ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート191加筆 4.鳥居や棟木の「カラス止まり」の鳥(からす)

 4月27日にアップしました「「縄文ノート191 カラス信仰のルーツはメソポタミアかアフリカか?」に「4.鳥居や棟木の『カラス止まり』の烏(からす)」を次のように追加し、「5.鳥耳、鳥鳴海、日名鳥、鳥船、烏越の名前は?」を一部修正しました。

 

4.鳥居や棟木の「カラス止まり」の烏(からす)

 吉野ヶ里遺跡に行き、入口の鳥居と大型建物(主祭殿?)の棟木の上に鳥が乗っている写真を撮り、死者の霊(ひ)を鳥が天に運ぶ霊(ひ)信仰として紹介してきましたが、なんと、吉野ヶ里遺跡では鳥の木製品は出土していないというのです。

 ブログ「吉野ヶ里遺跡の木製鳥形 - クロムの備忘録的ダイアリー (goo.ne.jp)」によると、「他の遺跡からは鳥形は出土しており鳥にはシンボル的意味合いがある」「中国や東南アジアでは入り口に鳥形が飾られる集落がある」「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「鳥には結界を示すような意味合いがある」「ここでいう鳥は水鳥である」という説明を受けたそうですが、かなり偏った推測というほかありません。

 確かに、大阪府和泉市の2300~1800年前の池上曽根遺跡からは鳥型木製品が出土しており、奈良県北葛城郡河合町の4~6世紀の馬見古墳群の佐味田宝塚古墳(30面の銅鏡出土)の家屋文鏡の建物上には鳥が描かれています。なお、この馬見古墳群は「『卑弥呼王都=アマテル高天原』は甘木(天城)高台」(200206→0416)で触れましたが、スサノオの娘(産女)の宇迦之御魂(うかのみたま:おいなりさん)と大国主の息子(産子)の阿遅志貴高日子根(あぢすきたかひこね:迦毛之大御神)の一族の拠点と私は考えています。 

 

 鳥越健三郎大阪教育大名誉教授の『雲南からの道』は、アカ族は村の門の上に木彫りの鳥を置いており、日本の鳥居のルーツとしています。

 

 ウィキペディアによれば、雲南省のハニ族はミャンマーラオスミャンマーベトナムではアカ族と呼ばれ、焼畑を中心とした農耕生活を営み、ラオスに住むアカ族の村の入り口には木で作った門を置き、鳥居の風習は四川省涼山に棲むイ族(夷族・倭族:チベット系の烏蛮族、ロロ族)とも共通しているとされています。

 この鳥の種類ですが、アカ族の鳥居の鳥と、池上曽根遺跡の鳥型木製品の鳥の1つは下向きにエサを啄んでいる姿であり、集落の周りにいる身近な鳥であり、イ族(夷族・倭族)が古くは「烏蛮族」と言われていたことをみても、カラスと見られます。年にある期間だけやってくる渡り鳥では、何の役割も期待できません。

 

 吉野ヶ里遺跡では「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「ここでいう鳥は水鳥である」と空想していますが、鳥越氏は「鳥は神の乗り物である」としています。記紀に書かれた始祖神の「産霊(むすひ)夫婦」の霊(ひ:祖先霊)信仰の歴史からみても、穀霊信仰説はいただけません。

 さらに、鳥越氏は日本の民家でも棟木の千木組の上に1本の竹を通し「カラス止まり」と呼ぶとして写真を載せ、烏は神使なので止まり木を置くことで神が屋根の上に降りていることを示したのであろうとし、ラフ族の「カラス止まり」がルーツとしています。

 茅葺き・藁葺きの民家については前から興味を持っていましたが、「カラス止まり」については意識したことがなく、ざっとネットで検索してみると、次の写真に一部を示しますが今も伝統として各地に残っていました。

 

 私の両親の祖父母の家では、大黒柱(大国柱=心御柱=心柱と考えます)にそって神棚が祀られており、人(ほと=霊人)は死ぬと「神」になるという八百万神信仰により、「神棚→大黒柱→棟木→カラス止まり」からカラスによって死者の霊(ひ=玉し霊=魂)は天に運ばれ、また天から帰ってくると考えられていたのです。天皇家による仏教の国教化により、死者は「仏」になり仏壇に祀られるようになっても、神棚は維持されており初孫であった私は田舎に行くと毎朝、ご飯を神棚と仏壇に供えさせられましたが、どちらにご先祖の霊がいるのか、祖母に問いただした経験があります。

 そもそも、季節性の「水鳥」に使者の霊(ひ)を託すわけにはいかず、人を警戒する「水鳥」が鴨居や屋根の上の「カラス止まり」に止まるなど絶対にありえません。吉野ヶ里遺跡の「水鳥説」は理解不能です。鴨鍋や鴨南蛮が大好きな学芸員ばかりなのでしょうか?

 縄文ノート「38 『霊(ひ)』とタミル語peeとタイのピー信仰』「128 チベットの『ピャー』信仰」「132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰」「149 『委奴国』をどう読むか?」において、私は南インドから南・東南アジア山岳地帯、台湾の卑南族、匈奴(ヒュンナ)などは、祖先霊を「ピー、ピュー、ピャー、ぴー・ひー・ひ」とし、神山から天に昇り、降りてくると信じていたのです。

 そして、祖先霊を運ぶ神使として、カラス(熊野大社厳島神社住吉大社)・鶏(石上神宮穂高神社伊勢神宮)・白鷺(大山祇神社)や、神山(神名火山:神那霊山)からの神使として狐(稲荷大社)・猿(日枝大社・武尊神社)・鹿(厳島神社春日大社)・兎(住吉大社)・狼(三峰神社)などを祀ってきたのです。

 吉野ヶ里遺跡の「水鳥説」は、日本とアジアの霊(ひ:祖先霊)信仰の伝統を無視したトンデモ説というほかありません。

 

 ユダヤキリスト教の影響を受けカラスを聖鳥・霊鳥から悪役(ビラン)に陥れてハトを聖鳥と崇める拝外主義の風潮が見られますが、「霊(ひ)から生まれ、霊(ひ)を信仰するひと(人=霊人)」である日本人が、「霊(ひ)の鳥=カラス」を忘れていたのでは洒落にもなりません。なお、古代人はDNAが親から子へと受け継がれるのを「霊(ひ)」が受け継がれると考え、霊継(ひつぎ)を重要視し、霊継(ひつぎ)が断たれた霊(ひ)は怨霊(おんりょう)となって迫害者に祟ると考えたのです。

 「悪役カラス」「害鳥カラス」から「霊(ひ)の鳥カラス」「神使の聖鳥カラス」「ナビゲーターカラス」への復権が求められます。

5.鳥耳、鳥鳴海、日名鳥、鳥船、烏越の名前は?

 古事記神話の大国主一族では、筑紫妻の「鳥耳」一族の「鳥鳴海」、「日名鳥(夷鳥・比良鳥・日照)」「鳥船(筆者説は日名鳥の別名)」、「布忍富鳥鳴海」が登場し、魏書東夷伝倭人条には倭の使者の「載斯烏越」(載斯は祭司か?)が見られます。

 吉野ヶ里遺跡原の辻遺跡などの鳥居のルーツやうきは市吉井町の6世紀後半の珍敷塚(めずらしづか)古墳の装飾壁画の船の舳先の鳥の種類と合わせて、検討する必要があると考えます。

 Y染色体D型の縄文人からの伝統と考えられる赤米を炊いてカラスに与える「ポンガ」の神事と、スサノオ大国主一族の神使の「三足烏」と合わせて、時間軸とアフリカからの伝播ルートの空間軸の2次元の解明が求められます。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

縄文ノート191加筆 4.鳥居や棟木の「カラス止まり」の「鳥」はカラス

 4月27日にアップしました「「縄文ノート191 カラス信仰のルーツはメソポタミアかアフリカか?」に「4.鳥居や棟木の『カラス止まり』の『鳥』はカラス」を次のように追加し、「5.鳥耳、鳥鳴海、日名鳥、鳥船、烏越の名前は?」を一部修正しました。

 

4.鳥居や棟木の「カラス止まり」の「鳥」はカラス

 吉野ヶ里遺跡に行き、入口の鳥居と大型建物(主祭殿?)の棟木の上に鳥が乗っている写真を撮り、死者の霊(ひ)を鳥が天に運ぶ霊(ひ)信仰として紹介してきましたが、なんと、吉野ヶ里遺跡では鳥の木製品は出土していないというのです。

 ブログ「吉野ヶ里遺跡の木製鳥形 - クロムの備忘録的ダイアリー (goo.ne.jp)」によると、「他の遺跡からは鳥形は出土しており鳥にはシンボル的意味合いがある」「中国や東南アジアでは入り口に鳥形が飾られる集落がある」「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「鳥には結界を示すような意味合いがある」「ここでいう鳥は水鳥である」という説明を受けたそうですが、かなり偏った推測というほかありません。

