TV視聴 ミラノ・スカラ座バレエ「ラ・バヤデール」(2021年) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付・演出 ルドルフ・ヌレエフ (プティパ原版に基づく)

改訂振付 フロランス・クレール/マニュエル・ルグリ

音楽 ルドヴィク・ミンクス

ニコレッタ・マンニ/ティモフェイ・アンドリヤシェンコ/マリア・セレステ・ローサ

 

 BSプレミアムで観ました。以前にYouTubeで配信もされたそうですが、自分がそれを観たか否か覚えていない。2020年12月にミラノ・スカラ座バレエの芸術監督に就任したルグリが、21/22シーズンの開幕公演として選んだのがこれです。パリ・オペラ座以外でヌレエフ版の上演が許可されたのはこの時が初めてなんだとか。ルグリの改訂振付がどこに入っているのか分からなかったです🙇‍♀️

 ちなみに、1961年キーロフ・バレエがパリ・オペラ座で「ラ・バヤデール」を上演したときソロルを踊ったのがヌレエフで、彼はこの公演の直後に西側に亡命。パリ・オペラ座の芸術監督就任後は多くの作品を創作しましたが、遺作となったのが「ラ・バヤデール」です。エイズの症状が悪化するなか本作に取り組み、その初演の3カ月後に亡くなった🙏

 ヌレエフ版は「影の王国」で終わるため物語としては落ち着きが悪く感じますが、フィナーレとして元々あった結婚式&寺院崩壊の場は、ソ連時代に政治的事情で省かれてしまったのだそうです(後にマカロワが復元させる)。ヌレエフ版が「影の王国」で終わるのは、かつてヌレエフが踊ってきたキーロフ版に倣ったからだと何かで読みました。

 

 本編の感想を簡単に。ニキヤを踊ったニコレッタは、清楚な美しさがますます輝いてきたし、また、随分貫禄がついてきたなあと思った。ニキヤって1幕でナイフを掴んでガムザッティ(ラジャのお嬢様ですよ)に襲いかかったり、婚約式の場でソロルへの思いを訴えたりするところから、熱しやすい感情の持ち主でそれを無理に抑えようとしない、(良い意味で)負けん気の強い女性だと個人的に思っているのですが、ニコレッタはどちらかというと凛としながらも清純な女性に見えるんですよね。寺院前でのソロルとのデュエットは静謐な感じに溢れていて良かったし、2幕での悲劇性をまとった踊りは物悲しさを助長する。「影の王国」でのニコレッタは崇高さと透明感があり、振りも完璧で、とにかく綺麗でした🎉

 

 ソロルを踊ったティモフェイはここ数年の配信映像などでよく目にするようになったなー。2018年にプリンシパルになって以来、色々なダンサーの相手をしてきている。英国ロイヤルバレエのゲスト・アーティストだった時もあるんですよね😊(ロミオを踊った)。彼は容姿麗端麗、体型も綺麗で、ノーブルを体現したようなダンサー。とても正統派っぽいダンスで美しいし、回転系のところでは大きくて華やかさが際立って見えました。

 ソロルって恋人を裏切るという意味ではちょっとアルブレヒトのような、不実な男に思えますが、ラジャにガムザッティを紹介されてから婚約式を迎えたところまでの、彼の心情が、いつもいまいち理解できないんですよね🙄  今回の映像でもティモフェイは、最初にガムザッティに会ったときその美しさにハッとする様子は見せなかったし、気乗りせず悩んでいる風に見えるんだけど、婚約式で像の背中に乗って登場した時は晴れ晴れしい表情をしているし、ガムザッティとのデュエットでは顔を見つめて笑顔を見せるし、そうかと思えば憂い顔になるときもあるし……。どういう役作りなんだろう。2幕までのソロルは何かつかみどころがない感じがします。

 アンサンブルや群舞も良かったです。大僧正のキャラがはっきりしていて面白かった。1幕の寺院のところからニキヤを見る目にネトネトした情欲があふれていましたね😅

 

 舞台美術と衣装デザインはルイザ・スピナテッリで、非常に豪華。特に色彩が素晴らしく、インドにおけるイスラム色の特徴をうまく捉えていると思った。特にあのギラギラテラテラしたファブリックの手触り感、とっても好きです。

 気になったのは2幕でソロルが乗ってくる象さん。私の中では、あれは実際には生きた像の背に乗って登場するのだと思うのですが、なので、もう少し本物に似せて欲しいというか、いかにも子供のおもちゃっぽいデザインだったのが、ラジャの宮廷の雰囲気に合わないように見えた。あと、ラジャの王座に続く階段の手すりの飾りがライオンだったんだけど、インドだったらトラじゃないの?とか、小さいことが気になってしまいました💦

 

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