この物語は、男→女 に性転換したがあることをきっかけにキャバ嬢を始めることになった1人のMtFの物語である。
※これは実話であり、私(めろう)の体験記です。
MtF・・・Male to Female(体と社会的役割を男性から女性へと変えた人又は変えようとしている人のこと)
プロローグはこちら
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前回のあらすじ
なんとか準備を整えて体験入店に臨んだめろう。
ドレスを着ることになって昔を思い返していた。
気を引き締めドレスを着て、キャバ嬢として初めての接客を終えた。
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正直、何を話したのかほとんど覚えていない。
だが、人間がむしゃらにやればなんとかなるものだな。
楽しく会話をして席を離れた。
悪い気分にさせずに話せて良かった。
もちろんお客様が優しかったからというのが大きいだろうけど。
良いお店だなぁ、というのが初めての接客を終えた感想だ。
何だか楽しくなってきた。
坂城「めろうさん、お願いします。」
1人で喜んでいるとお呼びがかかった。
次はどんなお客様だろうか。
やっぱりまだ緊張するが、席に向かう。
私「はじめまして、めろうと申します。よろしくお願い致します!」
客「めろうちゃんね、よろしくね。初めて会うね。なんだか固いねぇ。」
私「すみません、今日1日目なんです。…そんなに固いですかね?」
客「うん、見てすぐわかるくらいには(笑)もっと力抜いていいよ。」
私「はい!ありがとうございます!」
客「めろうちゃん、こういう仕事の経験はあるの?」
私「いえ、1度もしたことなくてほんとに初めての日なんです。」
客「あ、そうなんだ!それがまたどうしてキャバ嬢なんてやろうと思ったの?」
ん…最初のお客様にも聞かれたことだ。
まぁいっか。
この時は気にしないようにしたが…
また次のお客様との会話でも
私「こういう仕事は初めてで、慣れてなくてすみません。」
客「謝らなくていいよ〜。というかめろうちゃん思い切ったね!どうしてこの仕事をやろうと思ったの?」
また聞かれた。
また、というかその日お話したお客様のほとんどから驚かれて同じ質問をされた。
私は夜職をやるような雰囲気ではないらしい。
確かに私の話し方からは真面目オーラが出まくっているなと自分でも思う。
自他共に認めるド真面目だ。
そんな人がキャバ嬢をやっているなんてギャップがあるのだろう。
真面目な性分は変えられない。
もはやこれを売りにしていくしかなさそうだ。
初日にして接客の方向性が決まった。
幸先が良いと前向きに考えよう。
まぁ、私としては悪い印象にならないのなら何でもいい。
それに、ほとんどの人が「可愛いね」と私の容姿を褒めてくれるのだ。
これほど嬉しいことはない。
私の存在を全肯定されているかのような錯覚を覚える。
うむ、私は単純なのだ。
「かわいい」というたった4文字で気分は上がる。
この仕事を選んで良かったかもしれない。
未だかつてこんなに可愛いと言われたことなんてない。
可愛いと思ってくれる人がいるのなら、もっと可愛くなりたい。
なれるのではないかと期待してしまう。
MTFの私でも、もっと可愛く…。
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あれはいつの事だろう。
幼少の頃に「可愛い」と言われていたのを思い出す。
男の子に対して言う「可愛い」と、女の子に対して言う「可愛い」では少し意味が違うのであろうが、すごく嬉しかったのを覚えている。
その時からずっと、可愛いと言われるのは好きだった。
だが、男の身では余り言われることがなく、色々あって心を閉ざした。
その後大人になり、手術をすることができた。
閉ざした心が少しだけ開いて、女性として生き始められた。
縁があって見習いキャバ嬢を始めた。
そこで色んな人に可愛いって言ってもらえた。
ずっと言われたかった言葉。
喉から手が出るほど求めてた言葉。
私の心を震わせる言葉。
ようやく、可愛いに辿り着いた。
次回
MTFキャバ嬢の憂鬱
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