 確かに、大阪府和泉市の2300~1800年前の池上曽根遺跡からは鳥型木製品が出土しており、奈良県北葛城郡河合町の4~6世紀の馬見古墳群の佐味田宝塚古墳(30面の銅鏡出土)の家屋文鏡の建物上には鳥が描かれています。なお、この馬見古墳群は「『卑弥呼王都=アマテル高天原』は甘木(天城)高台」(200206→0416)で触れましたが、スサノオの娘(産女)の宇迦之御魂(うかのみたま:おいなりさん)と大国主の息子(産子)の阿遅志貴高日子根(あぢすきたかひこね:迦毛之大御神)の一族の拠点と私は考えています。 

 

 鳥越健三郎大阪教育大名誉教授の『雲南からの道』は、アカ族は村の門の上に木彫りの鳥を置いており、日本の鳥居のルーツとしています。

 

 ウィキペディアによれば、雲南省のハニ族はミャンマーラオスミャンマーベトナムではアカ族と呼ばれ、焼畑を中心とした農耕生活を営み、ラオスに住むアカ族の村の入り口には木で作った門を置き、鳥居の風習は四川省涼山に棲むイ族(夷族・倭族:チベット系の烏蛮族、ロロ族)とも共通しているとされています。

 この鳥の種類ですが、アカ族の鳥居の鳥と、池上曽根遺跡の鳥型木製品の鳥の1つは下向きにエサを啄んでいる姿であり、集落の周りにいる身近な鳥であり、イ族(夷族・倭族)が古くは「烏蛮族」と言われていたことをみても、カラスと見られます。年にある期間だけやってくる渡り鳥では、何の役割も期待できません。

 

 吉野ヶ里遺跡では「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「ここでいう鳥は水鳥である」と空想していますが、鳥越氏は「鳥は神の乗り物である」としています。記紀に書かれた始祖神の「産霊(むすひ)夫婦」の霊(ひ:祖先霊)信仰の歴史からみても、穀霊信仰説はいただけません。

 さらに、鳥越氏は日本の民家でも棟木の千木組の上に1本の竹を通し「カラス止まり」と呼ぶとして写真を載せ、烏は神使なので止まり木を置くことで神が屋根の上に降りていることを示したのであろうとし、ラフ族の「カラス止まり」がルーツとしています。

 茅葺き・藁葺きの民家については前から興味を持っていましたが、「カラス止まり」については意識したことがなく、ざっとネットで検索してみると、次の写真に一部を示しますが今も伝統として各地に残っていました。

 

 私の両親の祖父母の家では、大黒柱(大国柱=心御柱=心柱と考えます)にそって神棚が祀られており、人(ほと=霊人)は死ぬと「神」になるという八百万神信仰により、「神棚→大黒柱→棟木→カラス止まり」からカラスによって死者の霊(ひ=玉し霊=魂)は天に運ばれ、また天から帰ってくると考えられていたのです。天皇家による仏教の国教化により、死者は「仏」になり仏壇に祀られるようになっても、神棚は維持されており初孫であった私は田舎に行くと毎朝、ご飯を神棚と仏壇に供えさせられましたが、どちらにご先祖の霊がいるのか、祖母に問いただした経験があります。

 そもそも、季節性の「水鳥」に使者の霊(ひ)を託すわけにはいかず、人を警戒する「水鳥」が鴨居や屋根の上の「カラス止まり」に止まるなど絶対にありえません。吉野ヶ里遺跡の「水鳥説」は理解不能です。鴨鍋や鴨南蛮が大好きな学芸員ばかりなのでしょうか?

 縄文ノート「38 『霊(ひ)』とタミル語peeとタイのピー信仰』「128 チベットの『ピャー』信仰」「132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰」「149 『委奴国』をどう読むか?」において、私は南インドから南・東南アジア山岳地帯、台湾の卑南族、匈奴(ヒュンナ)などは、祖先霊を「ピー、ピュー、ピャー、ぴー・ひー・ひ」とし、神山から天に昇り、降りてくると信じていたのです。

 そして、祖先霊を運ぶ神使として、カラス(熊野大社厳島神社住吉大社)・鶏(石上神宮穂高神社伊勢神宮)・白鷺(大山祇神社)や、神山(神名火山:神那霊山)からの神使として狐(稲荷大社)・猿(日枝大社・武尊神社)・鹿(厳島神社春日大社)・兎(住吉大社)・狼(三峰神社)などを祀ってきたのです。

 吉野ヶ里遺跡の「水鳥説」は、日本とアジアの霊(ひ:祖先霊)信仰の伝統を無視したトンデモ説というほかありません。

 

 ユダヤキリスト教の影響を受けカラスを聖鳥・霊鳥から悪役(ビラン)に陥れてハトを聖鳥と崇める拝外主義の風潮が見られますが、「霊(ひ)から生まれ、霊(ひ)を信仰するひと(人=霊人)」である日本人が、「霊(ひ)の鳥=カラス」を忘れていたのでは洒落にもなりません。なお、古代人はDNAが親から子へと受け継がれるのを「霊(ひ)」が受け継がれると考え、霊継(ひつぎ)を重要視し、霊継(ひつぎ)が断たれた霊(ひ)は怨霊(おんりょう)となって迫害者に祟ると考えたのです。

 

5.鳥耳、鳥鳴海、日名鳥、鳥船、烏越の名前は?

 古事記神話の大国主一族では、筑紫妻の「鳥耳」一族の「鳥鳴海」、「日名鳥(夷鳥・比良鳥・日照)」「鳥船(筆者説は日名鳥の別名)」、「布忍富鳥鳴海」が登場し、魏書東夷伝倭人条には倭の使者の「載斯烏越」(載斯は祭司か?)が見られます。

 吉野ヶ里遺跡原の辻遺跡などの鳥居のルーツやうきは市吉井町の6世紀後半の珍敷塚(めずらしづか)古墳の装飾壁画の船の舳先の鳥の種類と合わせて、検討する必要があると考えます。

 Y染色体D型の縄文人からの伝統と考えられる赤米を炊いてカラスに与える「ポンガ」の神事と、スサノオ大国主一族の神使の「三足烏」と合わせて、時間軸とアフリカからの伝播ルートの空間軸の2次元の解明が求められます。

 「悪役カラス」「害鳥カラス」から「神使カラス」「霊(ひ)の鳥カラス」「ナビゲーターカラス」への復権が求められます。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

縄文ノート191 カラス信仰のルーツはメソポタミアかアフリカか?

 縄文文化・文明についてその独自性を強調する「日本列島起源説」に対し、「シベリア起源説」「中国大陸起源説」「南方起源説」「チベット雲南照葉樹林帯起源説」などが見られますが、私は「人類アフリカ単一起源説」の延長上に「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説」を考えてきました。

今回は、4月3日のBS101のダークサイドミステリー「世界の怪鳥聖鳥伝説を追え!ヤタガラスから翼竜生存説まで」の録画をやっと見ましたので、これまで書いてきたものを紹介しながらカラス信仰のルーツを考えてみたいと思います。

 

1.「カラス信仰」のルーツを求めて

 カラス信仰については、これまでドラヴィダ族の「ポンガル」のカラス行事(古くは赤米粥を与えた)、群馬県片品村の赤飯投げと赤飯行事、女性器を前に付けた男子正装の烏帽子(えぼし)、長野県安曇野の「ホンガラホーイ」の鳥追い行事、雲南の烏蛮(うばん)族、カラスを国鳥とするブータンインダス文明ギリシア文明のカラス神話など、これまで霊(ひ:祖先霊)信仰の1つとして、死者の魂を天に運ぶカラス信仰について書いてきました。

 チベットミャンマー山岳地域などに多いY染色体D型人、「主語-目的語-動詞(SOⅤ)」言語、宗教語・農耕語のドラヴィダ語ルーツ説、雲南の烏蛮族、東南アジア山岳地帯のもち・なっとう・ソバ食や高床式建物、日本の男子正装の烏帽子など、DNAと言語・宗教・文化の共通性の1つとしてカラス信仰のルーツが南インドにある可能性を追究してきました。

 茶色字は引用文ですが、太字アンダーラインは今回、強調しました。

⑴ 縄文ノート29 『吹きこぼれ』と『おこげ』からの縄文農耕論

 大野晋氏は『日本語とタミル語』の冒頭で南インドに始めて調査に出かけた時の1月15日の「ポンガル」の祭りを体験した時の劇的な出会いを紹介しています。2つの土鍋に牛乳を入れ泡が土鍋からあふれ出ると村人たちが一斉に「ポンガロー、ポンガロー」と叫び、一方の土鍋には粟と米(昔は赤米)と砂糖とナッツ、もう一方の土鍋には米と塩を入れて炊き、カラスを呼んで与えるというのです。日本でも青森・秋田・茨城・新潟・長野に小正月(1月15日)にカラスに餅や米、大豆の皮や蕎麦の殻、酒かすなどを与える行事が残り、「ホンガ ホンガ」「ホンガラ ホンガラ」と唱えながら撒くというのです。「ホ」は古くは「ポ」と発音されることは、沖縄の「は行」が「ぱ行」となる方言に残っていますから「ポンガ=ホンガ」であり、なんと、インド原住民のドラヴィダ族の小正月の「ポンガ」の祭りが日本にまで伝わっているのです。縄文土器の縁飾りはこの「泡立ち=ポンガル」を表現しているのではないかと考えますが、別の機会に詳述したいと考えます。

