日常小噺8

以前、東北の地方の村に住んでいたことがある。

その時、何かの集まりで宴会に参加した、

宴会は村の公民館のような所で行われ、

和室の大広間に二、三十人ほど集まっていた、

 

宴会では、持ち寄った料理やツマミ、

それに、建物には立派な調理室があるので、

そこで調理したものなどが出された、

参加者は多種多様であったが女性も結構いたように思う、

村では農業を生業としている人が多いので、

四十前後の農家の主婦という呈であった、

 

男は、自分も含めてたわいもない話から始まり、

盛り上がって行ったわけであるが、

先の女性たちも決して話に加わらないというわけではなく、

宴会の陽気な雰囲気を壊さない程度に、

時々、ニコニコしながら話に加わると、

食べ物の無くなった皿を回収したり、

帰りに、新たな料理やアルコールを持ってきたりする、

 

宴会も終盤になると、

食べれる物は大皿に集約され、

テーブルの上もすっきりしてくる、

男は二、三人のグループに分かれ、

ぬるくなったビール片手に話し込んでたりする、

 

そして、宴もたけなわではございますが

と幹事が終宴を告げると、

男たちは腰を上げてトボトボと調理室に向かう、

使用した陶器の皿やうつわ、調理器具など、

すべて施設に備え付けの物なので、

洗って元に戻しておくことが、原則であり、

男衆もそのお手伝いに行くわけである、

 

しかし、調理室に入っていくと、

最後の皿のすすぎがちょうど終わった所で、

ほとんどの皿やうつわは、水を拭かれて、

元の棚に収まっており、

こちらは何もする事がない状態であった、

女性たちは、湯飲みでお茶など飲みながら、

少し赤くなった顔で、時々笑い声を上げつつ、

井戸端会議をしているわけである、

その時、なんて手際のいい人達だろうと感心した事を覚えている、

 

夫婦で参加した人達も複数おり、

お酒が入って少し砕けた旦那を叱咤し、

散会の挨拶をして、それぞれ帰路に着いていった、

 

自分は、

少しすっきりした気持ちで、

晩夏の田舎道を、帰って行ったのである、