ロンドン大学 (UCL) 留学メモ

ロンドン大学 (UCL) 留学メモ

ロンドン大学 (University College London) に1年間交換留学する大学生のブログです。

【特報】新型コロナウイルス(COVID-19)をめぐるイギリスの現状

ご無沙汰しております。

今週は、ロンドンの学生生活紹介の続編を書くつもりでした。ただ、もはや普通の学生生活を送れなくなってきています。武漢から世界中に伝播していったCOVID-19今やその流行の中心地はヨーロッパになっています。ということで予定を変更して、新型コロナウイルスの現状をロンドンからお伝えしたいと思います。

イギリスの状況

感染拡大状況

3/15までに確認された統計で1372人が感染、35人がなくなっています。ここ3日間は毎日200人以上のペースで増加しているようです。感染者はイングランドが圧倒的に多く、中でもロンドンは407件の感染が確認されています。

Chart showing the growing number of UK coronavirus cases 15 March

イギリス政府の対応と批判

とても興味深いのがイギリス政府の対応です。イギリスは未だに学校閉鎖、大型イベント中止といった措置を講じていません。(プレミアリーグなどは自主的に中断しています。)大型イベントは今週中にも正式に中止される見通しのようですが、他の国に比べて極めて緩慢な対応であるように見受けられます。その背景には

厳しい行動制限は開始から数カ月間も続く可能性がある。そうすると、「自主隔離疲れ」が生じかねない。つまり、家にこもっているのに疲れた人たちが、感染流行が最高潮に達した時点で、表に出てしまいかねない。

インフルエンザの深刻な流行に対しては、学級閉鎖や休校は有効だ。しかし、新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」はそれに比べると、子供の発症リスクは低いようだ。子供が保菌者となって、親や祖父母にうつす危険は残る。ただし、休校にすれば、国民健康サービス(NHS)がなんとしても必要とするスタッフの多くが、家に残る子供の世話のために欠勤せざるを得なくなる。      

といった背景があるようです。(下の記事から引用)

しかし、この政府の対応には一部から批判が上がっています。特に、管理しながら感染を拡大して国民にCOVID-19への免疫をつけてもらうのも戦略の一貫、という主旨の政府首席科学顧問の発言は猛批判を浴びています。(下の記事にまとまっています。とても分かりやすいのでぜひ読んでみてください!)

ただ一方で、イギリスは極めてメディアのPartisanshipが強い国あることをわすれてはいけません(=公共放送のBBC等を除いてメディアの政治色がとてもはっきりしています。)購読者数が一番多いタブロイド紙のThe Sunなどは政府の対応を異口同音に称える国民の声を報じています

個人的には、ボリス首相は極めてリスクの高い政治判断をしていると思います。他国と違うアプローチをとると、結果や政治責任がより明確に問われます。それを気にせずに本当に正しいと思う措置を講じているならば、正しい政治だといえると思います。ただ政治は結果責任なのでこのアプローチが結果的に間違っていたら、支持を得続けるのは難しく、擁護することも困難です。

政府が今後10-14週間後にピークを迎えるとの予想を発表していることには大きな懸念があります。中国や韓国が2カ月もせずに落ち着いたことを考えれば、なぜ感染拡大をただ遅らせる作戦をとるのかという疑問も生じます。思いきった封鎖や移動制限などでとにかく終息を図るという選択肢もあるでしょう。しかし、長期化をトレードオフにしてまで、医療崩壊を強く警戒しているということなのだと思います。実際にイタリアなどでは医療崩壊に近い状況だともいわれています。この戦略がどう転ぶか、大きな注目に値すると思います。

市民生活の様子

先週末からロンドンの街中もいつもより賑わいがないような気がします。私はカフェでバイトしているのですが(学生生活の続編で紹介しようと思っていました)、先週の金曜日に入ったときもいつもより客の入りが悪かったです。バイト先のカフェでは現在バイトの数を減らして営業しています。

スーパーでもいわゆるpanic buyingが起きています。ハンドソープやトイレットペーパー、缶詰やパスタなど保存がきく食料品が売り切れてしまっている状況です。ヨーロッパではそもそもマスクが売っていないのでマスクの供給多寡状況はわかりません。

f:id:ucl1920:20200316220600j:plain

昨日のスーパーの様子。パスタが完全に売り切れていました。

ただパブなどは先週末も混んでいる様子が見受けられました。パブでの人混みや接触頻度、換気の悪さを考えれば直ちに閉鎖するべきだと思うのですが。。。

留学生活の現状

オンライン授業への移行

UCLは今日からオンライン授業に移行となりました。政府は学校を続ける方針ですが、多くの大学は自主的に閉鎖を決定しています。さらに、5,6月に予定されていた試験も代替手段での実施が決定されています。その詳細はまだ公表されていませんが、一部のクラスでは教材などの参照を許可したオンラインテストが検討されているようです。

https://www.ucl.ac.uk/news/2020/mar/advice-staff-and-students-who-may-have-concerns-about-outbreak-coronavirus

次々と帰国

UCLの学生が次々と帰国・帰郷しています。ヨーロッパでは国境閉鎖が相次いでいます。さらにイギリスも他のヨーロッパの国に続いてアメリカへの渡航が市民を除いて禁止されることになりました。

自分のフラットでも明日までに半分の人が家に帰るようです。1ヶ月前には全く想像すらしていなかった突然の別れです。とても寂しくなります。

帰国して4月から東大に復帰するか

現在、私は帰国をするか検討しています。せっかくここまで留学生活を送ってきたのでできれば最後までロンドンにいたいです。しかし、東京大学は次々と交換留学の中止と帰国を要請をしているようです。イギリスが10-14週間後のピークを想定しており、状況が悪化の一途を辿っていることを鑑みれば帰国は時間の問題かもしれません。今まで受けた授業の単位は認定されるのか、4月以前に帰国したら夏学期から復学できるのか(そもそも東大は4月から授業を始めるのか)、奨学金はどうなるのか等、不安は尽きません。これらの事態は自分ではコントロールできないことです。自分に今できることに集中して過ごしたいと思います。

COVID-19は本当に恐ろしいものです。この事態が一日も早く終息し、平和な日々が訪れることを祈って今週は終わりたいと思います。