⑵ 縄文ノート34 霊(ひ)継ぎ宗教論(金精・山神・地母神・神使)

(1) 猿追い・赤飯投げ祭り(花咲地区)

 ・拝殿の前で東西に2列に並び、赤飯を「エッチョウ」「モッチョウ」と言いながら交互に投げ合う。

⑷ にぎりっくら(武尊祭り:越本地区)

 ・12個の櫃の赤飯を人々が取り合う。

 ・地面にこぼれた赤飯が多いほど豊作とされた。

⑶ 縄文ノート73 烏帽子(えぼし)と雛尖(ひなさき)  

 「えぼし」というと、『もののけ姫』の製鉄のタタラ場を率いる「エボシ御前」をイメージする若い人も多いと思いますが、とんがった古代の烏帽子(えぼし=えぼうし)のことです。なぜ日本の貴族・高官が「カラス帽子」をかぶるようになったのか、さらに、その前面に「雛尖(ひなさき:クリトリス)」が付いているのか、気になりませんか? ・・・ 

 カラス神話インダス文明にもあります。「ノアの方舟」神話では、洪水がおさまりかけたときノアはワタリガラスを偵察に放つのですが、自由な気質のワタリガラスはかえってこず、次にハトを放つとオリーブの小枝を加えてきたというのです。ギリシア神話ではカラスは太陽神アポロン使徒で純白の羽毛をもっていたのが、真実を告げて黒い鳥に変えられたというのです。

⑷ 縄文ノート101 女神調査報告5 穂高神社の神山信仰と神使

 長野県南安曇郡では「ホンガラホーイ ホンガラホーイ」と囃しながら鳥追いを行うことを確かめています。・・・

 パンフ「ふるさと安曇野」によれば、カラスに赤飯などを与える行事ではなく、鳥追い行事に変わっています。

 それは群馬県片品村の花咲地区の武尊(ほたか)神社の「猿追い・赤飯投げ」行事と同じような経緯をたどったと考えれられます。―「縄文ノート34 霊(ひ)継ぎ宗教論(金精・山神・地母神・神使)」参照

 元々、カラスを神使として神山から天に昇り、降りてくる祖先霊を里から山の間は御幣に移してサルを神使として持たせて運ぶ祭りを行っていたものが、仏教伝来により死者の霊は極楽に行き神山への昇天降地というストーリーが立たなくなり、お山へサルを追い返すという行事だけが「鳥獣害対策」として残り、赤飯をカラスに与える意味もなくなり、大地に赤飯を撒く行事になってしまった、と私は考えています。

⑸ 縄文ノート132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰

 ウィキペディアによれば、イ族(旧族名: 夷族、倭族、自称:ロロ族)は南東チベットから四川を通り雲南省に移住してきており、現在では雲南に最も多く居住し、南詔王国を建国した烏蛮(うばん)族が先祖だと言われています。北方から徐々に南下したこれらイ語系種族集団(烏蛮)は、それまでその地に先住し勢力を有していた白蛮(広義のタイ系諸族)と対立抗争を繰り返し、白蛮系の高い文化の影響を受けた烏蛮系が台頭して先住の白蛮系をおさえ、唐代にはリス族、ナシ族とともに烏蛮を形成したとされています。

 ピー・モが主催する祖先霊信仰を行う焼畑民でトウモロコシ、米、ジャガイモ、麦、ソバ、豆類などを栽培し、ヤギや豚などの家畜を飼育し、伝統的な主食はツアンパという炒ったムギ粉を水で練ったもので、チベット族の食習慣に近いとされ、火祭りや独自の相撲があります。

 注目したいのは、イ族(夷族、倭族)の先祖の烏蛮(うばん)族が南東チベットをルーツとし、ピー=霊(ひ)信仰の「烏(う=カラス)」を神使とする部族であることです。

⑹ 縄文ノート147 『ちむどんどん』からの古日本語(縄文語)解明へ

 この「イ(夷・倭)族」については、縄文ノート「30 『ポンガ』からの『縄文土器縁飾り』再考」「38  霊(ひ)とタミル語 pee、タイのピー信仰」「132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰」ではロロ族と書き、「136 『銕(てつ)』字からみた『夷=倭』の製鉄起源」では「民族名の自称は『ロロ』『ノス』『ラス』『ニス』『ノポス』など地域によって異なり、中国古典では『夷』『烏蛮』『羅羅』『倮倮』などと書かれています」と書きましたが、「すべての音節の末尾が母音で終わる開音節言語」であり、「a、 i、 u、 e、ie、 o、uo」母音であることは、今回、初めて気づきました。

 「イ(夷・倭)族」のDNA・宗教・畑作・食文化・『銕(てつ)』字などに興味があったのですが、言語についてはウィキペディアから、今回、初めて気づきました。

⑺ 縄文ノート181 縄文石棒と世界の性器信仰

 イネもまたニジェール川流域が原産地の1つであり、その栽培・米食文化を持ち、さらにアジアイネに出会って日本列島にやってきた可能性が高いと考えます。ヒエなどの雑穀やイモ食・もち食は西アフリカがルーツの可能性が高く、さらに東南アジア・雲南山岳地帯が原産のソバや納豆文化などもこの移動ルート上にあり、南インド・ドラヴィダ族やブータン※、雲南の烏蛮(イ族=夷族、倭族)の烏信仰平安時代からの男性正装であった前に雛形・雛先(女性器)を付けた烏帽子(えぼし=カラス帽子)のルーツの可能性があります。 ※ブータンではカラスを国鳥としていることを書き落としました。

 

2.メソポタミアの「カラス信仰」

 前述のように、有名な旧約聖書の「『ノアの方舟』神話では、洪水がおさまりかけたときノアはワタリガラスを偵察に放つのですが、自由な気質のワタリガラスはかえってこず、次にハトを放つとオリーブの小枝を加えてきた」からメソポタミア文明のカラス神話を私は理解していたのですが、BS101のダークサイドミステリー「世界の怪鳥聖鳥伝説を追え!ヤタガラスから翼竜生存説まで」を見て、それが誤りであることを初めて知りました。

 なんと、紀元前1300〜1200年頃にまとめられた古代メソポタミアギルガメッシュ叙事詩では、カラスを放つとハトは帰ってきたのにカラスは帰ってこず、陸地を見つけたカラスが戻らないのはエサを食べているからと考えてカラスの後を追ったというのです。

 カラスは人を導く聖鳥であったのを、後のユダヤ教旧約聖書はハトを聖鳥に置き換え、ギリシア神話もまた「カラスは太陽神アポロン使徒で純白の羽毛をもっていたのが、真実を告げて黒い鳥に変えられた」と改変したのです。

 古代インドの海洋交易が発達した紀元前2世紀頃の記録でも、商人たちは陸地が見えなくなるとハトやカラスを放って進むべき方角を探したとされています。カラスは名ナビゲーターだったのです。

 また時代は9世紀に下がりますが、バイキングのフローキ・ビリガルズソンはカラスを3羽放してアイスランドを発見したとされています。また、アラスカの先住民は「ワタリガラスについていけば獲物にありつける」ということわざがあり、カラスに獲物を与え、獲物を探して人間に教えるようにしていました。

 古代エジプトの王家の谷を建設した労働者の町からは、紀元前1290年頃の墓職人・センネジェムの墓が発掘され、太陽の神・ラーが乗った船の先には黒鳥・カラスが描かれています(左図参照)。そして、時代はずっと下りますがうきは市吉井町にある6世紀後半の珍敷塚(めずらしづか)古墳の装飾壁画(右図:復元図)の船の舳先にもカラスらしい鳥が描かれています。番組では「死者の魂を死後に導くカラス」とし、松原始東大総合研究博物館准教授は死体に群がるカラスやヒマラヤ地方の鳥葬文化から、カラスが人の魂を救う聖鳥とされたとしています。

