【第二章 スライム街へ】第二十話 序盤

 

”ライ!状況を常に報告して”

『はい!』

 ライにお願いをして、私たちは天子湖のキャンプ場に向かう。

 向かっている最中も、外周部から攻めている者たちの状況が報告されてくる。
 先行していた、フィズとナップが結界の中に入って、魔物たちへの牽制を始める。少しでも、私たちの負担を減らそうとしてくれているのだろう。

”フィズ!魔物よりも、人の牽制をお願い。制服を来ている人と、スキルを持つ人には注意して!結界の内側から牽制をお願い”

 フィズとナップから了承と返事が来る。
 ライとのリンクで、制服を来ている者には注意するように伝達している。スキルへの対処は、何度も経験しているから、皆に共有している。でも、警官や自衛隊が持っている銃火器に対する対応はできていない。
 結界が、銃撃では破壊できなかった。ただ、自衛隊が本気になったら、結界が破られてしまう(かもしれない)。
 だから、警官や消防官や自衛官は、結界に近づいて欲しくない。魔物との戦闘に集中したい。

”カーディナル!急降下!”

 結界の上部から、目的地になって場所に、私とライが降り立つ。
 人の姿だ。武器を持っている。

 背格好だけでは、私たちと判別されない(と、期待している)。暗くしたのには、私たちを見られたくなかった。特に、マスコミにはいい印象がない。

 さて、やろう!

”ライ。左側をお願い”

『はい。アドニスと殲滅に入ります』

 最初の集団に目標を絞る。ゴブリンの上位種の色違いがまずはターゲットだ。
 魔物たちも、私たちの侵入に怒り心頭だ。

 やはり、指揮している個体が存在している。攻撃が、集団ごとに連携をしている。

”ライ!”

『はい。指揮をしている個体を狙います』

”お願い!”

 外周部からの攻撃も始まっている。

 外側からは、テネシーとクーラー。ピコンとグレナデンが、攻撃を開始している。スキルを使っての攻撃だ。

 倒した魔物から、魔石を抜き取っているのは、ナップやパルの眷属が行っている。闇に紛れて、拠点にしている場所に運んでいる。状況は、ライが整理している。ログのように、私にも流れ込んでくる。

 安全マージンを十分にとっての戦いだ。
 まだ序盤だけど、大きな問題は出ていない。

 このまま押し切れるとは思っていないけど、ゴブリンの上位種くらいまでなら問題はなさそうだ。

 オークの上位種が動き出す前に、ゴブリンとゴブリンの上位種だけは殲滅しておきたい。
 魔力には余裕がある。数値で表示されないから、不安ではあるけど、今までの戦闘経験から、感覚で判断している。

 だから、ゴブリンやゴブリンの上位種には、身体を強化しながら、武器だけで戦っている。

 上位種の色違いには注意が必要だ。
 連携されると少しだけ厄介だ。

 こちらも、連携をしなければ対応が難しい。

”カーディナル!”

 信頼できる。仲間に声をかける。
 上空から、”色違い”の武器を持っている方の肩を狙う。タイミングを見計らって、私は反対側に回り込む。

 上位種の色違いは、攻撃もだが耐久が段違いに違う。そのために、まずは攻撃方法を奪う。スキルだけなら、上位種とそれほど違いはない。ゴブリンは火系のスキルを使ってくる。オークは土系だ。オーガは、火系だ。

 腕を切られた”色違い”が絶叫を上げる。
 周辺にいるゴブリンや上位種が、私に殺到する。人の姿から、スライムに戻って、カーディナルに飛び乗る。上空に逃げる。

 スキルが飛んでくるが、カーディナルに施している結界を破れるほどではない。上空から、カーディナルがスキルを発動する。火のスキルに相対するのは水だが、カーディナルは水のスキルは使えない。私は使えるけど、スライムの形態で使うと、威力が強すぎるために封印中だ。
 カーディナルが使うのは、風のスキルだ。

 敵対している魔物たちに風のスキルでダメージを与える。

”降下!”

