認知症の叔母

私の町から3駅ほど離れた町に住む、もうすぐ77歳になる叔母(母の妹)がアルツハイマー型認知症と診断されて3年が経ちました。
はじめはなんとなく会話が嚙み合わない、頼んだことを忘れてしまう、約束の時間や待ち合わせ場所を間違える、など、ちょっと困ったな、とか、どうしちゃったんだろう?というレベルのことでした。

そのようなことが少しずつ増えてきて、これはもしかして?と心配になり、物忘れ外来を受診しましたところ、MRI検査などから診断がくだったのです。

それでもその頃はまだ、金銭管理や携帯電話で会話やLINEができていました。
買い物に行って支払う時に、先ずは手持ちの小銭をお財布から出し、そのあとでお札を出してなるべく小銭が増えないように、ということができていました。
一人で電車に乗り、私の家へ来ることも大丈夫でした。

ところが、薬の管理ができなくなり、お金の管理ができなくなり、電車で移動することができなくなり・・・。
携帯電話の使い方がわからなくなり、LINEを見ることもできなくなり、できないことが急に増えてしまいました。

最初は私も「なぜできないのだろう」「あれだけ念を押したのに」という思いがあり、叔母にもそのような言葉を発してしまっていました。
けれど徐々に、どのように接すればよいのか、コツのようなものが身についてきました。

叔母の家を訪ねると、テーブルの上には小銭が山になっています。
スーパーで買い物をするときにお札しか出さないからです。
はじめは両替をしてあげていましたが、とてもではないけれど追いつきません。
それで、ごっそりと袋に入れて持ち帰り、銀行のATMで入金することにしました。
買い物の時に小銭を出すように言っても忘れてしまうし、それができないからこうなってしまうのです。
なので、「ずいぶん小銭が溜まったね、銀行に預かってもらうね」と言って持ち帰るのです。

ヘルパーさんの来ない日は、一人ではお掃除やごみ捨てができていませんから、一緒にごみを分別し、掃除機をかけてもらいます。
コードレスの掃除機についても、コードを抜いて使うことや、使い終わったら充電をする、ということを、その都度説明しないと忘れてしまいます。
なので毎回、初めて使う時のように説明することにしました。
ゴミの分別も、ひとつひとつ、これは何色のごみ袋に、と指示をして、本人にやってもらいます。

冷蔵庫を開けると、ミニトマトのパックが5つも6つも入っています。
最初の頃は、もうミニトマトは買わないように、とか、早く食べちゃって、などと伝えていましたが、今はもう言ってもできるわけではないので「トマトが好きね。」とだけ言います。

1日に何度もスーパーに出かけては同じものをいくつも買ってきてしまいますので、あまりお金を持たさないようにしていますが、お財布の中身が少なくなると、「どこかに働きに行かなくちゃ。」と言い出します。
そう思わせることは可哀そうなのですが、かと言って湯水のようにお金を使われても困るので、そこが難しいところです。

デイサービスと訪問介護を利用しつつ、これまでなんとか自宅で生活を続けてきましたが、私は1週間に1度、多くても2度くらいしか行かれませんし、デイサービスのない日は外を歩き回ったり(買い物も含めて)少しずつ徘徊が始まってしまったようです。

いよいよ自宅での一人暮らしは無理かもしれない、と私も判断し、施設への入居の準備を始めることにしました。
本人がそのことを理解できるのか、ということは話してみないとわかりません。
ある施設で働く介護職の方のお話ですと、毎日夕方になると「私、そろそろ家に帰らなくちゃ。」と言い出す入居者の方がいるそうです。
そういう場合、どのように対応するのかと思いましたら、
「おやおや、それは残念ですね。でも、そろそろ夕ご飯の支度ができる頃ですから、折角いらしたのですからここで一緒に召し上がってから帰りませんか?」と声をかけるのだそうです。
すると「そうねえ、じゃあご馳走になろうかしら。」ということになり、食べ終わるころにはもう「帰らなくちゃ。」ということは忘れてしまうのだとか。叔母もそういう状況になりそうではありますが、少しずつ慣れていくのかもしれません。

認知症は誰でもかかる可能性があります。もちろん私も含めて。
そして、今の私のように、身の回りに認知症の家族がいて、お世話でたいへんな思いをしている人も沢山いらっしゃることでしょう。
中には暴力をふるったり、夜中に徘徊したりする認知症患者もいると聞きます。
その場合、介護者はたいへんな思いを抱えながらお世話をしているのだろうと想像に難くありません。
認知症は今のところ、服薬で進行を遅らせるしかないということですが、早く画期的な治療薬が出てほしいと願っています。
認知症本人のためにも、介護者のためにも。


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