magisyaのブログ

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聞き込み調査

「よし聞き込み開始だ!」

(なんだかんだでこういうの楽しいwやっぱりこれひいお爺さんの血なのかな?)

ダダダダダッ まずスタッフに声を掛けてみる。

「虎音の命令よ。持ち物を調べさせて?」

「はあ何でこんな小さい子に……わかりました。私はただの照明担当です。ですから無実も証明して見せます」

成程、ここのスタッフは上手い事を言わなくては気が済まない性格のようだな。

「小さくないでしょ? 何上手い事言ってんのよ? 私より面白い事言うなんて許せないわ! 無理やり犯人にするわよ? あなたが落としたのね?」

「主人公特権のパワハラだー」

「冗談よ! まあそんな事はしないから安心して? それにしても主人公ってなあに?」

「何言ってるんですか? 知りませんよ!」

「ならいいわ」

「そういえば司会さん大変だねー」

「そうね……って何が?」

「先週だったかな? 元奥さんが亡くなったったって門太さん本人から聞いたんだ」

「司会と照明係が話す事なんてあるのね?」

「ここだけの話あの人カツラなんだよ。で、蒸れるから照明の加減を気にしているんだ。その指示の時に話したんだ」

「へえ、まあカツラなのは知ってるよ。一瞬で分かったわ。ところで何でその情報を聞いたの?」

「え? ああ丁度その時門太さん宛にその人の身内からメールが届いたらしいんだよ。それで誰彼構わず話していたんだ。僕もそのタイミングで聞いてしまったって事だよ。その直後だよ? こんな事件が起きて……だから天元奥さんの呪いかな? なんて思っちゃって……それに今は門太さんもあの世でしょ? もしかしたら色々元奥さんにお説教受けているんじゃないかなって」

「へえーあの人バツイチだったんだ」

「そうそう今の嫁さんは女優で芸能人で汚れ芸人の久本正美さんだよ」

「あっ知ってる! なんか急に鳥になりたくなったり、頭がパーンってなりそうな名前よね。ワハハハハ……まあ何も怪しい物は無いか……じゃあね!」

「はい」

他にもスタッフに聞き込むも、特に重要そうなものは見つからなかった様だ。アリサは全員の持ち物を見てみるも、軍手を持っている人間はいなかった。

しかし、スタッフは全員機材を扱う際に手袋をしていた為、容疑者から外す事は難しいかもしれない。

「じゃあ次は選手のみんなね」

ダダダダダッ

控室に戻るアリサ。

「ちょっと持ち物を見せて!」

「おいおい俺達は何も隠してないよ」

「まあまあとりまポケットの中を見せて! 身の潔白になるよ」

「全く……」

「まずは火村さんね……ん? これナイフでしょ?」

「これは缶切りとか色々入ってるから常に持っているんだ。別に調べて貰ってもいいぜ? 司会も血液は出てなかったし、当然ナイフにも血なんか付いてないからな?」

「確かに外傷は無かったって話だし、今回の犯行には使いそうにないわね。信じるわ。で、これは?」

スカウタァの様な物を指差し言う。

「おう、これは相手の戦闘能力が見られる機械だ。と、言ってもアニメの中の話だがな。そういうおもちゃだよ

相方が原作のアニメ。ドラゴンキューブでこう言うおもちゃを販売しようって話で、サンプル品を貰ったんだ」

「そう、まあいいか。すごいね本職の漫画家で漫才師なんて」

「おう! 出来る奴は何でも上手いんだよな。頭が良いからよ。俺も助けられっぱなしだぜ」

「へえ相方さんのサイン欲しいなあ……後は軍手か……これは?」

「これはその……時々暇な時にアシスタントとして手伝ってくれって呼ばれるんだが、俺は軍手を使って漫画を描くんだ。いつ呼ばれてもいいように常に携帯してる」

やけに黒ずんているが元は白い軍手だ。

「そうなんだ。成程インクとか付くのが嫌なんだね? 分かったわもういいわ!」

「おう!」

「次はあずにゃんね」

「大した物は持ってないけど」

ポケットの中からハンカチ、ガラケー、財布などが出て来た。

「特に怪しいのは無し……かな? じゃあ白川さんポケットの中を見せて」 

「めんどくせえなあ」

ガサゴソ

「白川さんこれ何?」

「これはリモコンだ、うっかりポケットに入れたまま来ちまったみてえだ」

「ふーん」

(でもリモコンをポケットに入れる様な事って日常生活であるかしら? 何か怪しいわね……

まあいいか、凶器にはなりそうにないし)

