思いを知る寶
1月27日の自分の記事内容、再掲します
智積が眠っている隙に、寶は書き物を覗き見ると、「あの手のぬくもり忘れることができない」、と書いてある。あの手、とは寶の手。
智積は自分に好意を寄せていることを確信した寶はドキドキ。
急に智積が目覚めて、目が合い、急によそよそしくなる…あるある。
夜更けにこんなところに来てはあぶない、って…
そう言えば、夜更けなのに、明かりも持たずに学堂に来たのね。
で、どうやって日記を盗み見たの?…と細かい所が気になる人は気になりそう。
学堂の階段に座って
ここ、最高!
これも 1月27日に書いた記事、再掲します。
智積:いずれは百済へ戻ることとなりましょう
寶:それまでこうして私の話を聞いてくださいますか
智積:私でよければ
…でそっと肩に頭をあずける寶…
田村皇子の嫉妬
田村皇子は、以前から寶皇女に想いを寄せていたのに、当の寶は、
智積の日記を抱きしめて
「ここに私のことが書いてあるのです」「こんな気持ちになったのは久しぶり♡」と。
田村の表情が硬くなったところに
智積現れ、寶皇女といい雰囲気。
高いところの巻物を取ろうとするが届かない寶に、はい、と取ってあげる智積。
少女漫画や〜ん^^
田村ムラムラ。嫉妬の炎メラメラ。
朝顔の誓い
ムクゲには「一途な心」という意味があり、ムクゲに似た朝顔に共に生きるという誓いを立てるところはぐっと来ます。
国と身分を越えて、小さき命のためにともに生きることを朝顔に誓う。
なんて素敵なエピソード。
赤ちゃんに、「ムクゲの花」の百済の子守唄を歌って聴かせるきわみ。
今回の極美演じる智積が穏やかで優しくて、真っすぐで…花組に旅立つ前に、素敵なお役をもらいましたね、極美慎くん。
すごいはまり役!
千秋楽のご挨拶でも、宝物になりました、と語っていましたが、本当にそう思う。
お前はもう皇子さまなのだな
共に生きるはずだったのに、寶は、田村皇子の希望で皇后になり、妻と我が子から引き離された智積。
岡本宮が火事だ、と言う知らせに、岡本宮へ駆けつけ、火の中へ飛び込んでいく智積。
動けなくなっていた侍女の秋坂(星咲希)と腕の中のわが子を助けました。
赤ん坊は中大兄皇子となり、我が子なのに遠いところへ行ってしまったのだな、と
寂しさを感じている切ない一言、
「お前はもう皇子さまなのだな」
中大兄皇子は、父が誰であるか知らないと思っていたのに、後に知っていたと知らされるところは胸熱!
その後、入鹿の軍都の戦いで結っていた髪がぱさり。
万事休す。
寶の肩にかけた布=領巾(ひれ)を使ったダンス演出
天女の羽衣のような布は、領巾(ひれ)というそうです。
このストールのような布を使ってのダンスというか舞がキレイ〜♪
『激情』のホセとカルメンのダンスを彷彿とさせました。
領巾を使って手繰り寄せたり、近づいたり離れたり。
デュエットダンスでは幸せいっぱいを感じさせてくれました。
美しい 花びら舞い落ちる
ラストシーンで、スポットの中、花びらが舞い落ちて、本当に美し世界。
千秋楽だからか、前からなのかわかりませんが、一枚手にとって感無量の表情を浮かべる極美慎。
すごく手応えを感じ、胸に刻みつけていたのではないかと想像しています。
私も胸がいっぱいになりました。
わかりにくかった所
盟神探湯(くがたち)で裁かれる程に、寶の夫の高向王(颯香凜)は寶に暴力を働いていたらしい…
その時付けられた寶の腕の傷を、田村皇子(きしょうかずと)が寶の腕を取って高々と掲げて見せるけど
腕に赤いものが付いているのは、高向王に付けられた傷だったのか…
高向王の着物が汚れていたのは、逃げ回った時に付いた汚れ?
このあたりは、想像で補いながら観てました。
登場人物が多くてテンポが早い
登場人物がそれぞれにストーリーを持っている歴史上の人物だから、全部描ききろうとすると駆け足になり、舌足らずにもなりがち。
私は、その他の配役が公開された日に、自分で人物相関図を作って、年齢やら即位順など書き込んでいたので、
役名と演者、役どころがある程度わかっていました。
歴史上の人物なので、ググると周辺情報もわかって興味深かったです。
もし何の予習もなくこの作品を観たとしたら、あれは誰? どういうこと??と頭の中に?がたくさん飛んだのでは、と思います。
平松先生はデビュー作ということで、たくさんのエピソードを盛り込みたかったのでしょう。
扱うテーマが壮大で大変だったのではないでしょうか。
先生の作品への熱意と生徒さんへの愛を感じました。
意欲作だと思っています。
平松先生、今後も、素敵な作品をたくさん生み出して頂きたいです!!