 私の解釈は少し異なり、中部アフリカのカメルーン山や東アフリカ湖水地方の万年雪をいただくルウェンゾリ山・ケニア山・キリマンジャロあたりで死者の魂が神山から天に昇るという「神山天神信仰」が生まれ、ナイル川を下ってエジプトの人工の神山・ピラミッドに伝わり、さらにメソポタミアのチグリスユーフラテス川源流のアララト山信仰と人工の神殿・ジッグラトを経て世界に拡散したと考えており、その過程で天に使者の霊(ひ:魂)を運ぶ船やカラスが信仰されるようになり、特に海洋を航行する海人族や鳥葬とともに世界に広まったと考えています。―縄文ノート「56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ」「57  4大文明と神山信仰」「61 世界の神山信仰」「70 縄文人のアフリカの2つのふるさと」「158  ピラミッド人工神山説:吉野作治氏のピラミッド太陽塔説批判」「178 「西アフリカ文明」の地からやってきたY染色体D型日本列島人」参照

 日本の「ホンガ ホンガ」「ホンガラ ホンガラ」と囃すカラスに赤飯などを与える行事はその特異な「囃子言葉」から南インドのドラヴィダ族の「ポンガ」がルーツであることは明らかであり、さらに遡ればエジプト・メソポタミア文明の共通のルーツである東アフリカに遡る可能性がありますが、日本語で検索した範囲ではアフリカにカラス信仰は見つけることができませんでした。

 旧約聖書の影響を受けたキリスト教イスラム教の信仰の影響や農作物を荒らすことから、アフリカではそれ以前にあったカラス信仰は消えてしまった可能性があり、今後の探究課題です。

 

3.「アニメ 烏(からす)は主(あるじ)を選ばない」

 阿部智里作の「八咫烏シリーズ(やたがらすシリーズ)」の小説・マンガは知りませんでしたが、4月6日(土)よりNHKでアニメ・シリーズが放映されており、4月3日のダークサイドミステリー「世界の怪鳥聖鳥伝説を追え!ヤタガラスから翼竜生存説まで」はその番組宣伝であったようです。

 この小説・マンガやアニメについては知らないので何もコメントすることはありませんが、3本足の八咫烏(やたがらす)が日本サッカー協会陸上自衛隊中央情報隊のシンボルマークにされ、歴史的には大日本帝国時代の金鵄(きんし:金色のトンビ)や鷲とともに用いられてきた経緯を考えると、スサノオ大国主建国論に取り組んできた私としては言及しないわけにはいきません。

 「縄文ノート73 烏帽子(えぼし)と雛尖(ひなさき)」では次のように書きました。

  

3 烏(カラス)信仰について

 烏信仰について、「中国神話では三足烏は太陽に棲むといわれる。陰陽五行説に基づき、二は陰で、三が陽であり、二本足より三本足の方が太陽を象徴するのに適しているとも、また、朝日、昼の光、夕日を表す足であるともいわれる。 中国では前漢時代(紀元前3世紀)から三足烏が書物に登場し、王の墓からの出土品にも描かれている」(ウィキペディア)とされています。

 厳島神社安芸国一宮)、住吉大社熊野大社(本宮・速玉・那智)などスサノオ系の神使の「三足烏(さんそくう)の烏」はこの中国文化の影響を受けた可能性があります。一方、後にワカミケヌ(若御毛沼:諡号神武天皇)の「東征」(私は傭兵部隊の移動と考えます)で熊野から大和(おおわ)国へ道案内をしたとされる八咫烏(やたがらす)は3本足とは書いてなく、8咫=8尺(1尺=約18㎝)は約144㎝ですから、小柄で色黒く、カラスとあだ名された男であったと書いているのです。黒い法衣の裁判官を「カラス」と言ったからといって、まさか裁判官を空飛ぶトリとする人などいないのと同じです。

 「三足烏」はJFA(日本サッカー協会)のシンボルマークにされていますが、「三足烏」はスサノオの神使であり、サッカーファンは記紀などを読んで「スサノオ大国主建国派」に変わるべきではないでしょうか? 「三足烏」は天皇家を支えるシンボルではありません。

 

 熊野のスサノオ一族の配下であったヤタガラスは、スサノオ一族を裏切り、スサノオの御子の大年(大物主)一族が支配する大和(おおわ:元は大倭)侵略を目指す薩摩半島の阿多を拠点とした山人(やまと)族傭兵隊のワカミケヌ(若御毛沼)の手先となり道案内を行ったのであり、まさに「烏(からす)は主(あるじ)を選ばない」裏切者であったのです。

 「勝てば官軍」で、侵略軍の手先となった裏切者の八咫烏(やたがらす)を信奉したい軍国主義者がまだまだ多いようですが、記紀に書かれたスサノオ大国主一族による米鉄交易と鉄先鋤と妻問夫招婚による平和な百余国の「豊葦原水穂国」の建国を認めるならば、厳島神社安芸国一宮)、住吉大社熊野大社(本宮・速玉・那智)などスサノオ系の神使の「三足烏(さんそくう)」こそシンボルとすべきでしょう。

 熊野本宮大社の熊野牛王神符「オカラスさん」は八十八の烏をデザインしていとされており、スサノオが詠んだ「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」の日本初とされる和歌や、八百万神(やおよろずのかみ)信仰との繋がりを感じさせます。

 あなたは「三足烏(さんそくう)」と「八咫烏(やたがらす)」のどちらの歴史が好きでしょうか?

 

4.鳥居や棟木の「カラス止まり」の烏(からす)

 吉野ヶ里遺跡に行き、入口の鳥居と大型建物(主祭殿?)の上に鳥が乗っている写真を撮り、死者の霊(ひ)を鳥が天に運ぶ霊(ひ)信仰として紹介してきましたが、なんと、吉野ヶ里遺跡では鳥の木製品は出土していないというのです。

 ブログ「吉野ヶ里遺跡の木製鳥形 - クロムの備忘録的ダイアリー (goo.ne.jp)」によると、「他の遺跡からは鳥形は出土しており鳥にはシンボル的意味合いがある」「中国や東南アジアでは入り口に鳥形が飾られる集落がある」「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「鳥には結界を示すような意味合いがある」「ここでいう鳥は水鳥である」という説明を受けたそうですが、かなり偏った推測というほかありません。

 確かに、大阪府和泉市の2300~1800年前の池上曽根遺跡からは鳥型木製品が出土しており、奈良県北葛城郡河合町の4~6世紀の馬見古墳群の佐味田宝塚古墳(30面の銅鏡出土)の家屋文鏡の建物上には鳥が描かれています。なお、この馬見古墳群は「『卑弥呼王都=アマテル高天原』は甘木(天城)高台」(200206→0416)で触れましたが、スサノオの娘(産女)の宇迦之御魂(うかのみたま:おいなりさん)と大国主の息子(産子)の阿遅志貴高日子根(あぢすきたかひこね:迦毛之大御神)の一族の拠点と私は考えています。 

 

 鳥越健三郎大阪教育大名誉教授の『雲南からの道』は、アカ族は村の門の上に木彫りの鳥を置いており、日本の鳥居のルーツとしています。

 

 ウィキペディアによれば、雲南省のハニ族はミャンマーラオスミャンマーベトナムではアカ族と呼ばれ、焼畑を中心とした農耕生活を営み、ラオスに住むアカ族の村の入り口には木で作った門を置き、鳥居の風習は四川省涼山に棲むイ族(夷族・倭族:チベット系の烏蛮族、ロロ族)とも共通しているとされています。

 この鳥の種類ですが、アカ族の鳥居の鳥と、池上曽根遺跡の鳥型木製品の鳥の1つは下向きにエサを啄んでいる姿であり、集落の周りにいる身近な鳥であり、イ族(夷族・倭族)が古くは「烏蛮族」と言われていたことをみても、カラスと見られます。年にある期間だけやってくる渡り鳥では、何の役割も期待できません。

 

 吉野ヶ里遺跡では「弥生時代には穀物の霊に対する穀霊信仰があり、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が生まれた」「鳥への信仰は穀霊信仰の強い東南アジアに残っている」「ここでいう鳥は水鳥である」と空想していますが、鳥越氏は「鳥は神の乗り物である」としています。記紀に書かれた始祖神の「産霊(むすひ)夫婦」の霊(ひ:祖先霊)信仰の歴史からみても、穀霊信仰説はいただけません。

 さらに、鳥越氏は日本の民家でも棟木の千木組の上に1本の竹を通し「カラス止まり」と呼ぶとして写真を載せ、烏は神使なので止まり木を置くことで神が屋根の上に降りていることを示したのであろうとし、ラフ族の「カラス止まり」がルーツとしています。

 

 茅葺き・藁葺きの民家については前から興味を持っていましたが、「カラス止まり」については意識したことがなく、ざっとネットで検索してみると、次の写真に一部を示しますが今も伝統として各地に残っていました。

 

 私の両親の祖父母の家では、大黒柱(大国柱=心御柱=心柱と考えます)にそって神棚が祀られており、人(ほと=霊人)は死ぬと「神」になるという八百万神信仰により、「神棚→大黒柱→棟木→カラス止まり」からカラスによって死者の霊(ひ=玉し霊=魂)は天に運ばれ、また天から帰ってくると考えられていたのです。天皇家による仏教の国教化により、死者は「仏」になり仏壇に祀られるようになっても、神棚は維持されており初孫であった私は田舎に行くと毎朝、ご飯を神棚と仏壇に供えさせられましたが、どちらにご先祖の霊がいるのか、祖母に問いただした経験があります。

 そもそも、季節性の「水鳥」に使者の霊(ひ)を託すわけにはいかず、人を警戒する「水鳥」が鴨居や屋根の上の「カラス止まり」に止まるなど絶対にありえません。吉野ヶ里遺跡の「水鳥説」は理解不能です。鴨鍋や鴨南蛮が大好きな学芸員ばかりなのでしょうか?

