この物語は、男→女 に性転換したがあることをきっかけにキャバ嬢を始めることになった1人のMtFの物語である。

※これは実話であり、私(めろう)の体験記です。

MtF・・・Male to Female(体と社会的役割を男性から女性へと変えた人又は変えようとしている人のこと)


プロローグはこちら


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前回のあらすじ

女性として生活する上でも、キャバ嬢として仕事をする上でも声で苦しむめろう。

今よりも幸せになっていることを願い、未来の自分に思いを馳せるのであった。


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それは唐突だった。

いつものように、お客様と楽しく会話をしていた。

波長の合うお客様とはスムーズに楽しく会話をすることができる。

お互いに自然体だ。

非常に申し訳ないのだが、波長の合わないお客様とは会話が盛り上がらず当たり障りない会話になってしまう。

楽しんでいただけなくて申し訳ない。

私の技量が足りないせいもあるだろうが仕方ないと割り切っている。

私とのコミュニケーションで楽しんでいただける方に全力を注ぎたいのだ。

そして、とうとう指名をいただくことができた。

場内指名というやつだ。

とてもありがたいことだと思う。

せっかくなので、その時のことを話そう。

フリーのお客様についた時のこと。

お互いの仕事の話や聞かれたことに答えていたら気が合うことがわかった。

会話は途切れることなく続いた。

もちろんドリンクもいただいた。

だがフリーについているので制限時間がきてしまう。

坂城に呼ばれた。

タイムリミットか。

楽しかったが去らないといけない。

もっと話してたいなぁと思っていると、お客様も同じ気持ちだったようだ。

私「すみません、呼ばれてしまったので…。」

お客様「行っちゃうの?もっといてよ。そうだ、指名したらここにいても大丈夫だね。」

そう言ってお客様は黒服を呼んで私を指名する旨を伝えてくれた。

こんな風に言われたのは初めてですごく嬉しかった。

それになんだか落ち着かない。

私なんかが指名されてしまった。

いや、こういうことを思うのもお客様に失礼だ。

やはり、男性の身で生まれたこの体で自信をもつことはとても難しい。

常に劣等感を胸に抱いて生きている。

だが、こんな気持ちなど関係なく私のことを気に入ってくれる人がいる。

話していると楽しいと言ってくれる。

まだ一緒にいたいからと指名もしてくれた。

言葉に表すことができない。

とにかく嬉しかった。

そんなふわふわした気持ちのままお客様が退店するまで一緒の時を過ごした。

お客様を見送り、その日の仕事はあっという間に終わった。

…なるほど、指名をされるというのは良いものだな。

私のことをちゃんと見て、私のことを評価してくれる人がいる。

その事実は私の心に衝撃を与えた。

この時から私は変わったように思う。

少しだけ自信を持って接客するようになった気がする。

お客様に合わせつつも自分らしく、自然体で。

そんな私でも良いと言ってくれる方がいるのだから。

もはやこれはある種のおまじないのようなものだ。

きっともう会うことはないだろうが、私の初指名をもらってくれたあの人に感謝だ。

もしまた会うことができたらその時は笑顔でお礼を言おう。

ありがとうございました、と。



次回

ありのままの私

更新をお待ちください。