レンタルバイク立ちごけの足の凹みの痛みは、ほぼ1年後に癒え、同時にバイクへの不安感も消えた。
私は懲りることなく、買うあてもないのに、何となく中古バイク探しを始めた。
大抵の夢や希望は、何気ないささやかな行動から始まる。
あてがなくとも、一歩踏み出した時から実現への道は既に始まっている。
という、啓蒙本などにありがちな話は、まんざら嘘ではない。
あても無いのになんとなくバイク探し

資金ゼロ。
何時という目標も、計画も無し。
しかし、薄給で生活をしている自分には、資金を貯めている隙もない。
バイクに乗る肉体的精神的可能性は、日に日に衰えていくばかり。
還暦を既にいくつか過ぎ、10年後、5年後、来年の自分がどうなっているかすらわからない。
焦りを感じる。
いまこの時を逃したら、もう2度とバイクに乗る可能性など無いだろう。
そして思う、何となく生きた末、死を目の前にした時に、ぜったい後悔するだろう。
いや、1年なら待っても大丈夫か?
せめて頭金くらい用意しないと現実的ではない。10万円くらい貯められるだろう。
それに何より、某占い師によると大ラッキー年が始まるのは来年、そこから3年間が幸運期だそうだから、チャンスは今ではないのかもしれない。
実は、2024年の低所得世帯10万円給付金というのを、すっかり当てにしていた。10万円が入ったら、中古を買うつもりでネットで探していた。
もう待てない。桜の時期も迫っている。
1年後、幸運期が始まった頃には、準備万端で走り回れるようになっていたい。そう思った。
候補は4つに絞られた。いずれも生産が終了しているから、当然中古だ。
値段が高いのもあるが、新車の中には惹かれるバイクが見つからなかった。
候補1.YAMAHA SR400

一番心が惹かれたのは、見た目も性能も評判も良いYAMAHA SR400。
しかし、プレミアがついたのか、新車の時より価格が高い。
言ってしまえばバカバカしい価格帯になっている。
そして何より、レンタルセローでコケた自分には、乗りこなせる自信が無かった。また、車検等々の諸費用も払える気がしなかった。
なので、却下。
候補2.YAMAHAセロー250

YAMAHAセロー250中古。
レンタルして3回乗ったこと、過去に乗っていたことで、馴染みが深い。
評判もすこぶる良い。チョイ乗りからロングツーリングまで卒無くこなす。一番現実的な選択だ。
しかし、人気車の中古は、やっぱり高い。そして、何かがなんとなく違う。
候補3.KAWASAKI 250TR

KAWASAKI 250TR中古。
ネットで見つけた時には、衝撃を覚えた。
なぜ、このバイクがヒットしている頃に出会わなかったのか。とにかく見た目に惹かれた。
バイク女子になった頃、オンロードを目標にしながらもオフロードしか乗らなかった自分に、どちらの要素ももっている250TRは違和感なく受け入れられた。
ちょうどいい、そう思えた。
しかし、安くはない。そしてどことなく、安っぽい?
自分には若すぎる?
候補4.KAWASAKIのエストレヤ、SUZUKIのST250

サブ候補として、古き良き時代を思わせてくれる2台。
KAWASAKIのエストレヤ、SUZUKIのST250。
この2台も捨てきれない。
価格だけで考えれば、スズキが最強だ。
見た目にも引けを取らない。
だけど、何かがなんだか、しっくりこない。
道は険しく遠い

給付金はダメだった。ほんのわずかだけ、支給対象から外れる所得だった。
何の努力もしていないが、絶望感に襲われた。
ちなみに、絶望とは、できうる限りの努力をした人間にしか当てはまらないらしい。
しかし、運の前倒しか、SNSで嘆きの投稿を繰り返すうちに、ひょんなことから副収入の話が飛び込んできた。
中古バイク購入の頭金、そして諸費用、もしかしたら初ツーリングする費用も残りそうな、十分な金額だった。
困難が次々と

時を同じくして、再びバイクに乗るには1人では無理だという考えに囚われていた。
なによりも、肝心なバイク置き場が無いではないか。
中古を買ったとして、自力でたった一人で乗り始めることができるのか?公道のルールさえ覚えていない自分に、ツーリングなど行けるのか?
レンタルで3回ツーリングしても、まったく自信がもてなかった。また立ちごけしたら、起こせる自信も全くない。
きっと、バイク仲間がいたほうがいいに違いない。できればガレージも貸してもらえるとすべてがうまくいく。
中古バイクを買うなら、実車を必ず見てからにしなさい、SNSを通じてそういうアドバイスをいただいた。
自分もそう思った。だから、中古バイク探しをネットだけでなく、地元のバイク店へ足を運ぶことに切り替えた。
しかし、またひとつ問題があった。バイク店は遠い。しかも公共交通機関で簡単に行ける場所ではない。
もちろん、街中にもバイクショップはいくつかあって、中古を展示している店もある。そういう店から自転車で行ってみることにした。
圧倒的に中古バイクの台数が少ない。私が欲しいタイプのバイクは、ほぼ見つからなかった。
そういう店でも、欲しいバイクがあったら取り寄せますよ!とホームページには案内されている。
しかし、例えば250TRなんて言うと、いい顔をされたためしがない。
諦めたときが、終わりのとき

個人のバイクショップでは、正直な言葉を聞けた。
儲けが無いんですよね、中古は手がかかるばかりで。
中古はすぐ壊れるし、新車よりかえってお金もかかりますよ。
それに、取り寄せたらほぼ購入決定となり、キャンセルすると取り寄せの費用が発生しますよ。
と、大手地元ショップのお姉さんが電話の向こうで言った。
自転車で行ける範囲のバイクショップでは、もう無理だと感じた。
これはもう、自分一人では先に進めない、そう思ってしまった。
と、こんなどこにでもある、当たり前の困難を乗り越えて、結果的には目出度くバイクに乗ることになるのだが。
バイク探しには、ちょっとしたアホな話があって、それはまた次の機会に。
併せてよみたい