第172回芥川賞・直木賞の受賞者の会見コメント及びインタビューです。
まずは芥川賞はこちら。
【芥川賞】DTOPIA:安堂ホセ
インタビュー
―――安堂さんはデビュー作からずっと芥川賞候補になっていた。そのことについて。
安堂さん:
友達にたまに「もう芥川賞をとった人の顔をしているからよくないよ」と言われ、気を付けていました。
―――恋愛リアリティショーを観て書かれたのですか?かなり今を反映させた作品だと思うんですけど。
安堂さん:
全然観ないんですよ。小説って書くのに半年、1年かかる。さらに刊行すのにも時間がかかる。今すぎるものを入れると古臭くなっちゃうみたいな。今回は失敗してもいいから、今のこととか、ちょっと先のことを書いていくっていうのをやってみたくて、編集の人に「在庫処分セール」と言っていた。書けなくなってもいい....みたいな。でも、書けないはずはない。生きていれば新しいことはどんどん入ってくる。空っぽになっても大丈夫と信じて全部詰め込んでみた。
内容
著者について
1994年、東京都生まれ。『ジャクソンひとり』で第59回文藝賞を受賞しデビュー、同作で第168回芥川賞候補。――Amazonより
【芥川賞】ゲーテはすべてを言った:鈴木結生
インタビュー
―――本作のアイデアはあるきっかけがあったとか?
鈴木さん:
こういう本当のティーバッグがあたったことがありまして、それが今回の作品の発端。それを自分の中で寝かしていたものが作品になった。
―――私はゲーテに関しては全くの素人。これをきっかけに知りたい気持ちが生まれた。
鈴木さん:
嬉しいです。僕は自分が面白いと思うことしか書かなかった。純文学として成立させるためには、悲しみとか不条理とかを描かないといけないということはもちろんあるとは思うんですけど、少なくとも芥川賞を受賞したということは、選考員の方たちの幾人かは、好きと言ってくれたと思っている。それがとても嬉しい。
内容
著者について
福岡県立修猷館高等学校卒業。 西南学院大学在学中の2024年、「人にはどれほどの本がいるか」で第10回林芙美子文学賞佳作を受賞してデビュー。
続いて、直木賞受賞の伊与原さんのインタビュー。
【直木賞】藍を継ぐ海:伊与原新
インタビュー
伊与原さん:
もともと僕自身が地磁気の研究をしていまして。
―――ウミガメの生態がこんなにも神秘的だとは驚きでした。人に話したくなるようなものごとがたくさん入っているなって思いました。
伊与原さん:
ためになるっていうのが、僕は最強のエンタメだと思っている。ただ面白だけではなくて、何か一つ新しい世界の扉が開けるみたいな、そういうものが好きなので。
なぜ卵を盗んだのか?という彼女の気持ちを考えていく中で、実は漁村に閉じ込められているようでいて、ちゃんと大きな広い世界につながっている。
内容
数百年先に帰ってくるかもしれない。懐かしい、この浜辺に―ー。
徳島の海辺の小さな町で、なんとかウミガメの卵を孵化させ、自分ひとりの力で育てようとする、祖父と二人暮らしの中学生の女の子。年老いた父親のために隕石を拾った場所を偽ろうとする北海道の身重の女性。山口の見島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男。長崎の空き家で、膨大な量の謎の岩石やガラス製品を発見した若手公務員。都会から逃れ移住した奈良の山奥で、ニホンオオカミに「出会った」ウェブデザイナーの女性ーー。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。『宙わたる教室』『月まで三キロ』『八月の銀の雪』の著者による、心揺さぶられる全五篇。―Amazonより
著者について
1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。他の著書に『八月の銀の雪』『オオルリ流星群』『宙(そら)わたる教室』(新潮社・著者プロフィールより)
感想
受賞されたみなさん、やはりそれぞれの想いがしっかり賞につながったのだなぁと感じます。特に安堂さんの作品を書くにあたっての思い切りと、「空っぽになっても大丈夫」と自分を信じたというのは印象的。鈴木さんは大学院生だし、伊与原さんは学者をしていたとか、みなさん、色々得意分野もお持ちですごいなぁと。ということで、本当におめでとうございます。今後もますますのご活躍を期待してます!