「これはボイスレコーダーね? 何が入ってるの?」

「秘密だ」

「再生してみて? 身の潔白になるから」

「チッ企業秘密なんだが仕方ねえ」

「どういう事よ」

カチッ……すると……

「俺はまだこんなもんじゃ終わらねえ!」

「もう悪い人に捕まるんじゃないぜ?」

「今日から5連休だーやったね!」

「わーこれ可愛い! ねーねー買ってくれないかなー?」

「さあさあお立合いこの賞品今日だけ3割引きだよぉ」

「まだ好きだったのよ? 愛していたの……ゴン」

「俺はもうすぐ店長だ。お先に先輩のバイト君ww」

「え……何よこれ……」

再生するとランダムで、色々なシチュエーションのセリフが流れてくる。男の声は白川が声色を変えているのが分かる。

だが、女の人の声も混ざっている。これは一体何の目的で録音された物なのだろう?

「これはな、俺のネタ作りの道具だ」

「え?」

「つまり、ネタを書く時に、今ランダムで出てきたセリフを入れたネタを必ず作らなくてはいけないというルールなんだ」

「え? ど、どういう事?」

「言ったままの事さ。そのセリフを一つ……例えば10個目に出てきたセリフを使う! とルールに設定したらランダム再生して10番目に出た台詞を使うんだ」

「ま、まさか」

「そう! どんなセリフが出るかは分からない。ここには1000以上のセリフ吹き込んである。

そして閃いたら少しずつその種類も増やしている。始めは適当に思いついた100位のセリフを入れていただけだったからな。

少しずつ増やしていて、セリフが重複しない様に、録音する度に既に入っている台詞をあいうえお順でパソコンで管理している。

女の子の声が混ざっているのは、妹や後輩の子にも手伝って貰っているんだ」

ほほう、これが一度作ったネタを二度と使わないというもののカラクリか。

「で、でもさ、も、もし思い付かなかったら? あ、これは無理wwパスwwじゃあ次行っちゃえーってなるんでしょ? ずるい!」

「は? お前馬鹿か? そんなの甘えだ! 何が何でもそのセリフで思い付く。何日掛かろうがな! そんなの当然だろ? 常識的に考えて! その結果は何よりも重い。例え母さんに

「そのセリフだけは駄目よ」

との命令でもこれだけは従えないんだ。軽々しく変えていい物ではない」

「え? 白川さんってマザコンなの? 意外ねえ」

「ん? 母さんは大事だろ! 馬鹿かこいつ? 死ねよ」

ぬう? 白川よ、それは言い過ぎの様な気もするが……

「生ぎだい!!!」

「でもな、慣れて来ると何にもねえ所から考えるよりかはこれを使った方が思い付きやすいんだぜ? これよ、誰にも言っていなかったんだぜ? ずっと秘密にしていたのによ……相方にも後輩や妹にもだぜ? だけどグレーゾーンの秘密。蓋を開けりゃあ大した事ないだろ?」

「アン、ビリー、バボー信じられない……これがお笑い芸人なのね……そんな事を10年も……!? でも何で今持っているの?」

唖然とするアリサ。

「ん? いつでも思い付いた物を録音するに決まっているだろ?」

「へえ、まあいっか」

「もう隠す事もないから全部教えてやる。それに加えこれを使う」

と言ってポケットから四角い何かを出す。

「これは? さっきも持ってたよね」

「シチュエーションのサイコロさ」

「え? 何?」

「6面それぞれに 異、西、現、歴、原、未と書いたシールが貼ってあったんだ。

そこには異世界、西洋、現代、歴史もの、原始時代、未来と分類していてな、出た目の舞台とさっきのセリフを合わせて考えるのさ。色々な話が出来て面白えぜ? 因みに七瀬様の奇跡の時、そのシールは全てはがしたから、今は普通のサイコロだがな。シールは家に帰れば幾つもあるから別にいいしな」

「すごい!」

「で、最後に気分によっては道具も使用する。このボイスレコーダーにはいくつかプレイリストがあって、2つ目のプレイリストに小道具の名前だけ録音した単語集があるのさ。それをランダム再生して使用する道具が決まる。これは全部俺の声だな。

だから、宇宙モノなのに木刀で戦ったり、戦国時代にファミマコンピューターが出てきたりと色々なシチュエーションが生まれる訳だw聞いてるだけでワクワクしねえか?」

「すごーいすごーい」

飛び跳ね喜ぶアリサ。

「明らかに見る目が変わって気持ち悪いな。後、語彙力が最低ランクまで落ちてるぜ?w」

「そうかな? どんな悪人でもこの可愛い顔で見つめられれば虜になるのに……気持ち悪いなんて初めて言われたわ……」

果たしてそんな事があり得るのだろうか?

