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【#デイリー新潮】韓国で進む「歴史歪曲禁止法」のとんでもない中身、日韓関係はさらに悪化へ

2020-08-26 20:51:45 | コラム
文在寅大統領も就任前から、デモ活動で「歴史歪曲」の禁止を訴えてきた
 韓国では、去る4月15日に国会議員選挙があった。今回の選挙で政権与党の「共に民主党」は、300の議席のうち過半数のほぼ6割に当たる177議席を占め、議会権力を掌握。そして5月30日から4年間の国会議員の任期が開始され、6月5日、第21代国会が正式開院された。韓国の国会は、米国や日本とは違い一院制になっており、国会の解散は法律で禁止されている。そして国会議員は、国会が開かれる間は逮捕することのできない「不逮捕特権」を持ち、職務上の言動が罪に相当しても処罰を受けない「免責特権」も併せ持つ。そんな絶大な権力を持つ議員が進める「歴史歪曲禁止法」は、文在寅大統領が就任前からデモ活動で訴えていた主張に繋がっている。日韓関係史に関する評論家の李東原(イ・ドンウォン)氏は、この法案の中身はとんでもないもので、深い憂慮を抱かざるを得ないと言う。

 会計不正疑惑事件と、国から受けた補助金と国民の寄付金を個人的に横領した疑いをかけられている尹美香(ユン・ミヒャン)元正義連の理事長。慰安婦の支援活動を長年行ってきた彼女も先の選挙で当選し、晴れて国会議員となった。実は、彼女が国会議員の任期が始まる5月30日以前に検察の取り調べを受け、容疑が明らかになり拘束収監されることを個人的には望んでいたのだが、残念ながらそうはならなかった。検察側からみると、現政権の実力者たちの庇護を受けて国会議員になった尹美香を、国会議員の任期開始前に捜査をすることはかなり負担だったようだ。

 確認された事実ではないが、担当地検長はその“不捜査”の功労が買われ、人事異動で高検長に栄転したという。担当検事長が入れ替わったせいか、告訴・告発が行われてから3カ月が経った8月13日、とうとうと尹美香に対する1回目の検察の取り調べが行われた。そして17日に予定された2次取り調べは、尹美香が検察出席を拒否したため、行われなかった。

 すでに国会議員になってしまった尹美香に対する検察の調査がどこまで行われ、今後、どのような判決が下されるのか。尹美香事件に対する司法府の判断は、韓国はもちろん日本社会に及ぼす影響が少なくないだろう。しかし、司法府の最終判断が下されるまでは、今後長い時間がかかりそうだ。

韓国の志村けんと呼ばれた国会議員が「国会には私よりも面白い連中がたくさんいて」
 国会議員の仕事というものは、実に多様である。その中の代表的なのは、政権の監視と民意を代弁して、法を制定することであろう。だから国会議員一人一人を、独立した立法機関と呼んだりもするのだ。ところで、韓国では、新たに国会が構成され開院をすると、誰が第1号法案を提出するかを競う、つまらない習わしがある。

 今回の21代国会第1号法案のタイトルは、朴光温(パク・グァンオン)「共に民主党」議員が提出した「公共機関の社会的価値を実現するための基本法」で、議案番号「2100001番」が付与された。朴光温議員室では、第1号法案を提出するために、数日間徹夜をし事務所が開かれるのを待ったという。なんというコメディで、人力と時間の浪費なのだろう。韓国の国会ではしばしばコメディよりももっと面白いことが起きたりもする。
 すでに故人となったが、「韓国の志村けん」と呼ばれたコメディアンの李周逸(イ・ジュイル)氏が国会議員になって、「国会には私よりも面白い連中がたくさんいて、今後食っていくのが大変になりそうだ」と発した言葉は、今でも時々、人々の口の端に上がっている。

 さて、いま韓国の国会は、21代国会議員たちの立法活動が盛んであり、20代で処理できなかった法律案が再び立案されたり、新しい法律が競争でもするかのように次から次へと発議されている。その中で特に目立つのが、与党の梁香子(ヤン・ヒャンジャ)議員が8月1日に発議した「歴史歪曲禁止法」だ。

実際、「歴史歪曲禁止法」の中身について…
「歴史歪曲禁止法」は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、その他の出版物または情報通信網を利用し、展示会・集会などで歴史的事実を否定、または著しく縮小・歪曲し、虚偽の事実を流布する行為など、歴史的事実を歪曲して蔑視したり、被害者や遺族を理由なく侮辱した場合、最大7年以下の懲役、または5000万ウォン以下の罰金で処罰することを主な内容としている。

