【神奈川県山北町】4期目当選の湯川町長に聞く/選挙戦の振り返りと森林資源の活用策は?

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2022年7月10日。
全国で参議院議員選挙の投開票が行われたこの日の夜、神奈川県西部の山間地にある山北町では12年ぶりとなる町長選挙が同時に実施された。

選挙結果は4期目を目指した現職の湯川裕司氏(70)が他候補2人を大きく突き放して再選。

神奈川県内で最大の森林面積を有する町の首長は、眼前の森林資源をいかにして活用しようと考えているのか。

選挙から約1ヶ月後の8月16日、町長室を訪れ選挙戦の振り返りなども含めて湯川町長に聞いた。

取材に応じる湯川裕司町長(撮影時のみマスク非着用)

  1. Q,12年ぶりとなった町長選から1ヶ月。振り返りは
  2. Q,一方で町の人口減少率は県内市町村でワーストの9%。「変わらないのがいい」という意見もあると思うが、このままでいいのか
  3. Q,町の財政状況を見ると「良くはないが、もっと悪い自治体はたくさんある」という印象だが
  4. Q,町の魅力を活かしたふるさと納税の返礼品作りは
  5. Q,町面積の9割を占める森林とふるさと納税はリンクできないのか
  6. Q,「森の託児所」とは?
  7. Q,具体的な場所のイメージは
  8. Q,予算措置はした?
  9. Q,その企業が「ヤマキタ森林ベンチャー」?
  10. Q,「ヤマキタ森林ベンチャー」とはどのような契約をしているのか
  11. Q,「森林ベンチャー」のような外部の視点もいいと思うが、森林資源を活かした木工品づくりなどには取り組まないのか?
  12. Q,広葉樹でなくても、スギ・ヒノキの端材を使った積み木やコースターなどでもいいと思うが
  13. Q,町長自らが商標登録をした「チルドレン・フォレスト・オフィサー(CFO)」(子供の森林責任者)とはどういった理念か?
  14. Q,CFOは認証制度?
  15. Q,現在の山の状況は、町長よりも少し上の世代の人たちがスギ・ヒノキを植える拡大造林を推し進めてつくられた。それが今では、木材価格の下落とともに放置されてしまう山も少なくない。「責任」は子どもではなく、大人にあると思うが

Q,12年ぶりとなった町長選から1ヶ月。振り返りは

皆さん「変わらないのがいい」という気持ちがあったのではないか。特に印象に残ったのは、選挙期間中に握手をした5人くらいの90才以上のおばあさんが泣きながら「お願いします」と向こうから言ってきた。大幅に何か変わるのが嫌なんだろうなと思った。
(選挙が)終わってからは「安心した」「良かった」という反応があった。
今は変える選択肢を持っていないということかなと思う。

Q,一方で町の人口減少率は県内市町村でワーストの9%。「変わらないのがいい」という意見もあると思うが、このままでいいのか

日本全体の人口が減少している。
町の人口が減るというのはある程度仕方ないと思うが、学校がせめて2クラス維持できるように、出生数と移住してくる子どもの数を合わせて年間50~60人に何とか増やしたい。
今の山北の仕組み(人口構成)からすると高齢者が約4割。亡くなる方が1年間に150~160人とすると、産まれる方が30人前後になっている。
町では紙おむつの支給や0~15才の一貫教育などに取り組んでいる。産まれる子どもや子育て世帯を何とか増やしていきたい。
(転入数と転出数の差を表す)社会増減は入ってくる方が少し少ないが、拮抗してきた。

Q,町の財政状況を見ると「良くはないが、もっと悪い自治体はたくさんある」という印象だが

おっしゃる通り。身の丈に合った財政状況にしている。
町では固定資産税が安定的な財源。住民税は人口減で下がってきている。
ふるさと納税の寄付が年間7億~8億円ぐらいある。かなり財政的にはふるさと納税に頼るところが大きくなってきた。ここはしっかり手を入れていかないと、下がってしまう。
そこはしっかり、下がらないように少しでも増えるようにしたい。

Q,町の魅力を活かしたふるさと納税の返礼品作りは

これから力を入れてやっていく。今ある返礼品の数は80~100ぐらい。1番寄付額が多いのがおせちで2番がローストビーフ。
3番目、4番目になると寄付額が、がくっと落ちる。
どれが当たるか分からないが、返礼品の数を300~400ぐらいに増やしたい。
チーズケーキを山北の物産を使って作れないかというオファーが来ている。チャレンジしないと結果が出ない。

今までは(ポータルサイトの)「さとふる」と「楽天」だけだったが、「ふるさとチョイス」と「ふるなび」を入れ、大手4社にした。

Q,町面積の9割を占める森林とふるさと納税はリンクできないのか

それも考えている。
今までは(森林を)林業という切り口でやってきた。林業は木を育て、切らなければいけない。ビジネスにするには時間的に長すぎる。

森林そのものを皆さんに癒やしとかいろんな面で使ってもらいたいということで森林を活かした「森の託児所」であるとか、さまざまなものをやっていきたい。

Q,「森の託児所」とは?