「だから同じネタは存在しないって事さ。まあ出来ても滑る事もあるがなwんな事一々気にしてらんねえよ! 滑ったら次! の繰り返しだ! でも前やった台詞とシチュとアイテムがぴったり合っちまって全く同じネタを思い付いちまう事もあるかもしれねえ。奇跡的にな。そうなった可能性はあり得る。

結局は作ってる奴が同じだしなw同じ状況、同じセリフ、同じアイテムが揃っちまえば全く同じネタを作ってしまったかもしれない。流石に10年間やって来たネタ全ては覚えてねえからなwwだから、正式には今まで同じネタを一度もやっていない【かもしれない】と、言い換えた方がいいかもなw」

「は~~凄ーい。そしてすっきりしたわ」

アリサはモヤモヤしていた謎が解け清々しい表情となる。

「良かったじゃねえか」

「でもそれってさあ全部スマホで出来ない? ボイスレコードだってそういうアプリはある筈だしサイコロのアプリもあるでしょう?」

「ああ、で?」

ボイスレコーダーとかサイコロの分、荷物が増えるでしょ? 携帯にまとめた方が荷物も少なくて楽でしょ?」

「それは悪かった。だが、お前は本質を理解出来ていない」

「え?」

「アプリにまとめれば、荷物は減る。それは間違いない。だが、幾つかアプリの入れた携帯は、その分容量が減ってアプリ起動まで少し時間が掛かっちまう。

その為に起動中の他のアプリのタスクキルをしなきゃ駄目なんだよ。

無料だったら尚更だ。一つ画面を移動する度に別のアプリの広告が入る場合もある。それを5秒待ってバツ印を押して消す作業だけでもイラつくよな?」

「うーん、うん分かるわ」

「携帯のカメラを思い出してくれ。

カメラのアプリをタッチし、起動したら倍率を操作してタッチして撮影。これ、意外と撮りたいと思った瞬間に取り出しても、その操作がもたついて、狙った瞬間が撮れない事が多いんだ。

確かに狙った物は撮れる筈。だがそれが動いていたら? 人生のワンシーンに巻き戻し機能は無い。余程操作に慣れていないと間に合わない。

だがデジカメにはそういうのがないだろ? 一度設定すれば、その状態を記憶しているからすぐに撮れる。それは撮影専用で作られているからだ」

「そんなの誤差でしょ?」

「だが、その誤差が命取りになる事があるんだ。思い付いた宝物がふとした瞬間に忘却してしまい、二度と思い出せない事だってある。それを画像に残す事は必要不可欠だろ?」

「でも私なら頭の中に記録できるよ?」

「そうか、それはすごいな。でもそれは形としては残せないな?」

「うん」

「使いたい時にすぐ使えないと撮れる物も撮れずに終わると言う事が起こりえる確率は0ではない。

誰もそのチャンスは守ってくれないんだぜ? 例え確率が数%でも高い方がいいんだ。

芸人ってのはある種芸術家だ。その芸術の創作に少しでも邪魔が入ればモチベが落ち、やる気が削ぎ落ちちまう事もある。

お前もスケッチブックを持ち歩いているが、それはすぐに思いついた物を描ける様にしているんじゃないのか?」

「これは報酬よ」

「は?」

「ある男の子に、私の描いた絵とこれを交換したの。だからそういうつもりで持ってる訳じゃないの」

「ならちょうどいい。覚えておけ! 一瞬の閃き。すぐ何かに書き留めておかなくては忘れてしまう程儚い物だ。

だから常にすぐに描けるように準備しておく事だ。今お前にはそれが出来るんだ」

「うん」

「そして、ボイスレコーダーは、アプリ経由でなくすぐに動いてくれる。それしか出来ないけど、携帯より遥かに早い。毎回確実にずれる事なく同じタイミングで起動し、すぐ思い付いたニューワードを録音できる。

ネタを考える時だってボタン一つですぐに聞く事が出来る。既にこの動きは習慣化されていて、このリズムが少しでもずれると気持ち悪くなってくるんだよな。だからボイスレコーダーじゃなきゃ駄目なんだ。