 カーディナルに短い指示をだす。
 色違いを倒してしまおう。

 カーディナルは、私の意図した通りに、色違いの正面に降下する。私は、カーディナルから飛び降りて、人の姿に変わって、武器を構える。
 後ろからの奇襲だ。序盤では、私のスキルは温存しておきたい。魔物もある程度の集団になっていると、学習をして、対応に変化が現れる。手札は、隠しておいた方がいい。

 色違いの足を切ってから、首に剣を突きさす。すぐに、絶命するわけではないが、ここまでダメージを与えれば、あとはアイズやドーンやジャックでも対応ができる。ナップやパルの眷属も居るので、魔石を取り出すこともできる。

”掃討するよ”

 色違いが倒れてしまえば、次は上位種だ。
 上位種なら、私かカーディナルで対応が可能だ。一撃で倒すのは難しいが、倒すだけなら難しくはない。周りを見ると、外周部に居たゴブリンやコボルトなどはすでに倒し終わっている。

 ライから上がってくる報告で、ライたちもゴブリンの色違いを倒したようだ。

 問題は、キングとクイーンだ。
 こちらに意識が向かないように、オーガの上位種と色違いを牽制してくれている。

 ライのサポートが入っているといっても、数だけでも6対2だ。上空に逃げるアドバンテージを使って、スキルを全開で使って、なんとか拮抗を保てている状況だ。キングとクイーンは、水と氷のスキルが使えるので、オーガの上位種には絶対のアドバンテージがあるが、色違いは水と氷の相対属性が使えるようだ。

”ライ。キングたちが苦戦している。誰かを向かわせられるか?”

『すでに、フリップが向かっています』

”フリップ?大丈夫なの?”

『キングからの要請です。風と水のスキルが使える。フリップが適任と判断しました。フリップには、上空からスキルでの攻撃を指示してあります』

”わかった。オーガの上位種や色違いが強ければ撤退するように伝えて!”

『わかりました』

 目の前の、ゴブリンたちが倒れるのを見ながら、次の目標を見定める。

 思っていた通りだ。
 魔物にはテリトリーが設定されている。集団になっても同じだ。テリトリーに入らなければ、襲ってこない。テリトリーの認識は行動を観察しなければ判明しないが、天子湖のキャンプ場にいる魔物たちのテリトリーはすごく狭い。一つの集団で、テリトリーを持っているように感じられた。重なっている可能性もあるが、一つの集団を倒しても他の集団が動き出さない事から、アクティブになるテリトリーは重なっていない。
 慌てて逃げると、テリトリーを縦断や横断して魔物がアクティブになる。
 だから、私たちは上空から下降して、他の魔物のテリトリーに接触しないように、各個撃破していく方法を選択した。

 問題は、上位種や色違いのテリトリーが広いことだ。アクティブになる距離は掴めているが、絶対ではない。だから、キングとクイーンには無理をしてもらっている。

 今のところは、私たちが経験から立てた作戦が当たっている。

『テネシーたちから報告です。動物たちはすでに意識を無くています。対処は不可能だという事です』

”わかった。残念だけど・・・。屠ってあげて”

『わかりました』

 これも予測していた。
 最悪の方向で・・・。動物たちを戻す事ができれば良かったのだけど・・・。

 悲しんでは居られない。
 魔物を放置すれば、動物たちが犠牲になってしまう。人が勝手に傷つくのは自業自得だけど、動物が魔物になって意識を失うのは・・・。

”ライ。次の集団に行くよ!カーディナル!アドニス!お願い”

 信頼する家族に、声をかける。
 まだまだ、ゴブリンを主体とした集団は、点在している。外周部の掃討が終わった、テネシーたちが合流してくれて、対応の速度は上がった。

 それでも、最後の集団を倒した時には、テネシーとクーラー。及び、ピコンとグレナデンは、力を使い切っている状況だ。
 テネシーたちには、ゴブリンの集団から得た物を回収する役目を新たに与える。

 天子湖のキャンプ場の山側に入る遊歩道近くに、布陣しているオークの集団を見る。

 序盤は、私たちの完勝だ。
 だか、疲弊はしている。テネシーたちの戦線離脱は予想の範囲内だが、最悪の状況だと認識している。

”ライ!カーディナル!アドニス!次は、オークたちだ!無理しないようにね!”

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