動物-肉 (67)

  哺乳動物の進化上の話題で驚いたことが二度ほどある。一つは、だいぶ前のことであるが、アフリカの中央領域や南アフリカに生息するケープハイラックス(Cape Hyrax, Rock Hyrax, Procavia capensis)という小動物が、ゾウに近縁の動物であることを知った時である。このイワダヌキという少しユーモラスな目に分類される動物は、一見すると、ネズミやリスといった齧歯目のようであり、個人的には北海道のガレ場を駆け回るエゾナキウサギ(Ochotona hyperborea yesoensis)を想起させる。クリスタリンの配列情報の解析に基づくものであり、当時かなり衝撃を受けた事を覚えている。同じ陸上動物なのに、ゾウとハイラックスは、共通の祖先から別れて、それぞれどのような道を歩んで来たのだろうと、想像するわけである。

 

      

                 アフリカゾウ                               ケープハイラックス

  もう1つは、比較的最近のことであるが、あのカバ(河馬、Hippopotamus amphibius)が、鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)というタクソンに分類されていることを知った時である。記事によれば、レトロトランスポゾン(SINE)の解析により得られた結論であり、カバと鯨目は姉妹群であり、従来の偶蹄目は側系統であるという。これは、陸上ではカバがクジラに最も近縁であることを意味する。あの丸々とした胴体と華奢な前足で、川底に着くか着かぬか、(バレーのような)タッチで、器用に移動していく様は、クジラに似ているような気もする。しかし、原始的クジラ類と考えられているアンブロケトゥス(Ambulocetus natans)の想像図を見ると、これはもう(少し面長でスリムな)カバという感じである。ということで、昔、カバは単に偶蹄目であったが、科学の進展により、鯨偶蹄目に分類されることになったわけである。

 

    

                           カバ                                                  アンブロケトゥス

(写真、図は、すべてWikipediaより)

  さて今回の本題は、培養肉の未来を述べることである。培養肉にまつわる事業は近年、その拡大性や多様性において活況を呈している。当初、鶏、牛、豚といった三大肉が培養の中心であったものが、ラムそしてライオン、トラ、ヒョウなど、食肉目ネコ科の動物や、ゾウ、シマウマといった動物にまで適用する計画があるという。上に述べたカバやクジラだって、場合によっては培養肉にされる可能性もあるわけである。

 

(続く)