日本バブル

財務省と日銀は為替介入に意味がないと知りつつも介入する

日本バブル

9月22日(木)・・日銀は1998年以来となる円買い・ドル売り介入を実施し、145.9円付近まで上がっていたドル円は一気に暴落する展開となった。以下は介入時のドル円時間足チャートだ。

20220922ドル円時間足チャート

9月22日の17時台の時間足は、高値145.84円から安値140.64円まで5円幅の暴落となった。やはり介入パワーは凄いな。

ただ、この介入については一時的との見方が強く、アナリストの皆さまからは「円安基調は変わらず」「150円行くんじゃね」等、キビシイ指摘が相次いでいる。

確かに、利上げやQTという金融引締めでドル高に向かうアメリカと、金融緩和継続で円安誘導を続ける日本の金融政策の差に変化があったワケでもなく、最強通貨ドルvs最弱通貨円というファンダメンタルズは何も変わらない。

また、「仕掛けられる怒涛の円安はグレートリセットの序章」で紹介したように、現状は「円安」というよりは「ドル高」なので、いくら日銀(財務省)が円買いしたところで根本的に何かが変わるワケではない。

介入の意図が円安基調の転換にあるとするなら、大多数のアナリストが指摘する「意味がない」「一時的」というのはごもっともだ。

なお、日銀は円安基調が激しかった1998年にも円買い介入している。以下は1998年8月頃のドル円月足チャートだ。

1998USDJPY月足チャート

この年に日銀は、4月9日に約2000億円、4月10日に2.6兆円、6月17日に2300億円の3回もの円買い介入を行っているのだが、4月と6月の月足は円高方向に振れた形跡があるものの円安の勢いは止まっていない・・が、1998年8月に突如として円高に転換している。

1998年8月と言えば、ロシア財政危機が発生し、アメリカの巨大ヘッジファンドLTCMの破綻を皮切りにファンド勢の破綻連鎖が懸念される状況となった頃だ。

この時は、世界的な金融危機の恐れもあって世界各国とも金融緩和に傾き、円安基調は終了した。

結局のところ円安基調は日銀砲とは無関係に終了しており、日銀砲は外貨準備高減少による不利益を懸念して途中で断念されており、3兆円以上もの外貨準備を無駄にしただけのものだった。

と言うことで、歴史的に見ると円買い介入は効果を発揮していない。

さて、今回の介入後の動きを見てみたい。以下はドル円時間足チャートだ。

20220927ドル円4時間足チャート

介入により145.9円→140.34円まで落ちたが、わずか3営業日で144.78円まで戻しており、介入効果が持続していないことが分かる。

日銀も舐められたものだが、円買い・ドル売り介入の原資となる1.3兆ドル程度の外貨準備は、ドル円市場の規模に比べるとあまりに小さいので仕方ないところ。

モーサテ情報では、外貨準備1.3兆ドルに対してドル円市場は1日で0.9兆ドル規模とのことなので、市場で全ての円売りを吸収しようとしたら日銀の弾は1日半も持たずに尽きてしまう。

ちなみに、日銀の外貨準備1.3兆ドルのうち、すぐにでも動員可能な現金部分は1350億ドル程度なので、基本的にはこれを使い果たしたら勝負終了となる。

2011年の円売り介入の原資は無限に刷れる円だったことを踏まえると、円買い介入のハードルは高いと言える。

なお、日本が保有する1.2兆ドル規模の米国債売れば良い説も散見されるが、「せっせと働いても暮らしがラクにならない理由」等で紹介したように、アメリカは米国債売却を「宣戦布告」と捉えるほか、米国債売却を企図した議員は失脚・自殺(他殺?)に追い込まれているなど、事実上米国債の売却は不可能なので介入弾としては使えない。

