舞台稽古が始まる。

 

時刻は、深夜

鶏小屋の窓は全て閉っている。

鶏小屋の前で観客を背にして、狐が狐の外套を着て大きなアフロの赤いかつらを被って座っている。

小さな椅子に腰かけ、セロを弾いている。

主人である雄鶏がそれに気づいて、鶏小屋の窓を開けて狐を罵倒している。「おい!お前! 赤毛!泥棒!この野郎!ビッコ!ここから出ていけ!」と雄鶏は、狐に散々と罵倒するが、狐はセロを弾いている。

 

そこへ私の役である金髪が起きて、鶏小屋の窓を開け。「何わめいているの?」と言うと雄鶏が怒って、「じゃ君はどうして寝ないんだ」と金髪に言う。金髪は、雄鶏の言葉で怒りながら、「じゃあ聞きますがこんなに騒々しいのにどうやって眠れって言うの?」

 

雄鶏は、「ぼくがわめいたって?ぼくが?わめいているのはこのやくざペテン師の、ごろつき野郎だよ。」

雄鶏と金髪は、言い合いになる。(少々、長台詞の掛け合いになる)

 

金髪は、「ピ‐ピーピーピー一日中、騒ぎまわってしるんだから。夜は休むものなのよ!窓を閉めてベットに入りなさい。今すぐに!」

 

それに答える雄鶏は「ぼくは公共の静けさのために闘うよ!」とのたまうのである。

 

この雄鶏と金髪のやり取りでは、私とケンちゃんは上手く芝居ができないのである。台詞のキャッチボールができないのだ。

 

ケンちゃんのペースがいくらかズレているのだ。

完全にケンちゃんの失態である。台詞も十分に入っていないケンちゃんなので、何度も演出家からダメ出しが出てしまうのだ。

この芝居の冒頭部分のやり直しは、完全に私はケンちゃんを毛嫌いしてしまうことになる。

 

私は、ケンちゃんはなんで台詞が入っていないの!おまけに二人の台詞のタイミングが合わない!ケンちゃんって、アパートに行ったときはギターも弾けるし、顔もそれなりにイケメンだったから、素敵だな~と思っていたけれど、現実とは大違いだ。もう一人のホテルで働く中年男性は、芝居は始めてだというが、なかなか上手いし台詞も入っているのだ。