刀2 (72)

  以前、日本刀の事を書いた(刀 (50))、今回はその続きである。最近は便利なもので、現代刀工による作刀動画が、某動画サイトにたくさん挙げられている。本当は他の動画が目的で同サイトに訪れたのに、お薦めなどにあると、ついそのまま作刀動画を見てしまい、それが終わると右横に似たような動画のトップが表示されるので、それもまた見てしまい、気が付けば二、三本見てしまうことがある。であるから作刀動画は全部とは言わないまでも結構見ていることになる。

  それらを見ていていつも思うことがある。日本刀の製作過程における、鋼の造込みには、色んなパターンがあるわけであるが、最初の頃、一度だけ四方詰鍛えを見たことがあったが、ほとんどの動画は甲伏せ鍛えであるということである。そして最近、いつものように甲伏せであろうと思って見ていると、初めて本三枚鍛えを目にし、新鮮だった事がある。

  ちなみに日本刀のことなど普段あまり興味がないという人のために、ごく簡潔に説明すると、日本刀は耐久性と切れ味を両立させるために、まる鍛えを除いて、 炭素量と層構造(硬度と靭性に置き換えることも可能である)が異なる複数の鋼材を鍛接して作られており、その鋼材の配置のパターンが造込みである。

  鋼材には主に炭素量の違いから、刃金 、側金、棟金 、心金とあり、四方詰では、心金を囲むように、将来刃となる部分に刃金、両側に側金、刃金の反対側に棟金が配置されている。甲伏せには、側金、棟金が無く、Uの字状に形成された刃金の凹の部分に心金を挟み、刀の形に素延べされていく。従って、四方詰や本三枚の方が、用意する鋼材の種類が多くなり、手間がかかるということになる。

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  その手間に比して、甲伏せよりも耐久性が高く、かつ切れ味も上々であるのかは、刀匠に聞いて見なければわからぬ が、各刀匠もおそらく師匠から伝授された同じ造込みをずっと行っているので、比較したことなどない可能性がある。

 

日本刀は殺傷能力のある武具であるが、未来社会においても、美術工芸品として命脈を保つことができると思われる。実用品に復帰することがあるとしたら、それは近代兵器や武器の生産能力が消失し、防御に刀の有用性が認識された(別に棍棒でもいいわけであるが)スラップスティックSFのような世界ということであろうか。日本刀は美しいので、購入し、好きな時に鑑賞したいと思う一方、手入れ等から(錆を発生させてしまいそうである)、博物館や刀剣店に行って、時折鑑賞するのがよいという気持ちもある。

 

さて、以前、お相撲さんが、江戸にタイムスリップしても、違和感なく溶け込めるのではないかというような事を書いた(過去へ (30))。個人的には刀工も同様ではないかと想像する。作刀の際に着用する、白装束でタイムスリップしたとして、当時の刀工に弟子入りするわけである(刀工を探し出す事の方が、大変そうであるが)。

  偶然、徳川家慶、家定の治世にタイムスリップした場合、江戸には源清麿がいるかもしれないので、うまく弟子入りできれば、ラッキーということになる。基本技術は習得済みなので、使える優秀な弟子と認識され、調法される可能性もある。そうすれば、清麿は、より多くの作品を世に出すことができるであろうが、その中に、未来から来たこの弟子の作品が結構含まれている、という事態も生じうるわけである。

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