ちなみに、今回の日銀砲は3.6兆円規模だとか。

これまでの介入履歴を踏まえると、初回からかなりの弾を打ち込んだのは間違いなさそう。

まだ数発は打てそうな感じだが、限界効用低減の法則を踏まえると、次回以降の介入は初回ほどの効果は得られないだろう(心理的効果含め)。

また、介入には効果が無いとか虎の子の外貨準備を失う以外にも問題がある。

円買い介入とは、市中の円を日銀が大量に吸収するオペレーションであり、必然的に円金利に上昇圧力がかかるため、並行して国債買いオペレーションをやる必要が出てくる。

つまり「財務省の円買い介入」と「日銀の金融緩和継続」とは円安誘導&円高誘導という真逆の政策で、日本の狼狽えっぷりを見せつけてさらなる円安進行を招きかねない。

ただ、広い世界には日本に先駆けて金融政策の迷走を見せつける国がある。

それが、金融引締め政策(利上げ・QT)と緩和的財政政策(大規模減税)を並行させるイギリス先輩なのだが、そんなイギリスではポンドが歴史的な大幅安となっているとか。

ポンドルの日足チャートを見ると・・・

20220927ポンドル日足チャート

ドル高基調の中でポンドは弱含みだったところだが、大規模減税を発表した23日から大暴落となっており、対ドル最安値を更新しているとか。

なお、イギリスでは通貨ポンドだけでなく債券も暴落(=利回り急上昇)する「イギリス売り」となっているが、この背景についてブルームバーグが解説記事を配信している。

トラス首相が打ち出した大規模減税とは、国債を原資として市中にカネをばらまく緩和的な施策だが、イギリスではインフレ対策として利上げ・QTという引締め施策を行っている。

平たく言うと、減税して通貨供給量を増やしつつ10%近いインフレを抑えるという無理筋な迷走政策ということになる。

ブルームバーグによると、このイギリス売りは市場が政府に「迷走Nooo!」を突きつけている証拠だとか。

実際にNoooo!!と言っているのかどうかは分からんが、金融引き締めで下落が見込まれる国債を欲しがる人はいないだろうし、そんな中での大規模減税の原資は国債だろうから「イギリス財政大丈夫か」となっているのは間違いなさそう。

なお、ポンド急落=インフレ加速要因にもなるので、インフレも加速することになる。

なお、アメリカの元財務長官のサマーズ氏もイギリスの政策をクソミソに批判している。

サマーズ氏については、このブログでも紹介したことがあるが、FRBが「インフレなんて一時的だYO!HAHAHA」と余裕かましてた時に、今日の事態を予測して批判していた優秀なお方だが、そんなサマーズ氏もイギリスの迷走をボロカスに批判している。

ということで、世界的に今一番アツいのはイギリス先輩で日本はその陰に隠れて一息ついているワケだが、あまり呑気にもしていられない。

と言うのも、日本では10年国債を誰一人として欲しがっていないという異常事態となっているのだ。

介入直前となる9月20・21日に国債市場で10年物国債の売買が成立しないという、1999年以来初の異常事態となったとか。

日銀は短期債に比べて「ハイリスクな長期債券(10年債中心)」を「大量に」買い入れる質的・量的緩和を継続しているが、日銀が政府から直接国債を購入するのはご法度なので、形としては市中の金融機関が買い入れた国債を日銀が(気持ち色をつけて)買い入れる形になっている。

日銀は既発国債約5割(530兆円ほど)を保有する莫大な買手で、お陰様で国債利回りは低位安定しているが、裏を返せば国債市場は歪みまくっていると言える。

国債取引不成立とは、金融機関同士の取引が無く「日銀以外に誰も国債を欲しがっていない」という事実上の国債市場の崩壊であり、イギリスのように国債利回りが突き抜けていく可能性を示唆するものだ。

今でこそ、日銀は無限指値オペで長期金利を抑え込むYCC(イールドカーブコントロール)をやれているが、市場は日銀のYCCの持続可能性や日本の財政規律について疑問を呈し始めていると言え、少しでも気を抜けばイギリス先輩の後を追いかねない状況となっている。

なお、日銀の国債保有額は余りに多く、国債利回りが上昇(=国債価格が下落)すると、日銀の含み損が膨れあがって事実上の債務超過となる可能性が出てくる・・。(いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円

