例年のゴールデンウイークは4月早々から始まる「関東雨季」が中休みとなって晴れることが多い。だが今年は休みなく延々と雨と曇りの日々が続いた。
4月25日は雲まじりの怪しい晴れ間がのぞいた。用があって実家のある茨城県坂東市に深夜に行き、町はずれの畑作農地に観測機材を設置した。空から雲は消えていたが辺り一面濃霧に閉ざされている。都心から50キロ離れた田舎町でも関東中央に位置するためにそれなりに光害がひどい。まして霧のために視界が100メートルもない中で、それでも天頂付近にはベガが瞬き、かろうじて北極星もどうにか視認できる。
しばらくすると霧が少し晴れてきた。南東のC/2017K2パンスターズ彗星と北斗のひしゃく近くを移動するC/2020V2(ZDF)彗星を短い露出で撮影した(画像上左)。ほぼこれだけが霧にむせぶ夜の釣果だった。
5月4日未明は連休中で唯一の晴天夜だった。九十九里海岸には遥か東方沖の低気圧の荒波が音を立てて打ち寄せていた。海をわたる南風がいつになく湿っぽい。夏の天の川が天頂から南の水平線にかけて音もなく流れ落ちている。
本州のほぼ東端にある海岸は午前3時前にはもう薄明が始まる。時間に背を押されるようにまず前回と同じ南東と北の空にある二つの彗星から撮影を始める。特にC/2020V2(ZDF)彗星は13等と暗く小さく、その姿を捉える限界に近かった(画像上右)。さらにスケジュールに従って東天の空域を撮影してしばらく経ったところで急に星の写りが悪くなった。あたりに淡い靄が出ているが空に雲はない。もしやと思って15㎝反射望遠鏡の筒の底をライト照らしてみると主鏡全面が白く結露していた。筒先にある斜鏡も結露している。潮まじりの生暖かい波風を受けて金属やレンズ、カメラなどの冷えた部分には隙間なく結露している。霜取りヒーターの準備をする間もなく薄明が迫ってきた。貴重な晴れ間を夜露の急襲に奪われた一夜だった。
5月3日、よく晴れた昼間の太陽に巨大なプロミネンスが二つも立ち上がっていた(下画像)。太陽がいよいよ第25活動周期の渦中に入ろうとしていることが実感できる。