賃上げに対する私の提案 第1章:賃上げと経済 ⑩
現在は“就職”という1つのテーマに対して“賃金”・“福利厚生”・“人間関係”・“組織内立場”などあらゆる観点が関係するテーマを考えなくてはいけないため、人材を定着させるためにはこれまでのように賃金だけをコントロールするだけでは流出は止まらないのだ。 そのうえ、現在出ている賃上げ予定の企業やすでに公表している企業におけるこれらの認識をどこまで考えているのか、これらの観点を踏まえた賃上げや待遇改善に取り組んでいるのかを数値化しておくことも全体の賃上げ状況を把握する際に必要なことになると思うのだ。 ただ、これらの数値化を進めることでどの企業がどの程度賃上げに前向きなのか、どの企業が後ろ向きになるのかを把握し、これらの企業が賃上げに対する懸念や賃上げを進めるために弊害になっている観点といった賃上げに対しては前向きになっていたとしても外因的な問題や企業間の問題が関係していることで後ろ向きになってしまうという関係性が考えられる事も増えてきている。 そのため、経済産業省と厚生労働省が連携し、現状の取引における価格転嫁の困難や企業間の社会的立場やパワーバランスにおける不利益行為が横行していることで大企業や中小企業の上位企業が下請けや孫請けといった下位企業に対する“カンパニー・ハラスメント”が止まらなくなる状況に発展し、適正な雇用水準を維持することが出来なくなるだけでなく、労働環境の悪化が懸念される状況を改善しなくてはいけないと思うのだ。特に企業間の賃上げに対する弊害を排除する事や企業間のカンパニーリレーションを見直すことも賃上げを進める上で重要な改善点であり、正しいパワーバランスを維持するために所轄官庁がコントロールする事も状況によっては必要になってくるし、そこから企業間の賃金格差や所得格差に繋がっていく事で日本市場の飽和化や人材確保が困難になる、優秀な人材が高い給与で海外に流出する事で日本企業の賃上げ幅では人材の引き留めが困難になるなど日本の産業基盤が時間をかけて徐々に崩壊していく可能性や優秀な技術者の後継者不足につながるなど日本経済が崩壊するきっかけにもつながりかねず、見方によっては国内の少子化が進むことで国内にどの程度優秀な人材が就職年齢の段階で国内企業に就職するのか、これらの人材を採用する際にどの程度の給与水準が国際競争力を考えた時に必要になってくるかも今から関係省庁が議論し、企業と連携して進めていかなくてはいけない課題であり、企業においても“自分たちだけが良い人材を採用したい”という自己利益の追求が進むことで、良い人材が中小企業などに入ってきたとしても雇用維持に必要な給与水準を維持することが出来ないということになり、優秀な人材が中小企業に入社して、活躍していると聞いた大企業や有名企業がこれらの人材をヘッドハンティングなどのあらゆる手段を行使して、人材を引き抜いてしまうという行為につながりかねないのだ。