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腕時計選びの常識に切り込む:メンズ・レディース用/高精度/ロングパワーリザーブ

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はじめに

腕時計を選ぶ際、あなたはこんなことを考えて、あるいは無意識に前提としていないだろうか。

  1. 男はメンズ用、女はレディース用の時計から選ぶ。
  2. 精度が低いものは駄目。
  3. パワーリザーブが短いものは駄目。

果たしてそうだろうか。

腕時計をメンズ/レディース用で分類するのは非常識(になる)

どのブランドのウェブサイトで確認してもらってもいい。好みの時計を探すフィルター機能には十中八九「メンズ」「レディース」の区別が存在している。たとえば、ロレックスのデイトジャストでみてみよう。小径から順に31、36、41mmが展開されている(2021年現在。なお、レディ デイトジャストなる28mm径も別ラインで存在している)。男性用でスモール(31mm)、女性用でラージ(41mm)を選択しても該当するものはないと表示される。これは男性に売る31mmの時計はない、女性に売る41mmの時計はない、と宣言しているに等しい。何をどうやって誰に売るかはロレックスの自由だが、正しい内容とは思えない。パテックフィリップ史上に残る名作「カラトラバRef.96」は当時メンズ向けだが直径は30.5mmだった。コテコテのパネライを着けこなす華奢な現代女性もいる。別にそのサイズ感が好きなら自由に着けていいじゃない。

筆者個人の体験だが、ある日カルティエのショーケースの前でサントスを見ていたら店員が「サントスはいくつかサイズがあって、Mサイズは婦人用、紳士用はLサイズになります。」と言われたことがある。いや、私は紳士(?)だがMサイズを愛用しているよ。その店員に害意があったわけではないだろうが、言われた本人が多少気分を害されたのは事実だ。

「レディース用」とラベリングされたものを男性が着ける場合、かなり高い心理的ハードルを飛び越えるための確固たる意思が必要になる。しかし考えて見れば、たかが時計を選ぶのに、なぜそんな障壁を設定する必要があるのか。ブランド側がそうするメリットは見当たらず、異性別向けの時計を着けている変わった人という誤解を生じさせる弊害を生むのみである。

腕時計を性別でカテゴリーする必要性と合理性は全くないと断言したい。万が一「そんなことをすると今までの男用/女用が混在して時計が選びにくくなるじゃないか!」と言っている人が居たら教えてあげて欲しい。単純明快にサイズ別のカテゴリー(大中小)を設定すれば解決する。

こちらの記事も併せて読んでほしい:Second Opinions: 全ての腕時計がユニセックスであるべき理由 - HODINKEE Japan (ホディンキー 日本版)

「低精度=買う価値が低い」という洗脳

次は、時計の精度について。

精度がいい時計に与えられる「クロノメーター」という称号を得るには日差マイナス4秒からプラス6秒以内が条件となる。ロレックスでは日差- 2~+2 秒だからもっとすごい。とはいえ、2021年現在の製造技術では機械式腕時計の精度は「日差数秒」が限界であり、精度に対する挑戦、限界への挑戦はまだまだ続くだろう、、これは時計にとって一つの素晴らしいことである(誤解がないよう、筆者は高精度を称賛していることは付言しておく)。

しかし、そもそも、大半のユーザーにとって機械式時計の精度が持つ意味は何か。

筆者は何事も行動が遅れるのが嫌なので、時計を合わせる際は標準より1~2分早い時刻に合わせている。だから多少時刻が狂っても気にならない(むしろ狂ったことに気付かない)。一日で何分も時刻が狂ってくるとさすがに困るが、こと筆者においては日差1分くらいまでなら全然問題なく許容できる。筆者が愛用しているセイコープロスペックスSBDC139は日差+25秒~-15秒で「精度が低い!」と考える人も一定数いるだろうけれど、日常の使用に支障を感じたことは一度もない。

なお、「日差1分以内」は現代のムーブメントならどんなポンコツでもおよそ全てクリアーできているだろう。

「パワーリザーブが短いもの=買う価値が低い」という洗脳

2021年現在、おそらくゼンマイを全巻きしてから70時間以上駆動するものが「ロングパワーリザーブ」と評されていて、それについて「金曜夜に時計を外して、土・日使わず置いても、月曜朝まで動いているのです!」などとして有難がられている。

ところで、筆者は腕時計を複数持っていて、なるべく満遍なく使うことにしている。同じ時計を二日以上続けて着用することは基本的にない。登板間隔は短くて中4、5日くらい、長ければ1週間以上出番がない時計も出てくる。つまりパワーリザーブが何時間であろうと次に使うときその時計は止まっていることが普通だ。そうなると、むしろ必要な時に必要なだけ動いて、使わない時は止まっていて欲しいという考えになる。というのも、機械式時計が駆動すれば部品の摩耗が進行する、当たり前の話だ。使わないときにまで無意味に駆動してもらっても、いわば有り難迷惑になる。

以上の理由から、現時点では極論だろうが、機械式時計のパワーリザーブは一日の活動時間分(12〜24時間)がむしろ理想ではないか。

仮に、時計を一本だけ持っていて毎日使うという人であっても、毎日使っている以上、自動巻き時計なら止まらないだろうから、やはりパワーリザーブは24時間あれば実用に支障はないはず。

もちろんパワーリザーブが長いほど便利なのは間違いないし、素晴らしいことだとは思うが、ロングパワーリザーブを求めるとデメリットもある。すなわち、機械を長時間駆動させるには相応の長さのゼンマイを格納しなければならず、必然的に香箱が大きくなっていき、あるいはマルチバレル(複数香箱)を採用すればそのスペースが必要になる。そんなわけで、ロングパワーリザーブは時計の大径化という副作用をもたらした。いまやドレス時計ですら40mm径が一般化しているが、個人的には良くない傾向だと思う。ドレスならクラシカルに30mm代であってほしいし、30mm代のドレスがやっぱりかっこいいと評価される時代になって欲しい。パワーリザーブは長いに越したことはないが、そのために理想の径(サイズ)を犠牲にしてはならない。本来重視すべきことが重視されず、どうでも良いことを重視しすぎていないかメーカーは再考すべき。

なお、最低限の実用面からみてパワーリザーブが24時間以上あればよいと割り切れるならば、現代のムーブメントならどんなポンコツでもおよそ全てクリアーできていることになる。

おわりに

以上のとおり、時計選びで暗黙の前提になっている事柄について一石を投じてきたが、要するに楽しい時計選びの邪魔にしかならないことは気にしなくていい。

結論

  1. 機械式時計に男性用も女性用もない!
  2. 精度はあまりに酷いものを除き、気にしなくてよい!
  3. パワーリザーブは24時間以上動けばOK!

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