通し狂言 南総里見八犬伝@国立劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

菊五郎/時蔵/菊之助/松緑/彦三郎/坂東亀蔵/萬太郎/左近/梅枝/片岡亀蔵/萬次郎/権十郎/團蔵/楽善/左團次

 

 2015年以来の八犬伝、今年も楽しませていただきました😊  今回も菊之助(犬塚信乃)が輝いていた。特に、2幕ですね。里見家再興を願って名刀村雨丸を献上するため足利成氏館に現れた、若武者姿の菊之助が瑞々しく麗しい。女形の菊之助が好きだ〜と思い続けているけど、若々しい立役は本当に水も滴るナントヤラです✨ ここでは、まず花道で腰元たちと優雅な花軍の立廻りを見せる。

 結局、村雨丸が偽物とすり替えられていたためスパイでは?と怪しまれ、逃げた菊之助は、続く芳流閣で捕手と大立廻り、様式美の連続で魅せてくれます。続いて松緑(犬飼現八)と力強く争う、2人の硬軟の所作も美しい。屋根が手前に向かって傾いている八百屋舞台での立廻りはハラハラするけど、屋根の隅棟?を滑り台にしてスーッと降りる菊之助が可愛かった。なぜか最後の龕灯返しがなかったのが残念でしたが。

 

 ここで菊之助と争った松緑は今回も二役でした。まず小悪党の左母二郎、菊之助と恋人同士の浜路(梅枝)に横恋慕し、連れ去った挙句に殺しちゃう。ドロっとした悪っぽさがとてもいい。そういえば近頃は松緑独特のセリフの癖がなくなってきているような。

 二役目が先に触れた犬飼現八です。菊之助との立ち回りもキリッと決まるけど、何と言ってもその前の場。本郷円塚山で八犬士が出てきてダンマリになるのですが、そのうちの1人、犬江新兵衛が左近なんです。幕が引かれて、花道に出た松緑と左近の父子が刺客たちと立廻りを見せる。これが良かった。親子での華やかな見せ場をこうして作ってくれる菊五郎さん本当に粋だな〜。左近はまだ華奢だけど(この1月で16歳に!)精悍な感じ。花道を引っ込む息子くんを見届けたあと力強い六法で捌ける松緑がまたカッコ良かった。

 

 彦三郎の犬田小文吾は巨漢で相撲が得意というお役らしく、ちょっと太めの作り。朗々と響く声がぴったりです。仲間を送ったあと追っ手との立廻りという見せ場がちらりとあるんだけど、結局捕まっちゃって馬加大記(権十郎)の館では、上半身脱がされた力士っぽい姿で磔にされているのがなんとも〜😆  それを助けるのが時蔵の犬坂毛野です。あでやかな女田楽師に扮し、短剣を手に唐伝来の剣の舞を披露しながら、彦三郎を縛っている縄をこっそり切る。衣装も含めてとっても華やかな時蔵でした。

 

 そして、ここぞ!という時に現れる菊五郎さんの犬山道節の大きなこと。足取りは鈍くなったものの声は艶やかでよく響き、立ったままの所作だけでもラスボス感は健在です👏  また、足利成氏の楽善さんの重く力強い声に一安心。一方、お金で浜路を貰おうとした簸上宮六の團蔵さん、脚腰やセリフが結構おぼつかなくなっていて心配です(←私が観た日に限ります)。

 

 チャリ場は、今年は割とおとなしめ。左母二郎に連れ去られた浜路の行方をドローンで探そうって……木製です😅  そのあと暗転して明かりによる文字遊びでした。このユルさがたまらないですけどね。

 また幕ごとに季節が変わっていて(時の経過は無視😬)、序幕は雪の正月、2幕はちょっと分からなかったけど、3幕は夏の夕暮れ、利根川を挟んで、空には星が瞬き、川辺には蛍が光を散らして飛び交い、この場はとても風情があったなー。そこから真っ赤な紅葉に染まる秋になり、大詰の扇谷定正(左團次)居城奥庭は桜花爛漫の春だった。ここで八剣士が揃い、菊五郎さんが定正を倒して大団円、最後は美しい絵面で終わりました。

 

 スペクタクルですご〜く楽しかったけど、不満がひとつ。前回は最初に(安房)富山山中の場があり、物語の発端(八剣士の霊母となる伏姫とワンコ八房の不思議な関係、伏姫の護身の数珠から8つの玉が飛び散って、体に牡丹の痣があり霊玉を持つ八犬士が生まれた……)部分を芝居で見せたんですよね。ちなみにこの時の伏姫は尾上右近。

 ところが今回はそれがない。開演すると舞台と場内が暗くなり、舞台上から、伏姫、八房、扇谷定正などを描いたパネルが降りてきて、どこからか菊之助のナレーションで発端部分が語られる。もし毎回、舞台裏でこれを語っているのなら、せめて舞台に出て話してほしいけど、どうも録音のように聞こえました。これは興ざめ😔  芝居で見せないから何か味気ないプロローグで、八犬伝というお話の神秘性、怪奇・幻想性があまり感じれなかったです。

 

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