ということで、ざっと円買い介入を振り返ってみたが、「円安を抑えることは不可能」「金融政策と矛盾」というのは間違いなさそうだ。

ただ、財務省・日銀とて介入しても円安抑制出来ないことは承知しているだろうし、世論対策や仕事やってる感を出すために3.6兆円の実弾(国富)を使うというのは考えにくく、介入の目的がどこにあるのか疑問なところだ。

・・ということで、介入の目的を考えてみたい。

まず思いつくのは、個人のキャピタルフライトの抑制だろうか。

実のところ、円売り勢の一員として「普通の日本人」が大健闘していることが分かっている。

日経さんによると、この20年で個人の対外証券投資・海外投信残高は大幅に増えているようで、今年に入ってからも兆円単位で外国株投信残高は増え続けているとか。

1000兆円とも2000兆円とも言われる個人資産の1~2割程度が外貨建て(ドル建て)に移行すれば、それは日銀の外貨準備高にほぼ匹敵する規模となる。

日銀が恐れているのは個人のキャピタルフライト・・とするなら、介入によって個人をビビらせるという効果はあるかもしれない。

とは言え、預金大好きな日本人がそんなに海外投資チャレンジするとも思えないので、介入の主な理由はこれじゃ無さそうだ。

そんな中で、あの原田武夫氏は無意味な介入には裏の目的がある・・的な意味深解説をしている。

まず、この動画で原田武夫氏は、海外からの資金をポッケに入れてしまう政・官の対応を批判している。その概要はこんな感じ。

  • 現在、日銀が資本のやり取りを止めており、海外から1億円以上の送金がなされない状況になっていると聞いている。
  • 海外からの1億円以上の送金があると、日銀は当日16時15分まで留め置いた上で、受け入れ可否を判断する。
  • 政府・官僚の皆さんに不都合となる送金等については、日銀から名宛人メガバンクに「これ何?」との確認が行く。
  • 資本のやり取りは基本は自由だが、その取引によって為替市場等に当局の思惑とは異なる影響が出ることもあるため、名宛人の銀行には事前に着金する旨を通知する必要がある。
  • なので、メガバンクは送金を知っているはずなのだが、日銀に睨まれるのを恐れて「知らないっす」となってカネは日銀に留め置かれる。
  • その後、日銀は名宛人メガバンクにカネを送るが、メガバンクは送金人に返さずに不明金用「特別口座」に入れて一定期間保管した後に日銀に戻し、日銀は総裁しか取り出せない「日銀特別口座」に入れる。
  • こうした(ポッケナイナイ)取引が、三井住友と日銀の間でなされていたことを自分は知っている。
  • 海外の国債金融資本もこのような目に合っているが、アメリカのカネは日本の財務・金融当局は手を出せないことになっているため、安倍さんのようなことが起きた。
  • このように、海外からの大量資金を日銀経由でポッケに入れ続けていると、来るべき日本バブル用の資金が入ってこなくなる。
  • 中央銀行システムとは、本来は皇室傘下の資金を分配する仕組みだったが、日銀が不思議なことやり始めたので、日銀を通さないやり方をすることにならざるを得ない。
  • 今回入ってきたカネも、これまでどおりの扱いが可能なカネなのか精査するが、抜かった・・となれば、財務省・日銀は人が死ぬ世界になるかもしれない。

としている。

既得利権構造の中の人たちにとっては、ヘタに海外マネーが入ってくるのは都合が悪いようで、その海外マネーをポッケに入れてしまっている・・ということか。

実のところ、一般財団法人国際貿易投資研究所が公表している対内直接投資額を国際比較すると、何十年にも渡って海外から日本への投資が少ないことが目につく。

https://iti.or.jp/stat/1-007.pdf

2020年にアメリカは10.8兆ドルを受け入れたのに対して日本は僅か2.4兆ドルと少なく、この傾向は過去に遡っても変わらない。

これは、日本人の労働コストの高さや日本人の外資嫌悪が理由と思っていたが、原田武夫氏の見解では日銀(&政府・官僚)による日本への資金流入の妨害が理由ということになる。

