【ルドルフとノラねこブッチー】教養のある猫、ルドルフの冒険、その5。ルドルフとブッチー旅に出る。【ルドルフとイッパイアッテナⅤ】【小学校中学年以上】

2024年4月6日

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ルドルフとノラねこブッチー ルドルフとイッパイアッテナⅤ  斉藤洋/作 杉浦範茂/絵 講談社

年の瀬もせまったある日、ブッチーが文字を習おうかなと言いだした。どうやらもとの飼い主金物屋が近所に出没しているらしい。ブッチーは金物屋を探しに旅に出るつもりだ。当然、ルドルフも……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ 電車に乗る猫☆☆☆☆☆ 熱い友情☆☆☆☆☆

ルドルフとノラねこブッチー ルドルフとイッパイアッテナⅤ  斉藤洋/作 杉浦範茂/絵 講談社

<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

<杉浦範茂>
1931年、愛知県生まれ。東京芸術大学美術学部卒。グラフィック・デザインと児童図書のイラストレーションで活躍。1979年、「ふるやのもり」(フレーベル館)で小学館絵画商。1983年、「まつげの海のひこうせん」(偕成社)で絵本にっぽん大賞、ボローニア国際児童図書展グラフィック賞を受賞。1985年には芸術船奨文部大臣新人賞を受賞。

 字が読める「教養のある」黒ねこ、ルドルフの冒険を描いた「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズ5巻目。初版は2020年です。このシリーズは、ルドルフが猫の手でそこらんの紙に書いたものを、斉藤先生が清書した、と言う設定になっています。最初はチラシの裏などに書かれた物語だったが、最近は日野さんの家のコピー用紙を使い、だんだん字が上手になっていってるそうです。

 基本的に一話完結で、どこから読んでもわかるように書かれていますが、大きな流れがあるので、第1巻「ルドルフとイッパイアッテナ」から順番にお読みになったほうがいいでしょう。

 「ルドルフとイッパイアッテナ」のレビューはこちら

 今回のお話は……

 もともと金物屋さんの飼い猫だったブッチーは、金物屋さんが茨城に引っ越して行くときについていかず、野良猫になることを選びました。

 ところが、最近、その金物屋さんの目撃情報が。
 昔、店があったところにできた中華料理店に時々出入りしているらしい……

 ブッチーは、金物屋さんに会いに茨城に行く決心をします。
 しかし、金物屋さんが茨城のどこにいるのか、本名は何なのか、それからブッチーは知りません。

 ルドルフたちは力を合わせて大調査を開始します……

 ……と、いうのがあらすじ。

 イッパイアッテナは、飼い主の日野さんの都合で野良猫になり、ルドルフは偶然の重なりで野良猫になってしまいました。しかし、ブッチーは飼い主が引っ越すときに、自分の判断で野良猫になった猫でした。

 そんなブッチーでも、飼い主のことが気になります。
 それで、ブッチーはルドルフから文字を習おうと決意します。飼い主を探しに旅に出るためには、字を読めないといけないと思ったのです。

 イッパイアッテナに字を教えたのは飼い主の日野さんでした。ブッチーは飼い主を探すと言う目標のために字をおぼえようと決心しました。
 学習のきっかけとして、「親が教えるから」「目的があるから」は、理解しやすい理由です。

 それを考えると、単なる好奇心でどんどん字をおぼえていったルドルフは、ちょっと変わっています。
 物語ではそのあたりのことを深くは掘り下げていませんが、ルドルフが「悪魔のように知恵が回る」などと仲間の猫に言われてしまったり、たった一匹で東京から岐阜へ行って戻ってこれたりするのは、ルドルフの好奇心の強さによるものかもしれません。

 正義感と好奇心が強い人はたいてい世話焼きでおせっかいです。ルドルフとイッパイアッテナは、今回、ブッチーの問題に熱い友情で関わります。

 かつては家の周囲から離れることもなかった飼い猫のブッチーですが、野良猫になり行動範囲も広がり、そして今回はローマ字が読めるまでになりました。
 そのうえ、今回は電車にのってはるばる旅をします。

 金物屋さんの行方を知るまでは謎解きのようで楽しく、金物屋さんのところへ会いに行くまでは冒険物の展開でわくわくします。

 猫たちは好奇心旺盛でなんでも面白がり、義理人情に厚く、勇気もある。そして、飼い主を愛している。
 猫のいいところが余すところ無く描かれており、猫好きさんはより楽しめるはず。

 たいていの猫は自分の環境を自分で選ぶことが出来ません。昔はもっと猫は自由な生き物だったのですが、今は生まれた場所や飼い主の状況に左右されてしまいます。

 イッパイアッテナもブッチーも、飼い主の経済状況に振り回された結果の野良猫生活なのに、どちらも飼い主が大好き。イッパイアッテナなんて、偶然日野さんに再会できたからいいものの、本来は海を越えてアメリカまで探しに行こうと思っていたのですから一途です。

 遠い外国にまでわたって、広い広いアメリカでたった一人の人間を捜し当てるなど人間でも難しいのに「なんとかなる」と思っていたイッパイアッテナ。
 ところが、ブッチーのために飼い主の行方を捜す知恵を授けているイッパイアッテナの様子を読んでいると、もしかしたら本当になんとかしてしまったかもしれないとも思えてきます。

 この猫たち、不可能を可能にする力が強い。強すぎる……!

 わたしも含めて、人間はとかく絶望しがちですが、ここまで不可能に挑戦する猫たちのすがたを読んでいると、人としてもうちょっとがんばろうという気になってきます。

 そして、この猫たちはそれだけの努力と工夫をしているんですよね。おそらく、楽しみながら。

 文章は猫の一人称なので読みやすく、ほとんどの漢字には振り仮名が振ってあります。
 小学校中学年以上となっていますが、読み聞かせなら低学年から。ほのぼのとして可愛らしい内容なのに、哲学的なことも語られており、人生訓のようなところもあります。

 ルドルフが「ことわざ辞典」を愛読しているので、猫たちが時々、渋いことわざを使うのも面白さのひとつ。

 ちょうど年末年始の設定なので、今、読むのがおすすめです。
 寒さの厳しい今年の冬、おうち時間にぜひどうぞ!

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。ねこたちが時々、任侠っぽいしゃべり方をしますが、すぐにくだけてしまうので、基本的にはほのぼのとした雰囲気です。
 ルドルフたちが気に入ってことわざを使うようになるので、知育要素もあります。

 ほのぼのとした楽しいお話の中に自分を掘り下げる哲学的な要素もあるので、むしろ、HSPやHSCのほうが多くのことを受け取れるでしょう。

 読後は「ほうとう」が食べたくなると思います。夕食にいかがでしょう。

 

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