[3mm]Analys.

2019年12月20日

穏やかな街並み、いつもの日常。

ボクはこの街が好きだ。

今日は久しぶりにお出かけをしている。穏やかな街並み、いつもの日常。こんな晴れた日に予定があるというのはとても幸福感を憶える。

こんにちは!

あら、こんにちは!今日も元気だね!

うん、お出かけなんだ!

そうなのね、ウキウキが顔にも出てるよ!え~っと…

…ねぇおばさん。おばさんも外の世界から来たの?

外の世界?何言ってるんだい。この世界の他に世界があるっていうのかい?

(………)

世界は一つだし、街だって一つしかないじゃないか。このムジカ以外に街があるってのかい?

…ううん、なんでもないよ。それよりおばさんも行くんでしょ?

おや、よくわかったね。私も行くよ。この子とね。楽しみだね。

そうだね、それじゃーね!

ボクは知っている。この世界はあの部屋のジオラマだ。何が起こるかも知っている。この街の全体を把握している。

ボクは今ガラス越しにムジカを見ている。

低い空を見上げる。ペンキで塗られたかのような色。そこは壁なのか、先が見えないだけなのか。向こうの世界などないのではないかと思ってしまう。

どこだ、あの向こうにボクが…。

根拠の無い確信。ボクの意識は外の世界にもある。ボクは意図してこの世界に入り込んでいる。どうにか外の世界の意識を持ち込めないか、思案しながら歩みを早める。

魔法のような…そうだ!妖精コダーにお願いしてみようか。

天を仰ぐ。相変わらずまばゆいくらいの輝きを放つコダーの姿が容易に見つかる。

ねぇ、コダー。ボクは今ジオラマの中にいるんでしょ?

答えることなく淡いオレンジ色から黄色になるコダー。なんだか優しい気持ちになる。

少し休憩しよう。

足を休め、穏やかな面持ちでコダーを見つめる。

この世界の外にもボクがいるんでしょ?ジオラマをきっと見てるんだよね?

変わらずムジカを照らすコダー。薄い緑色を帯びている。そろそろ行かなくちゃ。

よし、行こう。

歩みを進めながら考える。コダーはもしかしたら何も知らないのかもしれない。人によっては見えなかったり、ただのヒカリに見えたり、見える人には妖精だと認識できる精霊。そしてムジカを照らす太陽、神様ではない。

神様…

そうか、聖書を見に行こう。深緑のコダーを背に図書館へと入った。

分析視点アナリス

おや、こんにちは。

はい、こんにちは。

何をお探し?

聖書…なんだけど、ボクでも読めるのってないかな。

ほぉ立派だね。えーっと、わかりやすいのはこの『猫でもわかる聖書のすべて』なんてどうかな?

ありがとう!

おじいさんのメガネに写る薄赤紫色のヒカリ。ハッと上を見上げるとコダーの姿。

なぁんだ、着いてきたんだね。

聖書を入手した小さな達成感に両腕で伸びをする。

聖書は偉大だ。この世界の全ての知が集結されている。この世界を司る理だ。ボクには難しすぎてとても読める気がしない。

くぅー。やっぱり無理!

水色のコダーに照らされて頭を抱える。重みで閉じる聖書。裏面の落書きがふと目から入って口から出ていく。

アナ…リス?

呟いた途端に色味を増すヒカリの粒。いや、色味を増した訳では無い、一つ一つがクリアに見えだしている。漠然と見ていたヒカリも、あるヒカリは小さな妖精としてくっきり捉えられ、あるヒカリは煙のようなもののままである。窓の外ではヒカリが風に飛ばされる煙のように常に流されている。東から赤、北東からは緑、西の方からは青いヒカリと妖精が。

飛び出している。

妖精が。

ヒカリが。

色が。

ボクは知らなかった。でも私がソレを知っている。7つのヒカリが出現する場所、ジオラマ周囲のレールとマテリア、7CM!

回り出す世界、ボクの意識が薄れていく。

この言 を 唱  ては ない コンポス に  う

『猫でもわかる聖書のすべて』の落書き

霞む文字の意識を最後に景色が途絶えた。

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  • 筆者
    月屑
新公理系の音楽理論『7 Color Materials』提唱者。本音楽理論と、その世界観を表現した物語小説『7CM』およびその解説を本サイトにて執筆・公開中。 月屑という別名義でも『Music STanDard In/Out』というサイトにて、従来の音楽理論寄りの『キミの音楽理論』や、楽曲の耳コピ分析等を執筆。
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