映画「キングスマン:ファースト・エージェント」(2021年) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

監督 マシュー・ヴォーン

レイフ・ファインズ/ハリス・ディキンソン/ジェマ・アタートン/ジャイモン・フンスー/マシュー・グード/リス・エヴァンス/トム・ホランダー

 

 レイフ・ファインズ目当てで観に行きましたが、マシュー・グードがとても重要な役になっていて思わぬご馳走、1粒で2度美味しい気分を味わいました😊  前2作の前日譚ということで、特定の国家に属さない国際諜報機関「キングズマン」の誕生秘話。一応「キングズマン」(2014年)と「キングズマン:ゴールデン・サークル」(2017年)は観ています。

 

 プロットは複雑なので概要のみ(ネタバレ)→第一次世界大戦時のヨーロッパ。「羊飼い」と名乗る謎の男が、ロシアの祈祷僧ラスプーチン(リス・エヴァンス)、民族主義者プリンツィプ、ナチ党支持者の偽預言者ハヌッセン、二重スパイのマタ・ハリなどを集めて闇の組織を結成、各国のトップを翻弄して大戦争を操ろうと暗躍している。イギリス貴族オックスフォード公オーランド(レイフ・ファインズ)は使用人のショーラ(ジャイモン・フンスー)ポリー(ジェマ・アタートン)の協力を得てスパイネットワークを構築し、謎の組織に立ち向かう。最後にオーランドは「羊飼い」の拠点を突き止め潜入。「羊飼い」は陸軍大臣の側近モートン(マシュー・グード)だった。死闘の末モートンは倒れ、史実通り、連合国側勝利のうちに第一次世界大戦は終結。オーランドは高級テイラー「キングズマン」を買い取り、ここを本部としたスパイ組織「キングズマン」を立ち上げる。

 

 第一次世界大戦勃発につながるサラエヴォ事件、ドイツが送ったツィンメルマン電報の解読、陸軍大臣キッチナーの戦死、ボルシェヴィキによるソヴィエト政権樹立ニコライ2世とその家族の銃殺などさまざまな史実を盛り込み、それらは「羊飼い」率いる闇の組織の仕業としたあたり、うまく料理したなという感じ。イギリス王室の名前を敵国ドイツ名ザクセン=コーブルク=ゴータからイギリス名ウィンザーに改めたというセリフをジョージ5世(トム・ホランダー)に言わせるシーンもわざわざ作っていました😬

 

 ちなみに、本作はオーランドたちが世界大戦を止めるために闇の組織に立ち向かう話ではないのね。そもそも「羊飼い/モートン」がやろうとしていることは、ロシアやアメリカの参戦を阻止してイギリスを敗北に導くこと。その計画が成功すると、大戦後の世界は闇の組織に支配されてしまうから、オーランドはその2大国を第一次世界大戦に参戦させるために「羊飼い」たちの陰謀を阻止しようとする話です。

 モートンがイギリスを敗戦に追い込みたいのは、イギリスを壊滅させて貴族社会に打撃を与え、貴族階級を葬り去りたいから。本作はここでイギリス/イングランドが他国に対して行ってきた侵略や搾取などの残虐行為、土地を奪いそこに住む人を苦しめて貴族にのし上がった彼らを暗に非難しています。モートンはスコットランド出身で、彼の祖先もイギリス貴族に土地を奪われ辛酸をなめた被害者だった😢  だからモートンはイングランド貴族に強い遺恨を抱いているのです。イングランドの歴史を知っていると非常に胸が痛む😔

 オーランド自身はそうした自国の歴史を、あれは騎士道精神に反する行為だったと反省し、戦うことが愛国心の表れではないと、十字軍活動に協力する平和主義者。でも愛国心に溢れる息子コンラッド(ハリス・ディキンソン)は、貴族の義務として従軍するんだけど戦死してしまう。その戦闘シーンがねー、特に塹壕戦の描写はリアルに残酷で、私は直視できなかった😖

 

 そんな感じで全体になんとなくシリアスで重いトーンが流れていて、おなじみのアクションやユーモアとのバランスがちょっと微妙ではあった。前半のハイライトはオーランドとラスプーチンとのバトルですね。オーランドはボーア戦争中の捕虜収容所訪問時に太ももを撃たれていて、ラスプーチンはその傷を魔術で治すと言ってファインズのズボンを脱がせ、そこを触りながらなにやら怪しげなことをする際どいシーンが💦

 結局ファインズは、上半身は正装、下半身は下着という間抜け可愛い姿のままラスプーチンと戦うという、笑っていいのか悪いのか……😅  ラスプーチンはピルエットやジャンプを入れたバレエ&コサックダンスのような華麗な動きを見せるけど、あっさり殺されてしまい早々に退場という、何か中途半端に不気味カッコいい役どころでした。

 

 個人的にはレイフ・ファインズとマシュー・グードに尽きますね😍  ファインズは恰幅がやや良くなっているもののスーツ姿が異常に似合い、品格とエレガンスを纏った、まさに貴族の風貌。息子の死によって無気力になったオーランドが再び戦うことを決意するときcup of teaを所望するというベタなセリフも似合います。グードは口髭を生やしていて前半こそ存在を消しているけど、終盤ラスボスとして正体を現したシェイヴドヘッド姿が素敵。ルックスと役柄がちょっと合わない感もあるけど、こういうお役は良いと思うよ。

 そして2人のラスト・バトルに萌えました。あわやオーランド危機一髪となったとき、前半でモートンにより片方の角を切り落とされた山羊が、もう片方の角でモートンを谷へ突き落とす。山羊の復讐による最期というのも皮肉だわ😑

 

 エンドクレジットの途中で、続編を予感させる意味深な映像が流れます。新「羊飼い」となったハヌッセンが、ある人物をレーニンに紹介する。その名はアドルフ・ヒトラー。この2人が握手をするところで終わります。例によってエンドクレジットが始まった途端にさっさと出ていく人が結構いたけど、この映像があることを知ったら地団駄踏んで悔しがるだろうなー🤣  監督によると前作の続編「キングズマン3」を撮ったあと、本作の最後に登場したキャラクターたちで新生キングズマン最初の10年を描く構想があるそうです。

 

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