「アール・デコの貴重書」@庭園美術館 | 明日もシアター日和

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 4月、5月は演劇(いわゆるストレートプレイね)をほとんど観てないんです😢  先月観たのは「アンチポデス」だけ。今月の鑑賞予定も「THE 39 STEPS」1本だけだったのが中止になり(平方元基くん、ゆっくり休養してね〜)、来月まで、観る予定の……というか観たいストプレがなくて寂しい😔

 それで、というわけではないけど「THE 39 STEPS」を観る予定だった日に美術館へ行ってきました。庭園美術館の年に一度の建物公開展。今年は同館所蔵の「アール・デコの貴重書」が展示されました。

 

 庭園美術館は庭園と建物を楽しめる、ちょっと都会のオアシス的雰囲気のあるスポットですね。庭園は日本庭園、西洋庭園、芝庭と3つのエリアから成り、日本庭園には築山や池そして茶室などが、芝庭などの各所には彫刻が配されている。庭園全体は多様な草木や花に包まれていて、季節ごとにさまざまな植物を愛でることができます。かなり広くて、休みながらゆっくり散策したら優に1時間以上かかった💦

 一方、美術館本館は外装も内装もアール・デコ様式で統一された建物(2014年に建てられた新館は別)。ここは旧朝香宮邸……朝香宮ご夫妻が1933年から1947年まで暮らした邸宅です。

 1920年代にパリに滞在されていた朝香宮ご夫妻は、1925年パリで開催されたアール・デコ博(正式には「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」)に幾度も足を運ばれ、特にアンリ・ラパンルネ・ラリックの作品に接して深い関心を持たれたそうです。帰国後、新しい殿舎を建設するにあたってアール・デコ様式にすることを望まれ、主要な内装をラパンに依頼、ラリックはじめ著名なデザイナーにも参加してもらうなどして、1933年に完成。2015年に国の重要文化財に指定されました。

 

 今回のお目当てだった「アール・デコの貴重書」の展示に関しては、正直いうと、もっと装丁や紙面レイアウト中心に鑑賞できる展示品かと思っていたんだけど、そこに焦点を当てたものではなかった😓  同館が所蔵している本のうち、フランス装飾美術に関する書籍雑誌、アール・デコ展に関連した文献資料など、1910〜30年代に刊行された、文字通り「同館にとっての貴重な本」の展示でした。

 

  

/「婦人科学:女性の形態学的解剖学」1918年パリ。典型的なアール・デコ・スタイル。シックな配色、幾何学的構図によるシンメトリーなデザイン、植物の意匠化、直線的タイポグラフィー、そして水盤の水を飲む蛇。良い〜。

/「上品で美しい雑誌」1924〜25年パリ。雑誌の挿絵たち、エレガンスの極みでは?

 

  

/「本の芸術家たち」1928~33年パリ。1冊1人の挿絵画家を紹介するシリーズ本。1冊ずつ変えてある表紙の色のニュアンスがお洒落。

/「近代装飾芸術年間」1924年パリ。少しアール・ヌーヴォー味もあるけど、大胆なデフォルメやレイアウトが新しい感じ。

 

 美術館本館である旧朝香宮邸は、直線が強調されたすっきりした外観と、優しいクリーム色の外壁が上品にマッチした建物で、正面玄関ではルネ・ラリックによる、翼を広げた女性像をモチーフにしたガラスレリーフ扉が出迎えてくれます。室内はどこも意匠を凝らしたアール・デコの世界。直線主体でアクセント的に曲線を組み合わせたデザインは優雅かつ気品があり、植物などをモチーフにデザイン化された装飾が華やかさを添えている。どこを切り取ってもアートになる空間で、存分に堪能しました〜。

 

  

/次室(つぎのま)。内装および白磁の香水塔はラパンのデザイン。モザイクの床、漆黒の柱、ドーム状の天井、窓の外の緑……シック&ゴージャス!

/第一階段から続く壁部分を外側から。アール・デコ特有のジグザグ・ラインと花の意匠との調和が見事。

 

  

/テラスに続くガラスドアのハンドル。デザイン化された花模様と直線ラインとのバランスが絶妙、ハンドル部分の流線型が美しい。

/大客室にあるガラスのドア。銀引きフロスト仕上げのエッチング・ガラスで、花を幾何学的にデザインした装飾がすごく気に入りました。タンパン部分はブロンズによる意匠でこれも好き。