gooブログはじめました！

 

食欲の秋！　味覚の秋！です。秋の味覚を代表する栗は縄文時代の遺跡からも出土しています。私たち人や山に棲(す)む動物たちが厳しい冬を乗り越えるために、自然が準備してくれた恵みともいえるでしょう。

ブナ科Fagales、クリ亜科Castaneoideae、クリ属Castaneaの高木の総称を栗といいます。主に北半球の温暖、湿潤(しつじゅん)な地域に広く分布し樹皮は暗褐色をして落葉樹で葉は、長さ8～12cmの狭い長楕円形、鋸歯があり、互生しています。 栗の長い花穂は雄花の集まりで、4～5mmの長いおしべが集まり、長さ10～20cm黄白色の尾状花穂となり垂れ下がって、ちょうど梅雨時に満開になります。

雌雄同株で長い花穂は独特の香りがあり雄花の根本に咲く雌花の存在はあまり目立たず雌花は直径3mmほどの総苞(そうほう:花を支える下の緑色部分)に2～3個入っています。この花が成長してイガに包まれた栗の実をつけるのです。

栗の木は、椎茸の原木、薪(まき)、炭、建築土台、枕木、家具の材料としても利用してきました。

英語では栗の実はChestnut（チェスナット）といい種子を食用に栗の木はChestnut treeです。 日本では一般的に栗の事を「マロン」とも呼びますが、 元々フランスで栃の木（マロニエMarronnier）の実（Marron）でマロングラッセを作っていました。 その後「栗の実」を使うようになったことからそのままの名前も使っているのでしょう。正式には栗はChataignes(シャティ)といい小型の栗をChataigne、大きいものがMarronという考え方もあります。

 

　　原産は、中国、北アメリカ、地中海沿岸で世界各地で生産しており中国ぐり(小粒種)、ヨーロッパぐり(大粒種)、アメリカぐり(小粒種)を代表種としています。

ブナ科Fagaceaeは、植物界Plantae、被子植物Angiosperms、真正双子葉類Eudicots、コア真正双子葉類Core eudicots、バラ類Rosids、真正バラ類I:Eurosids I:ブナ目Fagales、ブナ科Fagaceaeと分類し温帯から亜熱帯にまで広く分布し、多くは樹高10mにもなる高木で被子植物の科のひとつであり世界に7～10属、1,100種程度存在しています。

ブナ科にクリ亜科Castaneoideae (クリ属Castanea・マテバシイ属Lithocarpus・トゲガシ属Chrysolepis・シイ属Castanopsis)、コナラ亜科Quercoideae(コナラ属 Quercus)、ブナ亜科Fagoideae(ブナ属 Fagus)などがあります。 森林に多く見られる重要な樹木、木本で日本では、シイとカシ類が常緑広葉樹、ブナ、クリが落葉広葉樹として存在します。

新芽は鱗片が螺旋状に並んだもので包まれ雌雄同株で、尾状花序の雄花は穂状について垂れ下がっています。総苞片(そうほうへん)が硬く変化した殻斗に1個～3個の果実（堅果、一般に「ドングリ」と呼ばれる）の基部あるいは全体が覆われ、殻斗果(かくとか:ドングリ状果）と呼ばれる偽果(ぎか:子房以外の部分も加わった果実)をつけます。以前は、殻斗科ともいっていました。

イガの部分を殻斗(かくと)といい、これに着生した果実を殻斗果といいます。ドングリの類で栗は団栗(どんぐり)とは言いませんがイガから中身を取り出して熟すと茶色の固い皮に包まれています。茶色い粒のまま土に埋めると、尖ったほうから根と芽が出ます。ただし厳密にいうと食べているのは(胚・胚乳)です。豆類と同じで、堅果の状態が、発達した種をふくむ果実ということになります。

団栗Acorn　どんぐりとは、ブナ科のかし(樫)、くぬぎ(櫟)、なら(楢)、しい(椎)、ぶなの木の実で、栗に似た堅い種子の総称で日本の全国の山野に分布し秋口に多く見られます。語源はこの実をコマにして遊んだことから、コマの古名ツムグリからヅムグリ→ドングリに転じたと考えられ ツムグリの「ツム」は「回転するという意味があります。さらにハングル語の「ドングル・イ（まるいもの）」からといわれています。

古くから救荒(きゅうこう)食物としても利用し多くは、でん粉質を60～80%含みます。ブナは脂肪、タンパク質も割合多く、椎(タンパク質3.2%、脂質0.8%、炭水化物57.6%)、ブナ以外は苦味、渋味(タンニン)を多く含みそのままでは食用として適しません。乾燥させ水、温湯、灰汁、アルカリ液で浸水処理、水洗い、乾燥させ渋、あくを除いて用いてきました。