これが何十年と続いた・・・となると、本来的にはもっと経済発展していたかもしれないし、適切なところにカネが入らなかったために円高になっただけで経済は失速し、失われた30年となったとも考えられる。

マジっすか・・それなら、このカネが無かった方が良かったかもしれない。

もし、このカネが無ければもっと円安だっただろうから、輸入車は高嶺の花状態になっていただろうが、産業空洞化もなく中国とも互角に渡りあっていた可能性は高い。

これは結構な重いことやぞ・・。

なお、原田武夫氏は「24年ぶりの為替介入は誰のための介入なのか、この仕組みから誰が儲かるのか」「為替介入が無意味なのは財務省も分かっているが、その副次的効果が・・」としている。

意味深過ぎてよう分からんが、原田武夫氏は「今回入ってきたカネは止めちゃダメよ」としていることから、簿外資産絡みの巨額ドル資金が送金されており、それをポッケに入れる(=円転する)際に円高になるのを誤魔化すために介入した、と考えられるかも。

この説に基づけば、介入の目的とは国家的ポッケナイナイ事業ということになるが・・これが真実なのか!?

さて、「ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット」や「フィリピンでのマルコス王朝復活と金融システムの転換」で紹介したように、原田武夫氏は簿外資産の日本流入によるバブルを予測している。

原田武夫氏の動画はこれとか・・

これを参考にして欲しい。

原田武夫氏によると、「簿外資産」とは人類を未曾有の厄災から救うための大規模資金=人類資金であり、その投入時期が近づいているとか。

これらの動画で語られているポイントをまとめると・・

  • 簿外資産の受け皿となる日銀は莫大な額を円転する必要があるため、今のところは円安誘導を続けている。
  • 日銀が莫大な額の簿外資産を円転するほか、「世界中の人が円を持たなければならない状況となる」ため、強烈な円高となる。
  • 日本に流入した資金により、株式や不動産などは壮絶なバブルとなる。
  • ただし、人類資金ともいえる簿外資産は日本には滞留せず、事前に決まっている世界の様々なプロジェクトに回されることになる。
  • 日本は、壮絶な円高・バブル局面を経て後にひっくり返ることになる。

・・とこんな感じだ。

ただ、現実には日銀経由で簿外資産をポッケナイナイしているようなので・・どうなるのかは気になるところだが、原田武夫氏は日銀経由しない可能性を示唆しているので、いずれにしても簿外資産の円転により円安基調は止まることになりそう。

なお、9月5日付けのブルームバーグ記事で、ゴールドマン・サックスが3カ月後のドル円の見通しを125円→145円に修正したことが報じられている。

この記事の配信時点では日銀のレートチェックなど「145円の防衛ライン」は無かったワケだが、結果として日銀はゴールドマン・サックスの予告どおりの動きをした感じになっており、何か知っているんじゃないかと勘繰りたくなる。

そのゴールドマン・サックスは、黒田総裁の任期終了(2023年4月)まではドル円上昇基調としているものの、それ以降は円高となり6カ月後には135円、12カ月後には125円へ向かうとする。

表向きは、黒田総裁の任期まではドル円上昇し、その後はアメリカのリセッションや日本のインフレによYCC断念によって円高となる予想をしているようだ・・が、実は簿外資産の流入を予想しているのかもしれない。

また、ゴールドマン・サックス以外にも気になる点がある。

それは、過去の重大局面での日銀介入を見ると、実は天底付近で介入しているっぽいのだ。

その点を踏まえると、実は財務省の為替介入とは為替市場のトレンドが大きく変わる合図・・なのかもしれない。

そんな財務省は、リーマンショック後の2011年に底で介入(=ドル買い)し、2022年に介入(=ドル売り)した・・と言うことは今が天井なのかもしれない。あと2回くらいは介入するかもだが・・・。


最後まで読んでくれてありがとう!