2023/02/24

Sam Lee and Friends / In Town ('87)

A1Hi Ho SilverB1Take the A Train
A2Shoe Shine BoyB2When You're Smiling
A3The Roses Are Blooming in PicardyB3Prisoner of Love
A4Just a Closer Walk With TheeB4Feel the Spirit
A5Jersey BounceB5Bourbon Street Parade
 ロウ・バジェットのジャズにありがちな、テキトーにそこいらで撮ったであろう集合写真がジャケットになっています。センスのかけらもないと嘆息する一方で、こういう即物的な作りはいかにもジャズだなあとちょっぴり嬉しくなったり。
 レストランの入り口に、おっさんら並んで突っ立っています。そこに立ってたらジャマだよ。お客さん出入りできないだろうがよ。

 さて、おっさんらの左右を見ると"JAX BEER"という看板がありますね。これ、ニューオリンズ発祥のビールなのだそうです。
 つまりジャケット写真にて、「このアルバムはニューオリンズのジャズですよ」とヒントを示しているわけ。

 一般的に、モダン・ジャズのファンが手を伸ばすのはたいてい、ニューヨーク発のレコードです。ロサンゼルスやシカゴのジャズも、一部あるにはある。しかしジャズといえばほとんどの場合、やはりニューヨークということになりましょう。
 そういう人々にとって、ニューオリンズのジャズはしょせん「カッペの音楽」です。見向きもされません。

 本作を聴いてみると、まあ予想通り、カッペの音楽です。
 明るくて、ほのかに間抜けな感じ。モダン・ジャズのファンが求めていないであろうジャズというか。
 でもそれがいい。素朴な音楽のヨロコビに溢れていて、幸福な気分に包まれます。

 てっきり全員、地元のミュージシャンなのかと思ったら、そうではありませんでした。イギリス人やベルギー人までいます。カッペの音楽にひとかたならぬ憧憬を抱き、生国を捨ててニューオリンズにやって来たのでしょうか。いやさすがにそれはないか。

 ともあれニューオリンズの磁力は、本作にみっちりたっぷり詰まっています。私もB5に打たれて、バーボン・ストリートへ行ってみたくなりましたもん。

 最後に少々、映画の話を。
 ニューオリンズを舞台にした映画で、真っ先に思い浮かぶのは『ルール 無法都市』というアクションもの。2010年の作品です。

 カトリーナの爪痕生々しいニューオリンズを舞台に、荒廃した街角で暴力刑事と傭兵軍団がさんざっぱら殺し合って死体だらけになるB級リーサル・ウェポン。
 徹頭徹尾リアリズムを追求した銃撃戦の描写が凄まじく、好事家たちから熱狂的に支持されました。オススメです。

 さあ、相棒のマイホームパパ刑事には、美人のワイフがお約束でしょう。

 演じた女優さんはブルックリン・スダノという人。ブルース・スダノドナ・サマー夫妻の娘です。映画界の片隅で、たくましく生きていました。
 本家『リーサル・ウェポン』で、マータフ刑事のかみさんを演じたのがダーレン・ラヴでしたね。そこいらへんを意識したキャスティングだったりして。この映画のスタッフたち、『リーサル・ウェポン』愛がただならぬだけに、ありえないこともないような気がします。

 あ、そうそう。この映画にもアナログ・レコードが登場するんだな。何だか親しみが湧きますよね。たとえそれが、拷問のBGMだったとしても。
★★★

Sam Lee: Tenor Sax and Clarinet
Sammy Rimington: Alto Sax and Clarinet
Jon Marks: Piano
Koen de Cauter: Guitar
Lloyd Lambert: Bass
Stanley Stephens: Drums

All Photographs by Sydney Byrd
Musical Direction: Sammy Rimington
Recorded at Nite Shade Studios on February 28, 1987
This Is a Nina Buck Production

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