玩具としてやじろべい、コマに利用していました。樹種が違っても形状はほぼ同一でありこのことから、抜きん出たものがいない集団を指して、「団栗の背比べ」などという諺(ことわざ)があります。

 

　　栗は病害虫の被害を受けやすく日本では海外からの栗は栽培はしていないといわれています。中国グリは天津甘栗の原料としてよく使われ実が小ぶりで甘く渋皮もむきやすいのが特徴です。ヨーロッパグリも渋皮がむきやすいようです。アメリカグリは食味がよく果実の品質がよいのですが1900年頃に胴枯れ病の被害により一時ほぼ壊滅状態でしたが現在は一部の地域でタンニン製造の原料や建材として栽培しています。

世界で栗生産上位は、2013年で中国約165万トンで全体の約82％を占めます。次いで韓国約6万7,902トン、トルコ約6万19トン、ボリビア、イタリアの順です。クリの2014年の日本における輸入量は約7,083トン、輸入先のトップは中国で輸入量は約4,282トン、輸入量全体の約60％を占めています。2位は韓国の約2,781トンで以下イタリアの約20トン、フランス約844kgです。

　　日本では、縄文時代の化石が出土しています。書物では古事記（712年）や日本書紀（720年）にも登場し、平安時代(794年～1192年)の延喜式（えんぎしき：927年）には、乾燥して皮をむいた搗栗子（かちぐり）、蒸して粉にした平栗子（ひらぐり）などを記しています。

品種として 野性種(柴ぐり：小粒種、甘栗)のほか改良種で、丹波栗(大粒種)、中粒種(銀寄：ぎんよせ)などがあります。日本でも昭和16年頃に害虫のクリタマバチによる被害で日本中の栗園は大打撃を受けています。それ以降は抵抗性のある品種改良をおこなってきました。丹波栗は現在ではブランド品として有名です。

 

語源には、 落ちた実が石のようであることから、「石」を意味する古語「クリ」からとする説があります。さらに果皮の色が黒いことから「くろ（黒）」が転じたとする説や、クロミ（黒実）が変化してなど、黒い色を語源とする説があります。栗の字は毬を表す象形文字からの由来です。昔からの栗を含むことわざがあります。

◇火中の栗を拾う:自分の利益にはならないのに、そそのかされて他人のために危険をおかすことです。17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌが、イソップ物語を基にした寓話(ぐうわ:擬人化した物語)に由来します。 猿におだてられた猫が、囲炉裏(いろり)の中の栗を拾って大やけどし、猿がその栗を食べてしまったという話です。

◇モモ栗三年柿八年: 種を撒(ま)いて桃と栗は芽がでて実をつけるのに三年、柿は八年で実をならせることから、ある時期がこないと実は得られない、何事も、成就（じょうじゅ）するまでに相応の年月が掛かることを意味します。

◇雨栗日柿（あめくりひがき:雨天続きの年は栗の実りがよく、天気の好い年は柿が豊作であるという関西方面での言い伝えがあります。雨の多い年はクリがよくでき、日照りの年はカキがよくとれるといわれています。クリは日照りが続くと完熟する前に落ちてしまい、逆に柿は雨が多いと病気や害虫が多くなります。

◇栗よりうまい十三里（じゅうさんり）:里(り)とは昔のみちのりを計る単位で、1里は約3．9kmです。十三里とはサツマイモのことです。クリ（九里）とヨリ（四里）を足すと十三里になりますが、ちょうど、江戸、東京から十三里のところに、サツマイモの産地、埼玉県の川越（かわごえ）があったことによります。

 

　　生産量は、平成28(2016)年産1万6,500t、茨城県3,40t(23%)、熊本県2,140t(13%)、愛媛県1,700t(10%、岐阜744t(5%))が多く秋の味覚の代表的存在です。現在、クリの低樹高整枝（せん定後の樹高3.5m）が現場で普及していますが、脚立作業などを少なくして、せん定作業等の省力化、軽労化を図るため、より一層の低樹高化が望まれています。

　農林水産省では、木で採取するものは果物、草本になるものは野菜という考え方があり栗は果物です。食品成分表を編集している科学技術庁資源調査会では種実類として分類しています。さらに油脂類に分類する場合もあります。

栗はクルミと同じで、食べる部分が種に該当しますが、栄養成分的には、

◇日本栗生100g中でエネルギー164kcal、水分58.8g、タンパク質2.8g、脂質0.5g、炭水化物36.9g、灰分1.0g、ナトリウム1mg、カリウム420mg、カルシウム23mg、マグネシウム40mg、リン70mg、鉄0.8mg、亜鉛0.5mg、銅0.32mg、マンガン3.27mg、

