「栄養」と聞いて、
あなたは何を思われますか?
“そりゃ多い方がいいわよ”
“最近は特に偏食がちだなぁ”
“私はサプリメントを飲んでいるわ”
反応はさまざまではないかと思われます。でも、共通しているのは栄養は、多い方が良いという常識。
多かれ少なかれ、健康で元気に過ごしていくためには、たくさんの栄養が必要。そう信じ込んでいるのです。
例えば、「カルシウム」を例に考えてみましょう。
カルシウムは骨を強くするための欠かせない栄養素。親からも学校からも、このように教えられてきました。
給食では必ず牛乳が出たものだし、家でも小魚を食べるように!そう耳タコになるくらい聞かされてきたわけです。
私のように牛乳が大キライ!の人ならば、鼻をつまみながらも流し込んだ。さらにはお腹を壊してつらかった。
そうした思い出がある方も少なくないことでしょう。
カルシウムをたくさん摂れば、骨は強化されていく。そう信じられてきたからこそ、イヤな牛乳もガマンして飲んできたわけです。
■出モノ・腫れモノ
実際に私たちのカルシウム摂取量は飛躍的に増えています。
1946年の日本人1人あたりの摂取量は253mg、2011年には507mgと
“約2倍強”
にも増えている。これだけ増えているわけですから、骨は当然強くなっていなくてはなりません。
でも日本における「骨粗鬆症患者数」は急増し続け、現在では人口の10%強。男性約300万人・女性約1000万人の合計1300万人。
実に莫大な数の日本人がこの症状にかかっていると推定されています。なぜここまで骨の弱体化が進んでしまったのか?その原因を辿ると、
「タンパク質との関係」
ココに行き着く。カルシウムを多く摂っても、タンパク質を過剰に摂ってしまえば、骨は弱体化してしまう・・・。こう指摘する声もあるのです。
タンパク質を多く摂ると、尿から排出されるカルシウムの量が増えていく。このことはよく知られています。
なぜタンパク質の摂取が、カルシウムの排出を促進してしまうのか?それは、動物性のタンパク質に問題があると解説されているのです。
タンパク質は、動物性と植物性とに分けられますが、動物性タンパク質は植物性に比べて、
“硫黄”
を多く含んでいる。メオニチン、システイン、タウリンなどの含硫アミノ酸群といわれています。
ちなみに体臭がキツくなるのも、この含硫アミノ酸群によるもので、多量摂取を続けると小腸の壁から体内に吸収されるといった通常処理が難しくなる。
それら未吸収のアミノ酸などのタンパク系物質はそのまま大腸へと移行していき、大腸菌群のエサになっていきます。
未吸収のタンパク質が大腸菌のエサになると、腐敗産物の
「アンモニア」
を大量に生産していきます。アンモニアは通常、腎臓で処理され尿素となって排出されていくのですが、あまりに大量であると尿素に変換されることが難しくなってしまう。
そのまま汗の中に混じって、体外へと排出されていく。これがニオイの素になると説明されるのです。
体臭が気になるのなら、もしかして動物性タンパク質が過多なのかも?はたまた、肝臓腎臓の解毒器官に問題が生じているのかも・・・。
こう疑ってみると良いかもしれません。またオナラが
“クサイ!”
と感じるようならば、それは硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物。これらがニオイの原因であることが言われています。
体臭もオナラも、腸内環境を窺い知るための貴重な材料になる。
気になるニオイが続くようなら、それは腸内環境の悪化を示す雄弁なサインと判断できる。
こうした予兆は体調管理の大切なヒントを与えてくれている。気づいたら即、日々の食べものや食べ方をなるべく自然に整えていくこと。
洋食から和食への切り替え、この必要に迫られていると見るべきなのでしょう。
■削って中和!