これからやろうと考えている。例えば夏休みの3日間とか1週間、都会のお子さんを受け入れる。
寝泊まりできるところや、ヤマビルの駆除も考えないといけない。

Q,具体的な場所のイメージは

玄倉にある森林館薬草園をもう一度リニューアル、リノベーションをかけようと考えている。

Q,予算措置はした?

予算はかけない。全部それは、今来ている企業がふるさと納税のアガリをそっちにかける話になっている。

Q,その企業が「ヤマキタ森林ベンチャー」?

そう。そういう企画を持っている。彼らの発想は我々とは全然違うから。ついこの間も「パインアメ」を紹介してくれて一緒に「ニンニクアメ」を作りませんか、という話を持ってきてくれた。

Q,「ヤマキタ森林ベンチャー」とはどのような契約をしているのか

森林ベンチャーの目的は、行政と一緒になって山北町を盛り上げていきたいという考えで、費用をどこから捻出するかという話でふるさと納税がいいのではないかということで、「ふるさとチョイス」と「ふるなび」の窓口を(森林ベンチャーが)持っている。
彼らの取り分は(寄付額の)1割までいくか分からないが、去年の12月に(契約を)始めておせちの売上が2500万円ぐらい。1割弱として200万円ぐらいは彼らの原資として入っていると思う。
返礼品の数を増やしながら、「チョイス」と「ふるなび」を使って、1億、2億まではいきたいということらしい。そうすると(原資としては)1千万円、2千万円が(森林ベンチャーに)入ってくる。

Q,「森林ベンチャー」のような外部の視点もいいと思うが、森林資源を活かした木工品づくりなどには取り組まないのか?

もともと山北町には木工所があるが、ほとんど休業状態になっていると思う。
木工ではちょっと簡単にはいかないんだろうなと。今までの木工という考えでは。

Q,広葉樹でなくても、スギ・ヒノキの端材を使った積み木やコースターなどでもいいと思うが

当然考えられる。やるとすれば、ふるさと納税をひっかけないと難しいと思う。

Q,町長自らが商標登録をした「チルドレン・フォレスト・オフィサー(CFO)」(子供の森林責任者)とはどういった理念か?

要するに、森林を次の世代の子どもたちにどういう形で残していくかということ。今は大人が管理しているが、子どもたちにお任せするような、魅力的なものになればいいと考えている。
(森林には)開発しないといけないところもあるが、これだけの自然を50年、100年先の子どもたちにどういう形で残したら良いのかというのは我々の責任としてあると思っている。

Q,CFOは認証制度?

これからどういう風にやっていくかは、賛同してくれる企業とか自治体に話をして一緒にやりませんかということで今考えている。
あくまでも理念はこういう形で、やり方は皆さんバラバラだと考えている。森林を次の世代に残していきたいということを一緒にやりませんか、ということ。

うちは「森の託児所」とかを考えているが、(森林の活用は)幅が広い。自治体、企業によっては「うちはこういう風にしたい」というのがあると思う。それはそれでいいんじゃないかと。お金を取ろうとか、縛りをかけようとは思っていない。あくまで賛同して、同じ理念、考え方でCFOを使ってもらえたら。

Q,現在の山の状況は、町長よりも少し上の世代の人たちがスギ・ヒノキを植える拡大造林を推し進めてつくられた。それが今では、木材価格の下落とともに放置されてしまう山も少なくない。「責任」は子どもではなく、大人にあると思うが

自分の祖父と父親も山を管理していた。(私が)産まれた時や小学校に上がる時に「お前のためにここに植えたよ」という話を聞いたが、さすがに今になると切ることもできない。
今となっては、採算的には合わない山がほとんどで、そういった山をどう管理するかというのは非常に難しい。

所有者が広大な面積をやっていくのは難しい。皆さんと一緒になってやっていかないといけない。ボランティアでやるか、あるいは何らかの原資を作って、費用対効果で若干赤字になってもやる必要があるのではないか。
難しい案件だろうと思うが、やらないとなおさらひどくなっていく。

(山の管理には)さまざまな切り口がある。その中の一つが森林ベンチャーで、森林組合もある。共和地域の取り組みも参考になる。
(森林を)壊さないように次の世代にうまくバトンタッチしていかなければと思う。

コメント

  1. にゃあ より:

    湯川町長の方針を知りたくて、役場HPの町長インスタグラムを見ても、いつも写真と文章が一文だけ。もどかしい思いをしていましたので、今回の記事、とても興味深く拝読いたしました。

    特にヤマキタ森林ベンチャーについては、町議員さんはじめ、いろいろな方々にお聞きしても知らないとの回答でしたので、やっとどんなことをされるのか、わかりました。

    議員さんとのおしゃべりカフェ以外に、町長とのおしゃべりカフェの機会を作って欲しい、と思いました。町民の賛同を得て初めて、いろんなプロジェクトが成功するのだと思います。

    • yama-mori-journal より:

      コメントありがとうございます!
      9月議会で議員さんから突っ込んだ質問が出るといいのですが…。
      町民を巻き込んで楽しみながら地域を盛り上げる仕組みができたらいいですよね!

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