 縄文ノート「38 『霊(ひ)』とタミル語peeとタイのピー信仰』「128 チベットの『ピャー』信仰」「132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰」「149 『委奴国』をどう読むか?」において、私は南インドから南・東南アジア山岳地帯、台湾の卑南族、匈奴(ヒュンナ)などは、祖先霊を「ピー、ピュー、ピャー、ぴー・ひー・ひ」とし、神山から天に昇り、降りてくると信じていたのです。

 そして、祖先霊を運ぶ神使として、カラス(熊野大社厳島神社住吉大社)・鶏(石上神宮穂高神社伊勢神宮)・白鷺(大山祇神社)や、神山(神名火山:神那霊山)からの神使として狐(稲荷大社)・猿(日枝大社・武尊神社)・鹿(厳島神社春日大社)・兎(住吉大社)・狼(三峰神社)などを祀ってきたのです。

 吉野ヶ里の「水鳥説」は、日本とアジアの霊(ひ:祖先霊)信仰の伝統を無視したトンデモ説というほかありません。

 

 ユダヤキリスト教の影響を受けカラスを聖鳥・霊鳥から悪役(ビラン)に陥れてハトを聖鳥と崇める拝外主義の風潮が見られますが、「霊(ひ)から生まれ、霊(ひ)を信仰するひと(人=霊人)」である日本人が「霊(ひ)の鳥=カラス」を忘れていたのでは洒落にもなりません。なお、古代人はDNAが親から子へと受け継がれるのを「霊(ひ)」が受け継がれると考え、霊継(ひつぎ)を重要視し、霊継(ひつぎ)が断たれた霊(ひ)は怨霊(おんりょう)となって迫害者に祟ると考えたのです。

 「悪役カラス」「害鳥カラス」から「神使カラス」「ナビゲーターカラス」への復権が求められます。

 

5.鳥耳、鳥鳴海、日名鳥、鳥船、烏越の名前は?

 古事記神話の大国主一族では、筑紫妻の「鳥耳」一族の「鳥鳴海」、「日名鳥(夷鳥・比良鳥・日照)」「鳥船(筆者説は日名鳥の別名)」、「布忍富鳥鳴海」が登場し、魏書東夷伝倭人条には倭の使者の「載斯烏越」(載斯は祭司か?)が見られます。

 吉野ヶ里遺跡原の辻遺跡などの鳥居のルーツやうきは市吉井町の6世紀後半の珍敷塚(めずらしづか)古墳の装飾壁画の船の舳先の鳥の種類と合わせて、検討する必要があると考えます。

 Y染色体D型の縄文人からの伝統と考えられる赤米を炊いてカラスに与える「ポンガ」の神事と、スサノオ大国主一族の神使の「三足烏」と合わせて、時間軸とアフリカからの伝播ルートの空間軸の2次元の解明が求められます。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

190 サピエンス納豆からの「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説」

 DNA分析の進化により、人類の「アフリカ単一起源説」が定説となり、「多地域進化説」は成立しなくなりました。

 私は同じように、人類の基本的な宗教・文化・文明などもまた西アフリカから人類大移動とともに世界に拡散したという「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説」を考えてきました。そのきっかけは、次女が青年海外協力隊員として赴任していたニジェールニジェール川流域がヒョウタン原産地で米を栽培しており、若狭の鳥浜貝塚遺跡でヒョウタンと北アフリカ原産のウリ、インド原産のリョクトウ、南・東南アジアのシソ・エゴマが発見されていることを知ってからでした。

 そこから、Y染色体DNA、「主語-目的語-動詞(SOV)」言語、熱帯雨林での糖質・DHA食(イモマメ穀類・魚介食)と母子おしゃべり(言語発達)からのサルからヒトへの進化、マザーイネ(米・麦・トウモロコシ・雑穀の祖先)の発生地、米食、モチモチ・ネバネバ食(いももちなど)、魂魄分離(魂と肉体の分離)の神山天神信仰(ピラミッドを含む)、黒曜石文化、円形住宅やウッド・ストーンサークル、母系制社会などのルーツを探究し、アフリカから人類拡散とともに世界に広まったと考えるに至りました。

 なんと、さらに衝撃的であったのは納豆食文化もまた同じ西アフリカの可能性が高いことを高野秀行氏の『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた「サピエンス納豆」』(2020年8月:新潮社)で教えられました。氏の 素晴らしい労作『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2016年4月)はたまたま与野図書館の食の企画展で目に入り1か月前に読んでいたのですが、さらにアフリカにまで取材を広げていたのです。

 「餅団子(研究者の人たちは『練り粥』と呼ぶ)を主食とする地域は納豆をソースの調味料として使うが、米食地域ではもっとバリエーションに富んでいる」「セネガルでは・・・『米+魚+納豆』という日本人にひじょうに馴染みのあるセットになっているのだ」「西アフリカでは粘り気のある野菜を多用する・・・オクラ・ハイビスカス(ローゼル)の葉、モロヘイヤなど、煮込めばみんなネバネバである」というのであり、「縄文ノート142 もち食のルーツは西アフリカ」を書き、モチモチ・ネバネバ食が大好きな私としては大いに納得しました。

 Y染色体D型人はこの地のE型人と分かれる前に、同じモチモチ・ネバネバ食文化を持っていた可能性が高いのです。

 

<『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた「サピエンス納豆」』」より>

 

 

はてなブログ「ヒナフキンの縄文ノート」からの「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説:参考図>

 人類西アフリカ熱帯起源説


3 言語西アフリカ起源説

 

4 糖質・DHA食西アフリカ熱帯雨林起源説

 

5 マザーイネ西アフリカ起源説

 

6 モチモチ・ネバネバ食西アフリカ起源説

 

<この段階では納豆は南・東南アジア山岳地帯起源説でした>

7 神山天神信仰東アフリカ湖水地方起源説

 

8 黒曜石文化東アフリカ起源説

 

9 円形平面住宅アフリカ起源説

 

10 母系制社会アフリカ起源説

 西アフリカなどからはヨーロッパや日本に見られるような石器時代の妊娠女性の像や女神像は見つかっていませんが、エジプト神話は「水の神」ヌンの誕生から始まり、メソポタミア神話の「海の女神」始祖神ナンムや「天の女主人」のイナンナは母系制社会の女神信仰を示しています。

 また、私は「製鉄アフリカ起源説」ですが、時代は下がりますがアフリカでは技術者の最上位カーストは鉄鍛冶師で、陶工・土器製作者であり、粘土でカマドをつくっていた女性が土器・製鉄を開始したという説を支持しています。なお、日本の製鉄神・金屋子神も女神です。

 

 

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

「スサノオ・大国主ノート151 鉄刀・鉄剣からみた建国史―アフリカ・インド鉄と新羅鉄・阿曽鉄、草薙大刀・草薙剣・蛇行剣」の紹介

 Gooブログ「ヒナフキンスサノオ大国主ノート」に「スサノオ大国主ノート151 鉄刀・鉄剣からみた建国史―アフリカ・インド鉄と新羅鉄・阿曽鉄、草薙大刀・草薙剣・蛇行剣」をアップしました。https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 先日、スサノオ・イナダヒメらを祀る須我神社のある島根県雲南市大東町出身の起業家・細貝和則氏と歓談する機会があり、TBS「ワールドビジネスサテライト」のトレたまトレンドたまご)の年間大賞を受賞したライティングシート(画鋲やテープを使用せず静電気で貼りつける持ち運び容易なホワイトボード代わりのシート)などの発明・事業展開・Uターン起業化の話を聞きました。私からは「トレたま」で放送されたものの売れなかった世界初の折り畳み式の小型ヨット・ランブラーの事業化の失敗談や、八百万神信仰のスサノオ大国主建国、出雲大社復元案、たたら製鉄などを話し、盛り上がりました。。