硫黄を多く含んだタンパク質が体の中で分解され、代謝されると、体液は『酸性』の方向へと傾いていきます。
私たちの体液は常に一定で、「弱アルカリ性(PH7.35~7.45)」の範囲を保っていることが言われています。
アルカリ性が良いなんて思われがちですが、PH8.0で死亡となります。酸性の方はというと、PH6.8で死亡となります。
私たちの体はどちらかに極端に傾かないように、常に一定を保つようにできている。
実に厳密に管理され、この狭い範囲を超えないように日々、微調整を行っているというわけです。
硫黄を多く含んだタンパク質を多く摂り、体液が酸性に傾きそうになれば、体は酸性を中和しようと画策する。そこで使われるのが、
「カルシウム」
カルシウムをアルカリ源にして、酸を中和しようとすると説明されるのです。
カルシウムといえば、言わずと知れた
「骨」
なのですが、骨は体全体の99%のカルシウムを貯蔵しています。
牛乳などの乳製品や肉食が続き、タンパク質が過剰になると、脳から、骨を溶かすように!と指令が下る。骨のカルシウムで、中和しようと試みるのです。
これが「骨粗しょう症」のメカニズムという指摘です。
肉や乳製品は高タンパクの食事と言われます。2014年の調査では、お米の消費量は年間800万トンといわれますが、牛乳を含む乳製品の消費量は
“約1200万トン”
1965年の1人当たりの乳製品摂取量は年間38キロでしたが、2014年には90キロ。50年で2,4倍にも膨らんでいることが分かるのです。
牛肉は1人当たり1980年には年間3.5キロだったものが、2009年には5.9キロ。
豚肉は1人当たり1980年には年間9.6キロだったものが、2009年には11.5キロ。
鶏肉は1人当たり1980年には年間7.7キロだったものが、2009年には11.0キロ。
“タンパク質過多”の食生活が骨粗しょう症の原因を作り出している。このように説明されるのです。
もちろん、これはひとつの説で、主流派からは、
“インチキ!”
“根拠がない!”
などといった罵声が飛んでいます。いまだ決着はついてはいないのですが、1997年にアメリカミネラル学会において、アルバート・アインシュタイン医学校のバーゼルとワシントン大学のマッセイは
「必要以上にタンパク質を摂ると骨量が減る」
ことを強調し、骨粗鬆症の予防のためにはタンパク質摂取を少なくし、カリウム豊富な野菜や果物を多く摂ることを強調しました。
その後、1998年にアメリカのテレビから、
“骨粗鬆症の予防に牛乳を!”
といった内容のコマーシャルが中止になった経緯があるのです。
■人体とタンパク質
人は本来、植物から糖分をもらって、エネルギー源に充てるのがムリのない食事のあり方です。
お米や小麦、トウモロコシなどに含まれる糖質をエネルギー源に、脳を働かせ、心臓を動かし、筋肉を働かせている。このように説明されています。
歴史的に欧米人は食用植物資源に乏しい土地柄だったため、植物から糖質を充分に摂取することができなかった。
そこでタンパク質や脂質を主な栄養源にするようにと、自らの体を改造してきた歩みがある。いわば、人類の中でも
「特殊な人種」
といわねばなりません。
これに対して有史以来、食用植物資源に恵まれ続けてきた私たち日本人は、多量のタンパク質を処理するような体になっていない。
タンパク質は腎臓で処理され、「尿素」として排出されますが、タンパク質の過剰摂取は腎臓に
「大きな負担」
を強いることになってしまう。かつての日本人よりもずっと私たちは自らの腎臓を酷使していることになるのです。
日本における慢性腎臓病(CKD)の患者は、これまた人口の約10%で、1300万人超といわれています。
山梨医科大学・名誉教授の佐藤章夫氏は、骨粗鬆症にも、主食の米と味噌や豆腐などの大豆製品と季節の野菜で充分と指摘します。
そして動物性タンパク質は肉ではなく、少量の魚に変えることが大切。このように述べているのです。
“一億層病人”なんて言われたりもしますが、健康の基本はやっぱり、
「日々の食事にあり」
肉や乳製品を食べるな!ということではなく、それらはたまの楽しみ。ご馳走食として、普段は粗食、素食を心がける。
ハレとケの発想で、メニュー作りをしていく必要を感じています。
■参考文献
■無肥料無農薬米・自然栽培と天然菌の味噌・発酵食品の通販&店舗リスト
■自然食業界キャリア15年のOBが綴る