携帯は何でも出来るが器用貧乏。ボイレコはエキスパート。その違いだ。俺は少しかさばっても専門家を使うね。携帯は電話やメモだけでいい」

「プロの考え方ねえ」

「お前は小学生だったな? 姿は幼稚園児みてえだけどな。その若さで色々知っていて、それをひけらかしたい気持ちは分かる。

が、ただ知っているだけじゃダメなんだ。多分知識だけなんだろ? その頭の良さ、知識量には感心する。

だが、想像だが一度も実物とアプリとを使って比べた事がない。想像だけで話をしている。それをイメージのみで話す力は大したもんだ。

だが、だからこそ、物の本質までは分かっていない。どんな物でも考えるだけで終わるのではなく経験もしろ。何でもまとめようとするものいいけれど、たまには昔の物と言って辟易せずに自身の目で見て、良い所は評価し、他人の評価に流されず自分で選択する。それが、本質を見極める目って言う事だ」

「……わかった。白川さんは白っと」

完全に論破されたアリサ。あっさり容疑者から外す。確かに白川は凄いとは思う。その若さで本質を見極める目を持つ男。だが、それだけで白と決めつけるのはどうなのだろうか?

「じゃあ次は鎌瀬さんね……このお守りは?」

「当然必勝祈願さ、1位を取る為のね」

「へえ、この紙切れは?」

「これは神社で作って貰った護符だよ。金運アップと厄災から身を守る効果があるんだ。

500人の英雄に一度も追いかけられなかったのも、この護符のお陰さ!」

それは護符の力ではない。鎌瀬自身のパッシブスキル【隠遁】の効果だろう。

「いいなあ」

「ふふふwこれは特別製で、君が持っても全く効果がないんだ。

そう、これは僕の誕生日とか血液型から調べ上げ、僕専用に作られたオーダーメイドだ。

こんなに小さい紙だけど、これだけで2万円もしたんだよ」

「プロの芸人の両親の血を継いでると騒いでる割に、それを信じている訳ではなく、最後は神頼みって訳ね。あんたらしいわ」

「何とでも言うがいいさ。僕は用心深いんでね。ところで何か怪しいのはあったかい?」

「そう言えば鎌瀬さんの靴、足音しないやつよね」

「それは僕は若手では人気者なんで、足音を立てないように移動しないとファンに囲まれちゃうんだよ」

何故存在感が無い癖に足音を気にするのだ? 普通に生活していれば全ての人類に気付かれる事がない筈なのに……念には念をって事だろうか?

「じゃあ次は金賀さんか。ポケットの中の物を出して」

「はいよ」

先程のしかみ象の表紙の手帳や糸電話などが出て来る。

「紙コップ? それに糸が付いているわ」

「これで俺は連絡するんだw」

「まさかー」

「まあこれさ俺のネタの中で使う小道具なんだ」

「へえ……とくにめぼしいのは無いわねえ。じゃあ終わりにしようかしら?」

「お? 俺達の疑いは晴れた様だな。まあ勝手に落ちたんだろ。停電で急に視界が断たれたもんな」

「そう……かもね」

と言いつつもアリサは舞台上で暗闇の中うっすらではあるが司会者に向かって歩く人物を見たような気がしたのだ。

気のせいと言われればそうと言うしかない程曖昧であるが。

そして、その人物らしき物は何もしていない様に見えたのだ。そう、ただ近づいただけで、一切押したり殴ったりという動きは見えなかったのだ。

と、いう事は一体どうやって? それとも本当にただの転落なのだろうか?

「おーい虎ちゃん」

「アリサ、早いガルね何かあった?」

「特に目立つ物は無かったわ」

「そうガルか、じゃあ転落死ガルかもね。じゃあ控室で休んでいていいガル……」

「どうしたの?」

言葉尻がすぼんでいくような話し方に、違和感を覚えたアリサ。虎音に質問する。

「実は被害者のジャケット。軍手の跡すらなかったガル」

「え? それが普通じゃない?」

「あのジャケットの素材。つるつるしていて、表面に僅かな粘着性があるガル。もしも軍手を着けた犯人が押したとしたら糸屑が付着する位ガル。それが全く無いんだガル。ちょっとおかしいと思っちゃったんだガル」

「ふーん。まあ天才虎音さんが正しい検死をしてくれるよ」

「頑張ってみるガル」

「じゃあ戻るガルね……あらやだ伝染っちゃったガルw」

「お疲れガル」

「はいっ!!」

控室に戻って行く

 

私の書いている小説です

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