 氏の出身地の大東町がかつては日本のモリブデンの主産地であったという重要な話を聞きましたのでモリブデン鋼製鉄の可能性、ヤマタノオロチの草薙大刀(くさなぎのおおたち)と天皇家の「三種の神器」の草薙剣(くさなぎのつるぎ)の関係、オロチ王を切ったスサノオの十拳剣(とつかのつるぎ)と石上神宮の約120㎝の大刀・約85㎝の剣の関係、アフリカの製鉄女神とたたら製鉄の女神・金屋子神の関係、吉備の温羅の妻・阿曽姫ゆかりの阿曽地区製鉄と阿蘇リモナイト鉄の関係、八岐大蛇と蛇行剣、インド・東南アジアの7つ頭のナーガ蛇神・八大竜王の関係などについて考えてみました。

 本ブログの「縄文論」としても、アフリカの製鉄女神とたたら製鉄の女神・金屋子神が示す母系制社会の解明の参考にしていただければと思います。雛元昌弘

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(前同42号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(前同43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

  ヒナフキン邪馬台国ノー      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

  ヒナフキンの縄文ノート       https://hinafkin.hatenablog.com/

 

189 ハラリ氏の新たな嘘話『サピエンス全史』を批判する(加筆・修正版)

「188 ハラリ氏の嘘話『サピエンス全史』批判」は口頭での報告用なので、以下、読者向けに加筆・修正しました。

 

 アメリカに敗戦するまで他民族に征服・支配されることのなかったわが国は、新旧石器時代(日本では旧石器・縄文時代)の文化・文明が現代まで色濃く継承されており、しかも世界に類のない緻密な縄文時代研究と博物館、復元施設、市民体験活動などがあり、一神教以前の全世界の歴史解明を先導する役割を担うべきと考えます。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教などの終末思想・優生思想・選民思想に基づく一神教をハラリ氏は「嘘話」とした点を私は高く評価し、宗教戦争をなくすことに繋がることを期待したのでしたが、読んでみると科学的な言葉を散りばめただけの古くさい「嘘話」の焼き直しにすぎず、ガッカリでした。

 ユダヤ教の征服・殺戮・奴隷化を奨励する神の代わりに、「人類は誕生した時から殺戮・征服者として進化してきた」という嘘話を追認し、旧約聖書を信奉するユダヤシオニストエルサレム帰還・再征服派)やキリスト教徒・イスラム教徒に現代的な焼き直しの思想を吹き込もうとするものでした。

 今、この侵略的な西洋・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進歩史観」を批判し、覆すハト派進化説「糖質魚介食・採集漁労農耕・共同共生共進進化説」が次々と解明されてきていますが、ハラリ氏はそれらを全て無視するタカ派進化説の守旧派でしかありませんでした。そして、その先には終末の未来しかないことをウクライナパレスチナ戦争や地球環境悪化による異常気象・食料危機などは示しています。

 今こそアフリカで誕生しアフリカ・アジア・南北アメリカで共進した数万年の人類史を辿り、たかだか2千数百年の西欧中心文明の先を展望してみませんか?

 

1 伝説・宗教・イデオロギー・貨幣信仰の「嘘話」を否定した新たな「人類史嘘話」

 ユヴァル・ノア・ハラリ氏は『サピエンス全史』において、伝説やユダヤ教キリスト教イスラム教、イデオロギー社会主義、人間至上主義)、貨幣信用などを「嘘話(虚構)」と批判し、このような嘘話(フェイク)を信じる人たちに大きな影響を与えた点は高く評価したいと思います。

 しかしながらハラリ氏は、ユダヤ人が「唯一絶対神」を発明し、カナン(現在のイスラエル)を神が与えた「約束の地」として侵略・殺戮・略奪・支配し、金融資本主義を先導したユダヤ人の「原罪」を隠した「ユダヤ教・金融資本主義」の嘘話を歴史家として具体的に批判すべきであったにも関わらず、それを避けています。

 ユダヤ人への差別・迫害・ホロコーストをバネとし、それを何よりも生命を大事にする共同・共生・共進の平和な世界の創造に向けるのではなく、ユダヤ教シオニストパレスチナ(カナン)の再征服を正当化する新たな嘘話を創作しようとしているのではないかと疑われるのがハラリ氏の嘘話・サピエンス全史です。

 「唯一絶対思想」を考えたマルクスもこの「唯一絶対神」思想の延長にあり、どちらも同じように「宗教・思想による人類の統一」(グローバリズムインターナショナリズム)を目指しており、ハラリ氏もまたその一人なのです。

 彼の人類起源論・人類拡散論のまとめは、古くさい西洋・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進化史観」の要約にすぎず、最近の研究成果を踏まえておらず、期待を裏切られてがっかりでした。カナン(フェニキア)・シュメール文明、ブリトン人のストーンサークル文明、エジプト・インダス・中国(春秋・戦国時代以前)4大文明、1万数千年の縄文人の歴史などを無視した、旧約聖書教の西洋中心史観の要約にすぎません。

 その結果、現在の「戦争・侵略なき世界」「グローバリズムの格差なき文明社会」「地球環境問題」「貨幣嘘話=拝金主義なき世界」への展望を示すことはできず、「幸福度」「人生の意義」などというボンヤリとした「超ホモ・サピエンス」時代を提案しているにすぎません。この程度の「嘘話」にコロリと騙され同調するジャレド・ダイアモンドバラク・オバマビル・ゲイツなど著名人も多いのですから、「フェイク派」に対する「真実派」の戦いは容易ではありません。

 この本は宗教・貨幣・思想の「嘘話」から覚めるために多くの人に読んで欲しいと思いますが、そこから肉食・狩猟・闘争・戦争進化論の西洋中心史観やユダヤ・キリスト・イスラム一神教奴隷制ローマ帝国や欧米アフリカ人奴隷貿易などを冷徹に批判し、縄文文明などアフリカ・アジア・南北アメリカを中心に置いた世界史の解明に進み、未来社会を展望する若い人たちが出てきて欲しいものです。

 なお、私はグロ-バリズムの「世界単一市場化の世界支配と不均等発展」には組せず、全ての民族・地域の自立・経済的発展と尊厳を願う汎民族・汎地域主義者であり、西欧キリスト教社会のユダヤ人差別・迫害・大量殺戮を強く憎むものであり、私の批判は唯一絶対思想の旧約聖書教とマルクス主義亜流、ユダヤ教シオニストパレスチナ支配・迫害・殺戮に限って向けられているものであり、反ユダヤ主義者ではないことを改めて強調しておきたいと考えます。

 

2 「タカ派進化史観」対「ハト派進化史観」

 歴史の専門家ではない私の知識は、雑誌『ナショナルジオグラフィック』『日経サイエンス』と公刊された単行本くらいですが、遊牧民ユダヤ人の旧約聖書をベースとしたタカ派の「肉食・狩猟・闘争・戦争文明史観」に対し、霊長類・類人猿学、文化人類学、食物学、考古学、遺伝子分析などからのハト派の「糖質魚介食・採集漁労・共同共生共進文明史観」が今や主流となりつつあるにも関わらず、ハラリ人類史はそれらをことごとく無視しています。

 「物語作家」ならともかく、歴史学者というハラリ氏の肩書には疑問を覚えます。

 

3 「二足歩行進化説」対「頭脳先行進化説」

 「狩猟・遊牧民族史観」のハラリ氏は、熱帯雨林からサバンナに出て大型草食動物を狩猟し、肉食と言葉、頭脳を発達させたという古くさい進化説、「脳筋」説のままであり、「脳の進化」は不明としています。

 人は乳幼児期にまずは脳や言葉が発達し、次に二足歩行ができるようになることを見ても、サルからヒトへの人類進化は頭脳の発達が先行したのです。それを可能にしたのは糖質とDHA(精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分)であり、熱帯雨林における「イモマメ穀類・魚介食」こそがホモサピエンス(賢い人)を誕生させたのです。

 ハラリ氏はこれらの研究を無視して「脳の進化不明」としており、歴史学者などというのはおこがましく「作家」というべきでしょう。

 

 

4 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

 ユダヤ人のルーツである狩猟・遊牧民を歴史の中心に据えたいハラリ氏は、サバンナは「原初の豊かな社会」、「狩猟採集民の豊かな暮らし」説を披露していますが、「熱帯雨林、亜熱帯・温帯林」や「採集漁労民」などとの比較は行っていません。生物学や文化人類学の成果など無視です。

 私の反論は次のとおりです。

① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。

② 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支え、それを可能としたのは海岸・河川や沼のある熱帯雨林である。

③ 半身浴採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらすとともに、DHA食による知能(知脳)の発達を支えた。

④ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火災が女性によるイモ・マメ穀類の加熱調理を促して糖質の安定摂取を可能にし、脳の活動を支えるとともに、自由時間の増大がメス・子どものおしゃべりによる乳児期の知能を発達させ、共同子育て・共同採集漁撈活動と遊びが幼児の知能を飛躍的に高めた。

⑤ メス・子どもの共同採集・漁労・調理活動のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・ヤス・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。