ビタミンＡ：6μg、ビタミンD(0)μg、ビタミンＥ：0.3mg、ビタミンＫ：1μg、ビタミンＢ1：0.21mg、ビタミンＢ2：0.07mg、ナイアシン1.0mg、ビタミンＢ6：0.27mg、ビタミンＢ12：(0)μg、葉酸74μg、パントテン酸1.04mg、ビタミンＣ33mg 、食物繊維4.2g。　　　

◇胡桃炒り100g中エネルギー674kcal、水分3.1g、タンパク質14.6g、脂質68.8g、炭水化物11.7g、灰分1.8g、ナトリウム4mg、カリウム540mg、カルシウム85mg、マグネシウム150mg、リン280mg、鉄2.6mg、亜鉛2.6mg、銅1.21mg、マンガン3.44mg、

ビタミンＡ：4μg、ビタミンD(0)μg、ビミンＥ：3.6mg、ビタミンＫ：7μg、ビタミンＢ1：0.26mg、ビタミンＢ2：0.15mg、ナイアシン1.0mg、ビタミンＢ6：0.49mg、ビタミンＢ12：(0)μg、葉酸91μg、パントテン酸0.67mg、ビタミンＣ0mg 、食物繊維7.5gを含みます。

　それぞれの流通、学術上によって分類の仕方が異なっていますので一概には、すべてのことは決定しがたいのが現状です。

 

　　▪品種改良により今最も注目の「ぽろたん」について 　

　本来の日本種の栗は渋皮がむきにくく調理に手間がかかるという難点のあるのが特徴でした。 新品種として注目を集めているのが2006年10月4日に農研機構 果樹研究所が開発し発表した「ぽろたん」です。日本を原産としている純日本種でありながら茹で上げるほか家庭用電子レンジで2分やオーブントースターで鬼皮に傷をつけ加熱するだけで、皮から実がポロッとはがれおちる「ぽろたん」加熱することによりぽろっと鬼皮と一緒に渋皮が一緒にむけます。

『ぽろたん』は、むけにくいと考えられていたニホングリ同士を交配させたものです。 実は従来の日本原産の栗にも、渋皮がむきやすい遺伝子がもともとあったのですが、それは単独では表に出ない劣性遺伝子でした。様々な交配を行ってきたことで、両親(「550-40」と「丹沢」)から共に劣性遺伝子を受け継ぎ、劣性遺伝子が２つそろったため、やっと渋皮のむきやすさが表に現れたというのです。

さらに、この「ぽろたん」が持つ剥皮性(はくひせい)に、より優れた渋皮の遺伝子について研究が続けられ、さらに、『ぽろたん』とは収穫期の異なる、渋皮のむけやすい新品種の育成がテーマになります。

名前のごとく、皮が簡単にむけ果実は 30gくらいで果肉は黄色く粘質、甘み、香りともに多く、栗の品質も良好です。収穫は9月上旬～中旬の早生品種です。

「ぽろたん」は、そのむきやすさが売りとなり、今では熊本や奈良、埼玉、茨城、 岐阜、兵庫などの各県で生産されるようになりました。

 

　多くの栗は9月～11月初旬に採取し旬です。果重は20～25g前後で栗ご飯、甘露煮、グラッセ、ぜんざい、きんとん、栗茶巾、栗羊かん、茹で栗、缶詰とし用いています。少し乾燥させ加熱、弱火で長時間加熱することにより甘味を増します。甘ぐりは、中国産のものが渋皮がむけ易く輸入物が多くを占めています。

日本では、お正月にお節料理として栗きんとんを食べる習慣があります。栗、さつま芋ともに黄色で黄金色であることからお金に通じて、お宝を得て富みを築くことを表していると言います。

 

　栄養成分として期待できるのは、でん粉質(炭水化物36.9%)に富んでタンパク質(2.8%)は少なくβーカロテン(37μg/100g中：ビタミンA6μg/100g中・カロテノイド色素)、ビタミンC(33mg/100g中)、食物繊維(4.2%)とミネラルを含み消化吸収がよく古くから栗の有用性が認められ幼児から年配者まで最適な食材とし利用してきました。渋皮のポリフェノール(タンニン：エラグ酸)の抗酸化作用、脳細胞の働きを高めることから渋皮つきの甘露煮の人気もでてきています。

 

　南半球からの輸入物が増加傾向にあり、マスマス季節感が感じられなくなっている昨今ですが、栗はいまだに季節感を感じさせてくれる食物です。皮から実がポロッとはがれおちる新種の「ぽろたん」加熱することによりぽろっと鬼皮と一緒に渋皮が一緒にむけます。早く身近なスーパーにお目見えするといいですね。

 

 

 

 

ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。

 

[初版2019.10.19]

このブログの人気記事