江のブログ

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山本太郎さんの「消費税廃止論」に感じる違和感とおかしいと思う点

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 れいわ新撰組の山本太郎さん。昔は原発反対一点張りのイメージでしたが,反原発の世論の後押しもあってかいつも間に政治家としての立ち位置を確保し,最近熱心に訴えているのは消費税廃止論(消費税10%をゼロ化)のようです。

 山本太郎さんの世論受けする消費税廃止論の存在は前々から知っていて,いかがなものかと思ってましたが,実際に中身を聞くまでは結論を出してもはいけないな,と思っていました。ですが,今回の選挙を折に実際話を聞いてみて,「消費税廃止論」というのは,現役世代の所得税の大増税を招く一方で高齢者からの税収は減り,ただでさえ不平等な世代間の格差を拡張する結果になると思ったので,備忘録的に考えをまとめてみました。

 

山本太郎さんの消費税廃止論

 まず前提として,消費税は「全ての世代からお金使った分だけ公平に税を徴収する」という目的で導入されたこと,そのためこれまでの所得税を下げて,消費税を増やすという方針で税制が改正されてきた,という歴史があります。

 これは,相対的に年金などの社会保障を若者より多く受けられる高齢者が,所得税については場合は全く払わなくて済むのに対して,消費税の場合は出費に応じて払うことになるので,少なくとも消費税は世代間の不公平を解消する機能があることは分かると思います。

 

消費税廃止論は,非常に単純で「現在10%の消費税をゼロにする。税収が減った分は,大企業や高所得者からの,それぞれ法人税,所得税を増税して賄う」というものです。低中所得者の人たちからすると,消費税が撤廃されて年収が実質10%増えるのに加えて,税収減は高所得者が賄ってくれので,自分達には得しかないから「賛成」となります。

消費税廃止論のおかしな点

 令和2年の日本の税収を調べるとトータル53.2兆の内訳は,消費税収が21.7兆,法人税が12兆,所得税収が19.5兆なっています。つまり,消費税収(21.7兆)とそれ以外(12+19.5=31.5兆)でだいたい2:3となっています。

 ここで消費税を廃止すると,全体の税収の約40%(2/5)を占める消費税をゼロにする訳なので,税収は53.2兆から31.5兆に減り(割合では約3/5),これをカバーするには,法人税あるいは所得税の大増税が必要となりそうなことが分かります。

 

 ここで所得税に焦点を当てたときに,所得税収は現在の19.5から32兆(5/3≒1.7倍)くらいにふやしたいところですが,所得増税の対象は果たして高所得者だけで済むかという話です。

消費税を無くすと低中所得者の所得税増は不可避

 現在,日本では年収1千万以上は,全体の5%しかいません。従って年収1千万を高所得者とするなら,全体の5%しかいない高所得者に限定して増税してもその効果は限定的です。逆に,高所得者だけでカバーしようものなら,今の10倍以上の所得税が必要となり,可処分所得の大逆転が起きてめちゃくちゃなことになります。

 つまり,消費税ゼロによる税収減をカバーしようとすると,高所得者からの増税だけでは現実的に不可能で,ボリュームゾーンの年収300~500万低中所得者に渡るまで広く大増税をしないと,当然同じ税収は確保できません。

 つまり,消費税をゼロにしてしまうと,所得300~500万の低中所得の人たちも,大増税の対象となります。

山本太郎さんのテレビ討論での詭弁~中低所得者の増税は経済が戻ってから…

 先日の衆院選の選挙特番で,山本太郎と橋本徹とのバトルで思わず笑ってしまったのは,この点を指摘され

 

「現在の経済状況では増税などできる訳がない。まずは経済を底上げして所得300~400万の人たちをなくしてからだ

 

という趣旨のことを答えていました。

 

この回答で酷いと思うのは3点です。

1点目は,そこまでして消費税ゼロ化の裏でやらざるを得ない「低中所得者への大増税」を表に出したくないのか・・・という呆れです。そこを認めるところから,税収の内訳をどうするか?の議論がスタートすると思うのですが・・・(ちなみに日本も世界的も歴史的に所得税減税→消費増税の流れがあり,日本は先進国の中だと今でも所得税,法人税は高い方です。)これすら認めないとは本当に「詐欺的」だと思いました。

 

2点目は,そもそも中所得者の年収を底上げして仮に300~400万を500~600万にできたとして,低中所得者を対象に大増税することに変わりはないということ。なので,低中所得者を対象に大増税する,という事実に変わりはありません。

 

3点目は,そもそも中所得者の年収300~400万を500~600万にするような魔法のような経済政策があるのか?ということです。所得がそんな簡単に上がるなら,どこから税を取るのが最適か,消費税と所得,法人税の割合をどうするか?なんて議論がそもそも重要でなくなってきます。そんなことができるなら同じ手口でさらに700~800万まであげて欲しいものです。

 つまり実際には,国民の所得は簡単にはあがりません。しかし,「消費税はゼロにする,ただし低中所得者の所得税は上げない,低中所得者の年収が100~200万あがってからだ」というのは,いつ来るのかも分からない年収大幅アップのタイミングまで税収を激減させ続けます」といっているのと同じです。こんなことしたら,必須の社会保障や防衛費にもお金が回らなくなり,国がめちゃくちゃになるはいうまでもないです。

 以上のように見ていくと,「消費税廃止論」というのは,現役世代の所得税の大増税を招く一方で,高齢者からの税収は減り,ただでさえ不平等な世代間の格差を拡張する結果しか生まないと言えます。

まとめ

 今回は最近話題になっている「消費税廃止論」について備忘録的に考えてみました。いろいろな考え方があるのだとは思いますが,個人的には都合の良い側面だけを見せて権威(高所得者,大企業)を叩いて正義を振りかざしているかのように見せるだけの主張のように見えてなりません。