⑥ 日本人の4割を占めるY染色体D型人はアフリカ西海岸でY染色体E型人と分かれ、ナイジェリアには3人のY染色体D型人が発見されており、チンパンジーボノボの生息するこの地こそがホモ・サピエンスの故郷である。

⑦ 縄文遺跡から見つかるヒョウタンのルーツはアフリカ西海岸のニジェール川流域であり、全てのイネ科穀類(米・麦・トウモロコシ・アワ・ヒエなど)のルーツはパンゲアゴンドワナ)大陸の現西アフリカと南アメリカ東部のあたりであった可能性が高い。

⑧ 「主語-目的語―動詞(SOV)族」の分布はイモ類や魚介類の豊富な熱帯の「海の道」に沿った早期の人類拡散を示している。

⑨ 東アフリカからは人骨や骨器などが発見されているが、高温多湿で酸性土の熱帯雨林では人骨・骨器・木器などは残らない。

⑩ サルからヒトへの進化の論点、11の進化要因の従来説と筆者説、進化のプッシュ要因説とプル要因説についてこれまでまとめたものを表4~6に示す。

 

5 「狩猟採集民史観」の嘘話

 狩猟・遊牧民をルーツとするユダヤ人の歴史家として、ハラリ氏の人類史は「狩猟採集民の豊かな暮らし」などユダヤ人のための狩猟・遊牧民人類史とでもいうべき偏った世界史になっています。

 エンゲルス私有財産制を基準に「野蛮→未開→文明」「原始共同体→奴隷制封建制→資本主義」という時代区分を提案し、中国の清朝末から中華民国にかけて活躍した学者・革命家・政治家・ジャーナリストの梁啓超は「河流文明時代→内海文明時代(ギリシア・ローマ時代)→大洋文明時代」という時代区分から「四大文明論」を唱え、英国の歴史学者アーノルド・J・トインビーは西欧中心史観を批判して地域性・文化性・宗教性を分析に加え「西ヨーロッパ文明、東ヨーロッパ文明(ビザンチン文化→帝政ロシア)、アラブ文明、ヒンズー文明、中国文明儒教)、日本文明(大乗仏教)」の6文明論を主張しています。

 さらに、梅棹忠夫(京大名誉教授)は生態学から文明論へと進み、西洋・東洋という区分を批判し、西ヨーロッパ・日本を第一地域、その間の大陸部分を第二地域とした分類を提案し、川勝平太氏(比較経済史、元早大教授、静岡県知事)は今西錦司生態学・霊長学、京大名誉教授)の「棲み分け理論」の影響のもとに「陸地史観」(農業社会→工業社会)を批判して交易の役割を重視した「海洋史観」を提案しています。

 歴史学素人の私ですらこの程度の表面的な知識はあるのですから、ハラリ氏は歴史学者として「サピエンス全史」というならこれらの説を統合した提案をすべきですが、「狩猟遊牧民全史」に終わっています。

 また思想家というなら、現在、大きな転換点を迎えようとしている西洋文明の様々な問題を人類史に遡って検討すべきでしょう。

 

6 「世界征服史観」の嘘話

 ハラリ氏はアフリカからの人類拡散をなんと「ホモ・サピエンスによる世界征服」地図としており、ここに彼の基本思想が示されています。「ホモ・サピエンスは他の原人・旧人を滅ぼした征服者である」としたいのです。

 しかしながら、現生人類(ホモ・サピエンス)にネアンデルタール人の遺伝子が受け継がれていることを発見したスバンテ・ペーボ独マックス・プランク進化人類学研究所教授(沖縄科学技術大学院大客員教授)が2022年にノーベル賞を受賞したことからも明らかなように、ホモ・サピエンスネアンデルタール人は共生していた時期があったことが証明されており、ホモ・サピエンスネアンデルタール人を殺戮・絶滅させたという考古学的な証拠がなかったことを遺伝子分析で裏付けました。ハラリ氏はこれらの研究を知らなかったとでも言うのでしょうか。

 ハラリ氏は「ホモ・サピエンスが猿人や原人、旧人を征服して絶滅させた」とし、ユダヤ旧約聖書教の「征服・殺戮・強盗神」に置き換えたいようですが、子どもでもわかる事実としてホモ・サピエンスは全てのサルを絶滅などさせておらず、また、世界各地で多様な民族が共生しているのです。
 猿人や原人、旧人の絶滅については、ホモ・サピエンスが「滅ぼした」「競争に勝った」という説以外に「感染症の影響」説があることをハラリ氏は知っていたはずです。

 実際、新型コロナ感染は民族によって免疫力に違いがあることを明らかにしました。それまでにコロナ風邪にかかって免疫力を高めていた日本人は新型コロナウィルスへの感染率が低かったのです。

 アフリカを最後に出たホモ・サピエンスはアフリカで様々な感染症への免疫力を高めていた「ホモ・イミューン(免疫力の高い人間)」であり、先に世界各地に拡散していた原人や旧人が新興感染症にやられても生き残ったのです。

 

7 ハラリ氏の「嘘話人類進化説」に未来はあるか?

 私ははてなブログ:NoWar2022の「26 ロシア兵の残虐性は『旧約聖書』ゆずり?」で、旧約聖書を紹介しました。

 

申命記(神命記):

「あなたがその町に近づいたときには、まず降伏を勧めなさい。降伏に同意して門を開くなら、その中にいる民は、みな、あなたのために、苦役に服して働かなければならない。 もし、あなたに降伏せず、戦おうとするなら・・その町の男をみな、剣の刃で打ちなさい。しかし女、子ども、家畜、また町の中にあるすべてのもの、そのすべての略奪物を、戦利品として取ってよい」「あなたの神、主が相続地として与えようとしておられる次の国々の民の町では、息のある者をひとりも生かしておいてはならない。すなわち、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人は、あなたの神、主が命じられたとおり、必ず聖絶しなければならない。それは、彼らが、その神々に行なっていたすべての忌みきらうべきことをするようにあなたがたに教え、あなたがたが、あなたがたの神、主に対して罪を犯すことのないためである」と神が命じたと伝えているのです。

ヨシュア記:

「あなたがたが、足の裏で踏む所はみな、わたしがモーセに約束したように、あなたがたに与えるであろう。・・・そして町にあるものは、男も、女も、若い者も、老いた者も、また牛、羊、ろばをも、ことごとくつるぎにかけて滅ぼした。そして火で町とその中のすべてのものを焼いた。ただ、銀と金、青銅と鉄の器は、主の家の倉に納めた」

 

ハラリ氏は歴史家というならこの神の嘘話から説き起こし、侵略・殺戮・強盗神を批判するところから始めるべきでしょう。

さらに「27 ユダヤ教聖典の『旧約聖書』と『タルムード』の残虐性」においては、ユダヤ教聖典『タルムード』を取り上げました。

 

「人間の獣に優れる如く、ユダヤ人は他の諸民族に優れるものなり」「汝らは人類であるが、世界の他の国民は人類にあらずして獣類である・・・世界はただイスラエル人の為にのみ創造されたるなり」「すべての民を喰い尽くし、すべての民より掠奪することは、彼らすべてが吾等の権力下に置かれる時に始まるべし」「涜神者(非ユダヤ人)の血を流す者は、神に生贄を捧ぐるに等しきなり・・・汝殺すなかれ、との掟は、イスラエル人を殺すなかれ、との意なり」「他民族の有する所有物はすべてユダヤ民族に属すべきものである。ゆえになんらの遠慮なくこれをユダヤ民族の手に収むること差し支えなし」「ゴイ(非ユダヤ人)の財産は主なき物品のごとし」

 

 歴史家ハラリ氏はこのようなユダヤ教の神の言葉を嘘話というのなら、その嘘話を現在のシオニストたちが今も信じてパレスチナ侵略・殺戮・略奪を行っていることを問題にすべきではないでしょうか?

 ハラリ氏がやったことは、旧約聖書の侵略・殺戮・強盗神を嘘話とする代わりに、ホモ・サピエンスは元々殺し屋であり、肉食・狩猟・闘争・戦争によって進化してきたとしてシオニストたちのジェノサイドを擁護したいようですが、そのような証明は成功していません。

 ユダヤ人の「優生・選民宗教」を転用し、ヒットラーは「アーリア人優生・選民思想」という嘘話でドイツ国民を統合しユダヤ人を大量虐殺し、「大衆は、小さな嘘よりも大きな嘘の犠牲になりやすいだろう」と大きな嘘話で国民を世界征服戦争に駆り立て、今、プーチンは「聖なるロシア帝国」「神が護りし祖国」のためのウクライナ戦争に国民を動員し、シオニスト・ネタニヤフは「神がくれた土地」としてパレスチナ人を殺戮して全土支配を目指しています。ハラリ氏は歴史家としてこのような嘘話にどう対抗し、どのような未来を創ろうというのでしょうか?

