「居心地が良ければ帰宅願望はない」の問題点

介護

みなさんこんにちは。雪乃です。

介護関係のコラムでからある介護事業経営者のインタビューが掲載されていました。

正確には、ラジオで収録した話をメディア記者が記事化したものですが、

主張の内容まとめると

「7時間利用のデイサービスで3時間して「帰りたい」と言ったら、「帰宅願望」ということにされてしまう。当たり前の事を要求しているだけなのに、問題行為とみなされてしまうのが介護の現場です。どうやったら7時間過ごしてもらえるのかを考えないといけません。いいケアをして、利用者に「私はここにいていいのだ」と思ってもらえれば帰宅願望は出ませんし、事業所に鍵をかける必要はありません」

ということです。

なるほど確かに、不適切なケアより、いいケアをした方がリスクは減ると思います。

しかしこの主張には問題点があります。

帰宅願望はそんなに生易しい問題ではない

今回はデイサービスでの対応が槍玉に上がっていますが、デイサービスだって適切なケアをするように心がけています。楽しんでもらえなければ利用してもらえないのだから当然のことです。

この経営者の発言を真に受ければ、「利用者に帰宅願望があるのは元気な対応が不適切だ」と言うことにならないでしょうか。

帰宅願望のある利用者への対応に苦慮している事業所からしたら、あまりにも気分の良くない主張だと思います。

特に、認知症対応型デイサービスのような重度の認知症患者を受け入れているところだと、対応は大変です。

レクリエーションやスタッフとの会話を楽しんでいたかと思えば、急に不安そうな顔になり「帰らなければ」と言う利用者もいます。

スタッフが「時間になったらちゃんと家まで送りますから大丈夫ですよ」と声かけしても聞いてもらえない事があります。

また、自宅で過ごしていたとしても「帰らなければ」と言って家を出ようとする方もいるのです。帰宅願望とは、そういうものなのです。

認知症患者が家族が目を離した間に家を出て、線路に入って事故にあったという痛ましい事故がありました。

その方も自宅にいるにも関わらず「家に帰ります」と言って家を出てしまう事が何度もあったそうです。

家族はその方の後をそっと付いていき、歩き疲れたところを声をかけ「帰りましょう」と言って一緒に戻ったりと対応していたそうです。

おそらくその方は昔住んでいた家を思い浮かべていたのでしょう。

周囲の対応、環境はもちろん大事です。ただ、それで全てが解決するという考え方が間違っているのです。

病気としての認知症

認知症にはいろいろなタイプがあります。

中には前頭葉の働きが強く障害されてしまい、怒りのメカニズムが強く働いてしまう人もいます。

専門的な言葉を使うと、前頭葉の全部帯状回や前頭眼窩部が傷害され、怒りを抑制する神経伝達物質が減ってしまうと、ささいなことで感情が昂ぶってしまいます。

もちろん周囲の適切なケアやよい環境で、感情が安定することもあるのですが、服薬などの対応がなければどうにもならないことはあります。

施設などでは、職員が利用者に殴られたりもあります。その際安易に「対応の仕方が悪かったのではないか」と被害を受けた介護職を批判する人がいるのですが、もうちょっと慎重になって欲しい。

対応でなんとかなる場合もあれば、ならないこともある。対応をあまり過信しないことです。

以上、雪乃でした。


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