明けない夜はない =弁護士 内山 美穂子 のブログ=

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訴訟で勝っても弁護士費用は原則として自己負担です

2019-09-21 | ビジネス法務

訴訟代理人を弁護士に依頼すると,弁護士費用がかかります。勝てば相手に請求できるといいですよね。ですが,原則として自己負担です。

実務の運用として,不法行為に基づく損害賠償請求と,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求(実質的には不法行為だから。)に限り,認容される損害額の10%を上限に,弁護士費用が認められています(事情によって認めなかったり,%を下げる裁判官もいます)。
つまり,損害額500万円が認められると,あわせて弁護士費用として50万円が認められる,ということです。

ビジネス紛争によくある契約違反を争う場合には,弁護士費用は自己負担になります。相手が契約違反するから裁判になったのに,弁護士費用の分が損になる! 納得いきませんね。ですが,裁判所は認めません。

なぜ自己負担なのかというと,仮に弁護士費用を敗訴者負担にすると,勝てば良いですが,負けた場合に,自分の弁護士費用と相手の弁護士費用の両方を支払うことになり,負担が重く,訴えることを躊躇してしまい,訴訟制度を利用しにくい弊害があるからです。
例えば,患者がなかなか勝てない医療過誤訴訟では,患者は負けると自分の弁護士費用+医者の弁護士費用まで払うことになるので,怖くて訴えられない,それでは患者がかわいそうだね,という配慮です。

ビジネスの場合には,契約違反したときの違約罰などで工夫する,といった対策はあるでしょう。

日本でも敗訴者負担制度の導入について検討された時期があり,まだ話が出ることがあるようです。

弁護士費用の敗訴者負担制度をとっているイギリスでは,「相手の弁護士費用は高すぎる」ともめて裁判所が負担額を決めたり,弁護士費用が相当であることを示す根拠として山ほど資料を提出したり,もろもろ例外があったり,保険もからむし,手間暇かかるだけでうまく行っていないようです。(情報がちょっと古いですが 2003年「イギリス調査報告書」(日弁連)