 たかだか2千数百年の旧約聖書の「侵略・殺戮・強盗奨励神」の嘘話と向き合うためには、ハラリ氏は数万年の母系制社会の「共同・共生・共進進化」の真実のホモ・サピエンス全史の研究をすべきでした。

 ハラリ氏の「狩猟採集民」選民思想の歴史からではなく、「糖質・DHA食」の人類誕生の歴史を受け継いだ、自然を活かし、女性が敬われ女神が信仰された母系制社会の豊かで平和な1万数千年の縄文人の歴史から、私たちは次の文明を展望すべきです。

芸術家・岡本太郎氏の「縄文に帰れ」を今こそ世界へ向けて発信したいと思います。

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

188 ハラリ氏の嘘話『サピエンス全史』批判

 3月13日、縄文社会研究会・東京の顧問・尾島俊雄早大名誉教授の研究室でユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』などの翻訳者柴田裕之氏を招いての学習会があり、私は縄文ノート130~139の「『サピエンス全史』批判」1~5(220331~0523)の要点をまとめたレジュメと、182「人類進化を支えた食べもの」、186「『海人族縄文文明』の世界遺産登録へ」(231204)を報告しました。

 他民族に征服されることのなかったわが国は、新旧石器時代(日本では旧石器・縄文時代)の文化・文明が現代まで継承されており、しかも世界に類のない緻密な縄文時代研究と博物館・復元施設、市民体験活動などがあり、一神教以前の全世界の石器時代の歴史解明を先導するべき役割を担うべきと考えます。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教などの終末思想・優生思想に基づく一神教をハラリ氏は「嘘話」とした点は高く評価しますが、ユダヤ教の征服・殺戮・奴隷化を奨励する神の代わりに、「人類は誕生した時から征服者であり殺戮者として進化してきた」という新たな嘘話を創作し、ユダヤシオニストの思想を世界に広めようとしています。

 今、この侵略的な白人・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進歩史観」を批判するハト派進化説が次々と生まれてきていますが、ハラリ氏はそれらを無視し、タカ派進化説の旗手としてあがめられてきていますが、その先には終末の未来しかないことをウクライナパレスチナ戦争や地球環境悪化による異常気象・食料危機などは示しています。

 今こそアフリカで誕生しアフリカ・アジア・南北アメリカで進化した数万年の人類史を辿り、たかだか2千数百年の西欧中心文明の先を展望してみませんか?

 以下のレジュメ(要約)は説明のためのものなので、読んだだけでは理解しにくいと思いますので、元の縄文ノート130~139を見ていただければ幸いです。

 

1 まえがき:ヒナフキンの縄文ノート130(2022年3月31日)

 ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』をざっと読みました。

 伝説やユダヤ教キリスト教イスラム教、イデオロギー社会主義、人間至上主義)、貨幣信用などを「嘘話(虚構)」と批判し、「嘘話」で形成された集団によって人類が進歩したと勇気ある分析を行い、嘘話を信じる人たちに大きな影響を与えた点は高く評価したいと思います。・・・

 しかし、ハラリ氏は「唯一絶対神」を発明し、カナン(現在のイスラエル)を神が与えた「約束の地」として侵略・殺戮・征服・支配を行い、金融資本主義を先導したユダヤ人の「原罪」を隠した「嘘話ユダヤ教・金融資本主義」から説明すべきであったにも関わらず、それを避けています。ユダヤ人差別の中にあるハラリ氏には思想家としての限界を感じました。

 「唯一絶対思想」を考えたマルクスもこの「唯一絶対神」思想の延長にあり、どちらも同じように「宗教・思想の嘘話の統一による人類の統一」(グローバリズム)を目指しており、その延長上にハラリ氏もまたいるのではないか、という印象を受けました。

 また、彼の人類起源論・人類拡散論のまとめは、古くさい白人中心史観の男性中心史観、肉食・狩猟・闘争・戦争進化史観の定説の要約にすぎず、最近の研究成果を踏まえておらず、期待を裏切られてがっかりでした。カナン(フェニキア)人やシュメール人ストーンヘンジなどをつくったブリトン人、4大文明のエジプト・インダス・中国文明、土器鍋を囲んだ1万数千年の縄文人の歴史など、ユダヤ人・ローマ人の歴史以前の世界史を無視した西洋中心史観です。

 その結果、現在の課題である「戦争・侵略なき世界」「グローバリズムの格差なき文明社会」「地球環境問題」「貨幣嘘話=拝金主義なき世界」への展望を示すことはできず、「幸福度」「人生の意義」などというボンヤリとした「超ホモ・サピエンス」時代を提案しているのは「竜頭蛇尾」もいいところと思います。

 この本は宗教・貨幣・思想の「嘘話」から覚めるために多くの人に読んで欲しいと思いますが、そこから肉食・狩猟・戦争進化論の西欧中心史観やユダヤ・キリスト・イスラム一神教奴隷制ローマ帝国近代科学社会後の奴隷制アメリカ帝国などを冷徹に批判し、縄文文明などアフリカ・アジア・南北アメリカを中心に置いた世界史の解明に進み、未来社会を展望する若い人たちが出てきて欲しいものです。

 『サピエンス全史』を読んで思い出されるは、古くさい話で恐縮ですが1960・70年代の「主意主義(われ思うわれあり)対唯物史観(存在が意識を規定する)」、「実存主義(実存は本質に先立つ)」「主体性論(自らの意志による行動)」「武谷弁証法(客観的法則の意識的適応)」などの議論です。

 青くさいと思われるかも知れませんがその議論を思い出していただくと、「吉本共同幻想論」や「ハラリ嘘話論」は「人間の存在・実存・主体性・意識性を欠いた受動性(嘘話付和雷同性)批判」にしかすぎず、1970年代からの運動の中で作り上げてきた新しい「共同性・協働性・公正性」や「多様性」「平等性」「生類愛」「共生」などの豊かな思想と実践の反映は見られません。ハラリ氏は帝国主義イスラエルに暮らしてきておりやむをえないと思いますが、1970年以前の古くさい思想のままです。この間のウクライナ戦争に対するロシア支持の「化石左翼」メンバーの化石度と同じように感じずにはおれません。

 なお、私はグロ-バリズムの「世界単一市場化の世界支配と不均等発展」には組せず、全ての民族・地域の自立・経済的発展と尊厳を願う汎民族・汎地域主義者であり、西欧キリスト教社会のユダヤ人差別・迫害・大量殺戮を強く憎むものであり、私の批判は唯一絶対思想のユダヤ教マルクス主義亜流、イスラエルシオニストパレスチナ支配・迫害・殺戮に限って向けられているものであり、反ユダヤ主義者ではないことを改めて強調しておきたいと考えます。

 

2 狩猟・遊牧民族史観:ヒナフキンの縄文ノート133(2022年4月10日)

⑴ 「狩猟民族に学ぶべき」???

⑵ 「ホモ・イミューン(免疫力の高い人間)」の生き残り

⑶ 「脳の進化不明説」のインチキ

3 世界征服史観:ヒナフキンの縄文ノート134(2022年4月14日)

⑴ あっと驚くハラリ氏の「世界征服地図」

⑵ 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。

② メス子どものおしゃべりと共同子育て・共同採集漁撈が乳幼児期の知能を発達させ、教育が子どもの生存率を高めた。

③ 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支えた。

④ 水中歩行採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらした。

⑤ メス・子どもの採集のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。

⑥ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火の調理使用を促した。

⑦ Y染色体D型族はアフリカ西海岸でY染色体E型族と分かれた。

⑧ ヒョウタンとマザーイネのルーツはアフリカ

 

⑶ 「ウォークマン史観」の嘘話

⑷ 「4河川文明無視」の嘘話

⑸ 「西欧人アララト山ルーツ説」の嘘話

⑹ 「東洋人乾燥地帯ルーツ説」の嘘話

 

4 嘘話(フェイク)の人類進化説:ヒナフキンの縄文ノート137(2022年5月6日)

⑴ 5W1Hがない「ハラリ認知革命説」

⑵ 嘘話が先か、共同利益が先か?

⑶ 擬人化を神格化と勘違いさせるハラリ氏の嘘話

 ―ライオン像より妊婦女性像・女神像こそ注目すべき

⑷ ハラリ氏の「認知革命」の怪しい定義

⑸ ハラリ氏に必要なのは歴史からの具体的な教訓

 

5 狩猟採集民の「平和と戦争」:ヒナフキンの縄文ノート139(2022年5月23日)

⑴ 「狩猟採集民の豊かな暮らし」?

⑵ 「肉食史観」対「糖質・魚介食史観」

⑶ 現代人の肥満のルーツは狩猟採集民?

⑷ 「古代コンミューン派」対「永遠の一夫一妻制派」??

⑸ 遺伝子学無視の人類と犬だけの優性思想

⑹ サバンナは「原初の豊かな社会」?

⑺ アニミズム否定による嘘話進化説

⑻ 「平和か戦争か?」は「沈黙の帳」???

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/