コロナ禍での強迫性障害

コロナ疲れの声があちらこちらから聞こえてくる今日この頃。 ワクチン接種が進む中、感染者数は増加する一方です。

家の外で、飲食以外ではマスクをする生活もずいぶん慣れましたが、夏のこの時期は帰宅してマスクを外すと生き返るような気がします。

道を歩いていると、たまにマスクをしていない人も見かけます。
ひとりで歩いていて周囲に人もいないのですから、本来でしたらマスクをしていなくても問題はないはずです。
ところが、「マスクをせずに街を歩くなんて!」と思う人がいることも事実です。

私は車を運転するとき、同乗者がいなければマスクを外していますが、対向車を見ますと、同乗者がいないのにマスクを着けたままの人を結構見かけます。

また、コロナワクチン接種を受けていない人に対して、まるで病原菌そのもののように露骨に嫌な態度を取る人もいると聞きます。
世の中全体がコロナウィルスに対して過敏になり過ぎ、それがエスカレートしているようです。

それで私は、何年か前に相談に来られたAさんの、ご主人の事を思い出しました。





当時Aさんのご主人のBさんは、会社で重要なプロジェクトを任されていて、いよいよ大詰めを迎えていました。

こんな時にインフルエンザに罹ってはたいへんと、家族全員が予防接種を受けました。

その後、予防接種を受けても、別の型のインフルエンザにかかることもあると知り、対策を調べたところ、家にウィルスを持ち込まない事、持ち込んだウィルスは出来るだけ早く始末する事だとわかりました。

はじめは手洗い・うがいをマメにして、家族にもそう促していたBさんですが、「ウィルスを持ち込まない事」に神経を使うようになりました。

帰宅時に玄関ドアの前でコートを脱ぎ、その裏表をひっくり返してベランダに持って行き、再び表に返してベランダの柵の向こうでコートを振り払いました。

髪にもウィルスが付着してはいけないと外出時は帽子を着用。その帽子も玄関前で表裏をひっくり返し、ベランダへ。

そのうちに、それらをベランダへ運ぶ間に部屋の中に落ちるかもしれないと、玄関でビニール袋に入れてからベランダに運ぶように。
また、それら一連の行為を家族にも強要するようになりました。

最初は面白半分に付き合っていた子供たちも、日に日にエスカレートする父親にうんざりするようになり、そんな家族の反応にBさんはイライラし始め、家の中はギクシャクした空気が流れるように。

そうこうするうちにBさんは、ウィルスが怖くて外出もままならなくなり、ついには会社も欠勤。その結果、任されたプロジェクトを下ろされることになってしまいました。

これは不安障害の中でも「強迫性障害」という病状で、症状に振り回されて日常生活に支障が出てしまった例です。

AさんはBさんを病院へ連れて行こうとしましたが、外出できないご主人を連れ出すことは難しく、ご相談にみえたのでした。

特にニュースにはなっていませんが、今のようなコロナ禍では、強迫的に手を洗ったりあちらこちらを消毒して歩いたり、人に対してもそれらを強要したりして、強迫性障害の症状に苦しんでいる方がたくさんいらっしゃるのではないかと推測されます。

強迫性障害で苦しむのはその症状をお持ちの当人だけではなく、家族や同僚など周囲の人も苦しむ結果になりえます。

コロナウィルスに罹ることは避けたいのは誰でも同じですが、それが元で心の病を発症してしまったのでは、コロナが収束した後にコロナ前と同じように暮らすことが難しくなってしまいます。

もしもご自分が気にし過ぎているのではないかと気づいたのであれば、ご自身が清潔意識を持つことは良いことですが、他人に対してそれを強要したり、冷たい視線を送ったりするのは、控えた方がよいかもしれません。

まだまだ収束の見込みの立たないコロナではありますが、そのような状況の中でも、少しでも心穏やかに生活したいですね。

カウンセリングルーム ローズマリーは、
東京の府中と東神田にある、女性のためのこころの相談室です。

ホームページはこちらから

その他

次の記事

生みの親と育ての親