Le Noire 官能。艶めいて。

官能小説。愛、欲望、そして男と女。
Amour et désir, et hommes et femmes.

便りが無いのは…

2023-11-16 | Amour

 英輔《通称エース》とのメール記録は2年前の日付で途切れていた。なんとなく、彼に送った自分のメールや彼からの返信を、なんとなく読み返していたら、何だか懐かしい気持ちになり、そんな気はなかったのにわたしは2年ぶりに彼に、

「璃世(◯◯←本名)だよ。元気にしてますか?それだけ」

 こんなメールを送ってみた。返信なんてぜんぜん期待していなかった。

 2年も放っておいたくせに、でも彼からの連絡も無かったし、あれから音信不通になったのはわたしだけのせいじゃない。

 恋人なんて関係じゃなくて、ふと、話したくなったときにだけ他愛のないメールのやり取りをする。大阪にいる彼と東京のわたしとの関係はそんな程度でしかない。

 彼がマッチングアプリ(というか出会い系)を辞めてからは共通の話題も無くなってしまったから、時が経てば経つほど、わたしと彼を隔てている物理的な距離のように、付き合いの密度が希薄になっていくのは仕方がないことだ。

 彼がSNSを去るときに、彼はわたしに「大阪から璃世に会いに行くと俺が言うたら、会うてくれるか」と言った。

 わたしはちょっと迷ってからNoと答えた。

 彼はとても良い人だ。人が良すぎて出会い系なんて合わないよと、彼がデアイケイサイトにいる頃からずうっと思っていた。でもわたしの彼への気持ちはそんな程度でしかない。

 真剣に恋を探している彼に対して恋人未満の可能性しか見えないわたしがYesと言ったら、彼に誤解させてしまうかもしれない。そう思ったからだ

「一緒に飯でも食うだけや。それだけで構わん」と彼は言ってくれたけれど、わざわざ新幹線で来させておいて、何の進展も無いままにそれだけで帰ってもらうなんて、わたしにはできなかった。

 だがしかし。そんなこんながわたしの脳みそをよぎったのも一瞬だけ。

 なんと!メールボックスに彼からのこんな返信が!

「ビックリやな!元気やで。久しぶり。璃世の本名って聞いてなかったような?4年ぶりぐらいか??」

 …返信はやっ。

 っていうか、なんだよ。わたしとのことみんな忘れてるじゃん。

 で、わたしから、

「返信はやっ。こっちもビックリ。暇なの?(彼女おらんの?)。本名教えてくれって言われたから教えたじゃないか😠自分で言ったこと忘れたの?それに4年も経っていないよ」

 相変わらずボケまくりのエースである。

 …そうだよね。わたしのあなたへの気持ちも恋人未満だけど、あなたのわたしへの気持ちもそんな程度のもの。それでいいわ。今のままでいい。

 まあとにかく…元気そうで良かった。

 



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