 そして同法案には、2回以上の再犯時には直ちに懲役刑を科すことができ、被害者や遺族の告訴がなくても公訴を提起できるようにする、特例条項が新設されている。

 また、虚偽の事実を摘示して独立有功者等の名誉を毀損する行為、独立有功者等を侮辱する行為、植民統治擁護団体に内応して彼らの主張を賛美・鼓舞、宣伝し、または同調する行為に対する処罰も大幅に強化された。そして、独立有功者等に対する名誉毀損罪、または侮辱罪は、告訴がなかったり、被害者が具体的に明らかにした意思に反しても、公訴を提起できるようにすることで、歴史歪曲勢力に対する強い警告のメッセージも込められているのだ。

 梁議員は、「5・18民主化運動の北朝鮮軍介入説を主張したり、日本軍慰安婦の存在を否定・嘲弄するケースまで発生しているため、これらに対するより強力な処罰が必要だという国民的な声が高かった」と、法案発議の背景を説明した。続いて「今回の制定案が、これまでに傷ついた被害者と遺族の方々の苦痛を少しでも治癒し、国民統合にも寄与することを期待する」と言った。

 現政府と政権与党が、常に口にしている「国民」とは一体誰なのかはさておき、どうしてこのような「とんでもない法」を作る発想をしたのか、国会議員の資質と、歴史に対する基本認識に、深い憂慮を抱かざるを得ない。
 また、同法が通過すれば、国民の統合どころか、国民の分裂を招くことになり、ひいては日本との関係はさらに悪化するだろう。

当該議員らの歴史観に基づいて作ったこの法案は、初めから誤りである
 そもそも「歴史歪曲」とは、全国民が同じように受け止めるべき正しい歴史、すなわち「正史」があり、これを歪曲したという意味であるが、これは極めて恣意的で危険な設定である。周知の通り、歴史とは「公的記憶」の集合体なのである。「記憶の政治学(politics of memory)」という表現から分かるように、公的記憶とは「自明な事実の集合体」ではなく、公共の利益、あるいは公共の善のために構成と再構成を繰り返して作り出した人為的な産物である。

 したがって「自明な事実」というものは、はじめからあり得ない。ただ解釈があるだけだ。そして、この解釈には、当然誇張と歪曲が作用する。これは、過去に対して誰の記憶を「正統な記憶(authentic memory)」とみなし、また、どのような方法でそれを保存/・拡散していくかという問題に対し、特定の団体や国家権力が介入する余地が常にあるということを意味する。

 日韓両国が、歴史問題で対立を繰り返す核心理由も、記憶したい公的記憶の内容が異なり、これを作り出して消費する方式、つまり歴史を受け入れ、認識する方式に決定的な違いがあるからだ。そして、日韓両国が真の和解に進む道は、何よりも一国史中心の歴史認識から抜け出し、互いの公的記憶が異なることを認め、その違いの中で共有できる共通の歴史を見いだすことにあるのである。それが果たして可能かどうかは、さておきにして。

 歴史は、歴史には自明な事実などないということを前提とし、学者を中心とした市民が、多様な研究と討論を通じてその事実に接近するために努力した結果得られる多様な事実の集合体であって、一つの事実だけが歴史になることはあり得ない。したがって、一つの歴史だけを「正史」と考え、これと異なる歴史を主張したり扇動したりする人と団体を法で処罰するという、梁香子議員とその周辺の人々の歴史観に基づいて作ったこの法案は、初めから誤りである。

韓国社会を騒がせた国定教科書事件と同じ
 これは朴槿恵(パク・クネ)政権当時、韓国社会を騒がせた国定教科書事件と同じく、認識の暴力であり、真の和解を望む日韓両国民に対して失礼だ。学者や市民の討論で解決すべき歴史観論争を政治が利用したり、法でこれを裁断したりすることは、あってはならないことだ。

 一国の歴史認識が、歴史を見つめる「特定の思惟」によるものだとすれば、これは多くの場合、教育やディアを通じて人為的に創出されるものである。にもかかわらず、画一化した歴史教育を通じて、さらには法で人間の「思惟」を支配し、統制するという。これが表現の自由を保障する、民主主義国家で可能なことだとおもうのか。これは認識的暴力、まさにその一言に尽きる。

 国定教科書、歴史歪曲禁止法を云々すること自体が、野蛮な思考だ。国定教科書を製作するという試みは撤回されたので幸いだが、いま国会に提出された「歴史歪曲禁止法」がどうなるのやら。本当にこの政府、韓国社会の歴史に対するとんでもない認識には、憤りを超えて失笑を禁じえない。幸いにも、同法案に対する韓国社会の世論はあまり良くない。しかし、反対する人々も立法の趣旨には同意すると前提しているのが、またおかしい。私はその趣旨というものには決して同意できない。もしこの法案が通過すれば、これ以上韓国社会に何の期待もしない。そう言えるほどの代物だ。

李東原(イ・ドンウォン)日韓関係史が専門の評論家
週刊新潮WEB取材班編集
2020年8月26日 掲載


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